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      オプション取引 Q&A(上)    
―おくればせの事はじめ―
柳 沢 逸 司
   (13)なぜ先物は義務の取引で、
        オプションは権利の取引といわれるのか?

−Q− 取引の性格を、先物=義務、オプション=権利、と明快に分けて説明されますと、そのときは分かったつもりになりますが、本当には理解できていない。なぜ?という気持がどこかに残っています。
−A− オプション取引が再開され出してから、オプションが権利の取引だと特徴づける裏返しとして、先物の特性が浮き彫りになって、先物は義務の取引だとはっきりしたのです。オプションが出てくるまでは、リスク・ヘッジの手段としては、先物しかありませんでしたから、先物の画一性も選択の幅の狭さも、やむをえなかったのです。
 ところが、オプションを始めてみると、先物の特性、つまり買手も売手も不測のリスクを負っていて追証の心配があるとか、画一的だとか、選択性がないとか、いろんなことがオプションとの比較の上で明らかになってきたのです。それまで意識しなかった先物の欠点や特徴が目立ち始めるようになったということでしょう。
 先物はアメリカでは1848年にシカゴで始められてから、すでに150年間もやっているのです。価格変動というリスクを、何とかマネージしようと先物が生まれて、買手と売手の両方でリスク負担をして、その役を果たしてきました。シカゴ商品取引所(CBOT)の誕生以来、125年経って、画期的な「ブラック・ショールズ方程式」の発見があって、新たな洗練されたリスク・マネージメントのツールとして、現代人のニーズに合った商品として、オプションが登場しました。
 オプションは、前にも申しましたように、先物の利益の部分とリスクの部分とを分割して、オプション買手は「権利の部分」だけを持ち、売手は「リスクの部分」だけを持つようにしたわけです。いわば先物のリスクの部分だけを切り離してプレミアムをつけて市場で流通させるという、はなはだ斬新な、画期的な取引形態なのです。オプションの買手からみますと、プレミア
ムをつけてリスクを移転していますから、「権利の取引」だと言えるのです。
 一方、先物の方は、いわば「リスクの部分」と「権利の部分」が未分化の取引で、買手も売手も不測のリスクに備えて証拠金を預託し、かつ追証の心配もするのです。そして納会日が来れば、反対売買するか、受渡しをする義務が残っているわけで、その意味では、先物は「義務の取引」といわれるのです。オプション取引は、ちょうどパソコンやインターネットが出てきて、一挙に市場が拡大したのと同じように、あるいはそれ以上に、いままでの先物取引を非常に洗練した形で、しかも多様性や柔軟性や選択性など現代人のニーズに合った形で登場したのだと思います。
 日本でも、先物は永年、慣れた取引形態ですから、どこを注意すれば市場が正常化するか、どうすれば利益が上がるかというノウハウも、かなり蓄積されてきたと思います。しかし、その一方で、なかなか市場規模が拡大しないという先物の限界も感じられていると思います。その限界を越えて、オプション市場という新大陸が発見されたのですから、ぜひ研究し探索すべき沃野だと思います。欧米の先進国では、いち早く研究し、開発して、次々と新しい商品を生み出しているのです。
 先物取引は、アメリカで始まる200年も前から日本でやっていたという歴史が、かえって新しいものへの挑戦と体制づくりを遅らせているかもしれないと思うときもあります。現代は、多様化の時代です。選択の時代です。オーダーメイドの時代です。アジアでも、先物取引を市場経済に取り入れようとしています。ヨーロッパではオプションの研究に懸命です。日本でも、ようやく個別株式オプションが始められました。委託者は、例えばインターネットでオプションを勉強することもできます。もう少しすれば、オプションを知らなくては先物はできないという時代になると思います

−Q− 結局、先物の場合は、不利益の場合にもやらなければならないという特徴がありますね。オプションの買手の場合は、利益が出るときだけやって、そうでないときは放棄する自由がある、というのは大きな違いですね。
−A− その通りです。先物は義務の取引といわれるゆえんは、納会日までには現物を受渡しするか、差金決済をするか決断を迫られるからです。そして、損が出ても、どっちかを実行しなくてはなりません。
 ところがオプションの方は、権利の取引ですから、オプションの買手は自分の持っているオプションの権利行使価格と、そのときの市場価格とを比べて、有利なときだけ行使すればいいのです。不利になるときは、行使しなくていいのです。先物は例えば1枚の大豆の価格変動リスクを買手と売手の2人で証拠金を出してヘッジするのに対し、オプションは1枚の大豆の価格変動リスクを1人(売手のみ)で証拠金を出してヘッジ出来るのです。
このように、1枚の大豆のリスク・マネージにいくらかの資金が必要かという観点からすれば、オプションの方が効率的なことが分かるでしょう。
 オプションの方は、現代風に、選択の幅がはるかに広いのです。昔、リスク・ヘッジの手段として先物取引しかなかったときは、多様性とか、選択性とか、戦略だとか言っていられなかったのです。今は、工夫さえすれば、いろんな方法があるということになったのです。それによって、先物だけの限界を越えて、リスク・ヘッジにも、ポートフォリオにも、委託者の拡大にも、格段に選択の幅が広がったと言えるのです。

続く

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