中巻目次へ              (27)へ   (29)へ
      オプション取引 Q&A(中)    
―おくればせの事はじめ―
柳 沢 逸 司
(28)オプションは売手が得か、買手が得か?

−Q− オプションの売手と買手は、立場が違うことはよく分かりましたが、損得で見ますと、一体どちらが得でしょうか?
−A− どっちが得とは言えません。気楽さから言えば、オプションの買手は、プレミアムをつけてリスクを切り離し、権利だけを持っているのですから、気が楽でしょう。オプションの売手の方は、プレミアムをもらって、売手でいる間は義務を負っているのです。
 例えば、貴方が先物のポジションを持っているとします。先物ポジションでは、買いも売りも必ずリスクを負っていますから、そのリスクを移転するために、オプション市場で、幾らかのプレミアムをつけて、そのリスクを引き取ってもらう。つまりプレミアムを支払って、オプションを買ったとする。もし先物で損が出たら、オプションを権利行使するか転売すると、先物の損がヘッジされる。先物で益が出たら、オプションのことは忘れてもいい。転売できれば、幾らかでもプレミアムは戻る。
 オプション市場で、プレミアムつきのリスクが売りに出ている(貴方かもしれないが)のを見て、私は、これからリスクは急激には大きくならないだろうと思い、プレミアムをもらって、そのリスクを引き受けるとします。そのまま時間が経過して期限が来れば、私の負った義務も消滅しますし、受け取ったプレミアムは利益になります。期限までに途中で、私が、そのリスクに新たなプレミアムをつけて、市場に出さない限り、私は義務を負ったままですから、権利行使の割当ての心配もしなければなりません。それがいやなら、途中でも早く買い戻して、義務から解放されることです。オプションの売手は、義務とリスクを負いますから、初心者向きではないでしょう。

−Q− オプションはいろんな使い方があり、二刀流、三刀流という感じもしますね。
−A− うまい言い方ですね。オプションと先物、あるいはオプション同士の組合わせは、基本だけで十通り以上あるとされています。基本的には「コール」の「売り」と「買い」、「プット」の「売り」と「買い」の4本に、先物の「売り」と「買い」の2本を組み合わせるものです。これらをどう組み合わせるか、何本組み合わせるかは、その人の相場観や資金力やリスク負担割合によります。防御的にも攻撃的にも使えます。もうこうなると、売手とか買手とかいう話ではありません。組合わせには、オプションの買いもあれば売りもあるからです。
 アメリカなどでは、パソコンを使って、どんどん開発しています。日本でも、よく研究し開発しておかないと、かつてバブルがはじけた当時の株式市場のように、オプションによって利益だけを持って行かれてしまうということになりかねません。

−Q− 古代のオプションは、複雑に組み合わせて用いる形のものではなかったでしょうね。
−A− 現代のオプションは二十数年前くらい前に生まれたコンセプトですし、パソコンがありますから、戦略的な組合わせは、ほとんど無限に開発されていると思います。そして、あらかじめコンピューターに入力しておけば、こういう事態なら、こういう戦略と、自動的に発動する仕掛けになっていると思います。
 先物は売手も買手も必ず不測のリスクを負っていますが、オプション取引は、この先物のリスクをプレミアムをつけて他人に移転できる強力なツールです。オプションは先物の強い味方ですから、欧米のように、オプションの導入によって、先物全体のパイも確実に大きくなります。

−Q− 他人さまに僅かなお金でリスクを引き受けてもらおう、というのは実にうまい話ですね。
−A− うまい方法だと思います。現代人のニーズに合った商品だと思います。現代はリスクの時代です。価格変動の時代です。ですから、こういうリスク・ビジネスが生まれるのです。自分の負っているリスクを只で引き受けてくれと言っても、なかなか引受け手はいません。そこで、リスクを引き受けてもらうのに、プレミアムをつけて市場に出す。そうすると、市場にリスクの引受け手が現われる。このリスクそのものが変動しますから、そのリスクについたプレミアムがまた変動する。それがオプション市場です。
 先物取引をしている人はもちろんですが、先物を取引していない人も、生産者も加工業者も、一般の人も、現代はみんな価格変動というリスクにさらされていますから、オプションという新しいリスク・ヘッジの手段を知らないでビジネスをやるには、現代は余りにも危険な時代です。
 現代のオプション取引は、わずか二十数年前に生まれた手法ですが、競争相手はこれを使ってきます。例えば株式市場では、オプションを知らない人々は、株価が上がらないか下がったりすると、がっかりして沈んでしまいますが、オプションを知っている人は、いまこそチャンス到来と、下がりそうな株のプット・オプションを買うでしょう。
 株価が下がれば下がるほどプットのプレミアムは上がりますから、株価が下がれば下がるほど笑っている人がいるのです。オプションを知っている人は、株価が下がるときはプットで利益を上げ、上がるときはコールで利益を上げるのですから、太刀打ちできません。オプションが登場してからは、株価が上がっても下がっても、オプションを知っている人にとってはビジネス・チャンスなのです。株価は上がらないと駄目だと思っている人たちは、このチャンスをみすみす逃がしてしまうのです。株価が下がっているとき、どこかでプット・オプションを買って持っていて喜んでいる人がいることを忘れてはいけないでしょう。

続く

       中巻目次へ              (27)へ   (29)へ