(42)プレミアムが上がったり下がったりする要因は?
- −Q− おさらい問題ですが、プレミアムの上下というものが完全には納得できませんので、念の為に解説してください。
- −A− オプション取引はプレミアムが上がったり下がりそうだと思うときオプションを売って、あとで買い戻す、これからプレミアムが上がりそうだと思うとき、オプションを課って買って、あとで転売することによって、プレミアムの変動を利益ににするのです。プレミアムが上がったり下がったりする要因は沢山あります。まず何といっても重要なのは、原市場の先物相場のボラティリティ(価格変動性)です。ボラティリティが高いとプレミアムは上がり、ボラティリティが低いとプレミアムは下がります。兄貴分である先物相場が変動しますと、弟分であるオプション価格のプレミアムに大いに影響します。
- 次に、オプションのプレミアムを左右するのはオプションの残存期間です。オプション取引は時間の取引でもあります。残存期間が残っていれば、その間にオプションの価値が上がる可能性が高いわけです。まだ春秋に富む若い人は、年配の方よりも、夢を達成する可能性が高いというわけです。しかし、時間の短い人でも、勇気と柔軟性があれば、達成の可能性はあると思います。残存時間が短くてもボラティリティが高い方が、残存時間が長くてもボラティリティの低いものよりプレミアムが高いことがあるのと同様です。
- ザラバであるオプション市場は、さっきお話しましたように、基本的には八百屋と似ていて、朝方つけた値段を売れなくてもそのままにしておくよりも、夕方まで売り残して無駄にするよりも、値段を変えて売ってしまった方が良いことがあります。スーパーでは、茄子を買う人は茄子だけを買って、レジへ行ってしまいますが、対面販売の八百屋では、茄子を買おうとしている人に、苺も安くしておきますよと売りつけてしまうこともできた。ザラバでは基本は、相手によって買ってくれそうな人に、買ってくれそうな値段を出すという八百屋の対面販売的なところがあってもいいと思います。
- −Q− 東穀取のオプション市場で導入したマーケット・メーカーも、そうしていますか。
- −A− ええ、基本的には、そうしていますが、まだ市場の厚みが薄いので、むしろ理論値を参考にして、マーケット・メーカーが提示する売値と買値の開きを原則5%に限ることにしています。これでも大変な変化で、オプション取引を始めてから1、2年間は、オプションの買値と売値がひどく開いていた。94年7月からマーケット・メーカー制を導入したのですが、おかげで市場に大変厚みが増してきました。
- −Q− はっきりプラス効果があったわけですね。
- −A−そうです。マーケット・メーカー制はオプション市場に大変なプラス効果をもたらしました。もしマーケット・メーカー制がなかったら、東穀取のオプション市場も未だに定着の兆しさえ見えていなかったではないか、マーケット・メーカーの取引員各社のおかげだと思います。日本では、オプション市場といえば、代表的な市場は東穀取の市場だと言えると思っています。
- −Q− 買値と売値の開きを5%以内と限定したことで、信用がついたということですか?
- −A−信用というよりも、原則5%の開きで、常に売り注文と買い注文が、市場に一定枚数出ていますから、妥当な価格で反対売買が可能になったということだと思います。何度も申しましたように、オプション取引はプレミアムの差額を利益に得ようとする取引ですから、反対売買が自由にできることが肝腎です。例えば自分が見通しを誤まって、ひょっとしたら高いものを買ってしまったかな、つまり上がりそうに思ったプレミアムが下がり出してきた、もう一度市場に戻って、転売しようとしたら、ひどく安い値段でしか引き取ってもらえないとしたら、騙されたという気持になって、もう二度とオプションなど買わないぞとという気持になるかもしれません。
- マーケット・メーカー制を導入してからは、ちゃんとリーズナブルな価格で引き取ってもらえるとしたら、多少の損をしても、あの時は見通しが甘かった、今度はうまくやろうという程度に納得できるかもしれない。そういう意味で、市場に常にリーズナブルな価格で反対売買できる機会があることが不可欠で、東穀取のマーケット・メーカーの皆さんは国内のオプション市場を育てる上で大変な貢献をしてくれたと思いますね。
- −Q− 「月々何千万円かの損だが、将来のためにやっている…」というような話は何度か聞きました。
- −A−最初の1年間くらいは、そういう苦情をよく耳にしました。しかし、去年は半数くらいのマーケット・メーカーの皆さんが黒字だったとお聞きしましたね。
- −Q− それは、なぜでしょう。
- −A− やはり、これもロンドン取引所(LIFFE)の本に書かれていますが、先物取引で有名な「初動者利得」というか「先手必勝」の原則のためかもしれません。先物取引では上場商品でもオプションでもファンドでも、先にやり出した方が後々まで得をすると言われていることのためかもしれません。それに、委託者も増えましたし、何と言っても、オプション取引の技術が非常に向上したことなどが理由だろうと思います。
- 最近の委託者数の割合は、大豆の「コール」、「プット」も、粗糖の「コール」、「プット」も、月によって少し変わりますが、委託者の取引が全体の出来高の大体20%くらいを占めています。技術の方は、ディーラーの皆さんの技術が格段に上がったと言われています。皆さん真剣ですし、よく研究もされていますから、これなどもマーケット・メーカー制の大きな効用の1つだと思います。各社の社長さんたちは、自社のオプション・ディーラーをもっともっと評価すべきだと思います。
- −Q− 為替が通貨当局の高官などの発言で激しく動き、原市場の相場やオプションのプレミアムにまともに影響するということがあるわけですね。
- −A− ありますね。例えば円が1ドル100円から120円に下がれば、需給に変化がなくても、1トン300ドルの大豆は、先物相場がトン30,000円から3,6000円に1トン200ドルの相場は、先物相場が1トン20,000円から24,000円に上がるというわけです。逆に、円が例えば1ドル120円から100円に上がれば、大豆は1トン36,000円から30,000円に、粗糖は1トン24,000円から20,000円に下がるというわけです。こういうふうに、最近は円ドル為替がきわめて敏感に商品の先物相場に影響しています。そういう意味で、為替変動のリスク・ヘッジを含めて、円建ての国際商品の先物市場の大きな役割のひとつです。
- 以前、石油は「バレル」という通貨だと言われましたが、私は現在、大豆やコーンは「ブッシェル」という通貨だと言ってもいいと思います。円の価値は国民全般に影響しますし、国民全体が円相場の変動というリスクにさらされていることを認識すべきです。円の変動リスクをマネージする必要があるのです。現代はおよそすべての価値が変動するリスクの時代ですから、リスク・マネージメントのツールとして、オプションがもっともっと研究され活用される必要があると思います。
- −Q− 一般的なリスク・マネージメントでしたら、例えば「アウト」の安いプレミアムのものだけを買っておけばいいわけですね。
- −A− そうです。リスクを1000パーセントカバーしようとすると、コストが嵩みますから、まず「アウト」のものを買って、リスクの一部をヘッジします。小額のプレミアムでしょうから、気が楽だと思います。オプション取引は、まず「アウト」か「ディープ・アウト」を買うことから始めるのがいいようです。
- −Q− それは商品相場をやろうとやるまいと、共通して有効な手段だということですね。
- −A− そう思います。商品相場を先物でやっていれば、なおさらオプションにヘッジする必要がありますが、先物相場をやっていなくても、円の変動リスクは一般に降りかかっているのです。そのリスク・ヘッジに商品オプションは役立つということです。あるいはニューヨーク市場に見られるように、ファンド資金の運用先として、オプションは役立つと考えられています。私たちの財産管理のためにも、オプションという現代人のニーズに合った新しいツールは使えるということです。
- −Q− この事実は大きくクローズアップされてよいと思いますね
続く
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