(11)オプションの特徴と先物との最大の違いは?
- −Q− 原市場の先物とオプションの最大の違いは何か?と問われたら、何と答えたらいいでしょうか?
- −A− 先物とオプションの違いは、何と言っても、オプションは、先物のリスクの部分を分離して、プレミアムをつけて市場で流通させた点だと思います。その結果、リスクを移転した方は、それ以上のリスク負担からは解放されるということです。
- ですから、オプションの買いには追証がないのが、先物とオプションの最大の違いです。例えば大豆の先物を、例えば30,000円で売っていた人も、一旦大豆の相場が、例えば30,500円に上がると、追証のかかる心配はあるわけです。結局26,000円に下がれば、利益になるのですが、権利行使価格30,000万円のプットでは、先物相場が上がってもプレミアムが低くなるだけで、追証がかかることはありません。オプションの買手の最大のコストが、当初支払うプレミアムだけに限定されているからです。どこまでも損失が嵩む恐れがありません。
- 買手と売手のリスク負担が違うことが、先物とオプションの違いでしょう。先物では、買っても売っても、リスクがありますが、オプションでは、プレミアムをつけてリスクを移転してしまいますから、オプションの買手は、安全といえば安全です。
- 戦略が組めるというのも、オプションの先物との違いです。いろんな種類の組合わせがありますから、先物相場が動かないときにも、利益になるような戦略もあります。
- 先物が画一的なのに対し、オプションでは、柔軟に選択できるという点は、先物との大きな違いでしょう。つまり戦略や資金力や相場観に合わせて、権利行使価格やプレミアムを選択できるからです。
- オプションの期限は非常に古く、遠くギリシャ時代まで溯るようですが、現代のオプションは、やはりオプションの価格を算定する「ブラック・ショールズ方程式」が生み出されてからだと思いますから、歴史はそう古くはありません。
- またオプションと先物取引とは同じ点があります。先物取引が相場の差額を利益にするように、オプション取引は、オプション価格のプレミアムの差額を利益にしようとする点です。例えば先物では先物相場が下がれば、大豆先物を売っていた人は利益になります。先物相場が下がれば、プットのプレミアムは例えば1,000円(大豆なら1枚30トンだから30,000円)から例えば1,500円(1枚45,000円)に上がりますから、プットを買っていた人は、そのプットを転売すればプレミアムの差額の500円(1枚15,000円)が利益になるのです。この仕組みは先物取引と同じです。つまり、先物取引では相場が安いときに買って高いときに売る、相場が高いときに売って安くなったら買い戻すのですが、オプション取引でも、全く同じように、オプションの価格のプレミアムが安いときに買って高くなったら転売する、プレミアムが高いときに売って安くなったら買い戻すことで利益を得る取引なのです。
- −Q− この場合の価格というのは、あくまでもオプションの価格であって、権利行使価格とは別問題なんですね。
- −A− そうです。オプションの価格であるプレミアムのことです。権利行使価格はプレミアムの大きさを決めるもので、権利行使価格を変えればプレミアムの大きさは変わります。
- 先物では、例えば相場が上がっているときは買手の方が得で、売っている方が損です。ということは、先物では、売手も買手も、同じようなリスクを抱えているし、利益になるチャンスもあるということです。
- オプションでは、先物のリスクの部分と権利の部分とを2つに分けて、それぞれ別個に市場で流通させるというところが特徴です。そのリスクにつけるのがプレミアムで、これはリスクの価格でもあります。
- −Q− オプション取引の方が効率的とか?
- −A− そうです。先物の「リスク部分」と「権利の部分」り2つにちょん切って、いわば半分のリスク負担をするからです。先物取引では、例えば相場が上がっているときは買っている方が得で、売っている方が損です。相場が下がっているときは、買っている方が損で、売っている方が得です。ということは、先物取引は売りも買いも、損失の生じるリスクを抱えているし、利益になる権利も持っているということです。
- つまり先物では、価格変動というリスクを買手と売手の両方で負担していて、したがって、同じ金額を当初証拠金を預託する必要があるのですが、オプションでは、コールでもプットでも、価格変動のリスクは常に売手だけが負担し、したがって当初の証拠金も売手だけが預託する必要があるのです。効率性から言えば、少ない金額で同じリスクをヘッジできる、逆にいえば、同じ金額なら先物よりも多くのリスクをヘッジできるということです。その意味では、これにプレミアム分を入れても、オプションの方が効率的なリスク・マネージメントのツールだということができます。
- プレミアム算定式の生みの親であるマイロン・ショールズ博士も、「こんなに効率的なものとは思わなかった」と言っています。「将来もっと良い方法が出てくるかもしれないが、現在はオプションが最上のリスク・マネージメントの手段だ」と言っています。
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- −Q− アメリカでは農家もやっているとか?
- −A− 前にもお話しましたアメリカ政府のパイロット・プログラムですが、政府が補助金まで出して、農家にプット・オプションを買うように奨めているのです。それによって政府のの価格政策の一助としているのです。この方が使う税金が少なくて済むからです。このことは、いかにオプションが安全で効率的なリスク・マネージメントであるかを政府が認めたことでしょう。いわば政府がお墨付きを与えたということです。
- −Q− 農家が被るかもしれない価格変動リスクを、プレミアムをつけて市場に出してしまう?
- −A− そうです。オプションは、プレミアムをつけて、価格変動のリスクを移転するのです。先物は、リスクを抱えたままです。この点が先物とオプションの違いです。もちろん、現物の価格変動リスクを何にもヘッジしないよりも、先物にヘッジする方がはるかにましですが、オプションの方が安心してヘッジできるのです。
- 例えば、貴方が生産者か加工業者で、価格変動リスクを背負っているとします。そのリスクを誰かに移転したいとします。貴方はそのリスクにプレミアムをつけて市場に出す、市場では誰かが、例えば私がそのプレミアムを妥当なものだと思えば、そのリスクをプレミアムと一緒に引き取る、つまり貴方がオプションを買い、私がオプションを売った時点で、貴方はリスクを私に移転して、将来の価格変動のリスクから解放されるわけです。
- もし貴方が現物の価格変動で損失をこうむったら、そのオプションの権利行使をするか、オプションを転売すれば、現物の損失の埋め合わせが出来るのです。リスクを引き受けた、つまりオプションを売った私は私で、そのリスクに新たなプレミアムをつけて、また誰かに市場で移転してしまうか、時間の経過を待って、プレミアムをいただくかするのです。
- 先物取引では、こういう具合に価格変動のリスクを市場でリスクを移転できないのです。先物では買手も売手も、リスクを抱えたままですから、現物の価格変動で損が出れば、先物の利益で補償されますが、現物で益が出れば、先物では損が出ますから、相殺するしかないのです。先物取引では、リスクにプレミアムをつけて市場に出す仕組みではないので、どこにもリスクの引取り手がいないのです。
- つまりオプションが登場したことで、先物取引に一部、一種の保険業みたいな業務が加わったと考えられます。飛行機事故を保険に掛けるのと同じで、10,000円の保険料を支払っておいて、万が一、事故に遭ったら、家族に保険金が支払われるようにしておきます。事故がなく、無事に目的地に着けば、保険を掛けた私は、保険料10,000円を損したのではありません。それで安心を買ったわけですから、保険料は掛け捨てで、保険を売った保険業者の方には保険料が手元に残るのです。
- −Q− 保険会社は日本の場合、さまざまな免責事項を設けていますが、オプション取引の場合、保険業の「免責事項」に相当する部分があるか否か、この点はいかがでしょう。
- −A− 保険の免責と似ているのは、どこまでの損害を保険でカバーするかというカバー率の問題だろうと思います。オプションの場合は、権利行使価格の選択で、どこまでのリスク負担をオプションでやってもらうか、どこまでは自分でリスク負担するかで、プレミアムの大きさが違ってきます。高いプレミアムを支払っても、リスクを十分にカバーしようとするときは、そういう権利行使価格を選べばいいし、低いプレミアムで、ある程度のリスク・カバーでいいと思うときは、そういう権利行使価格を選ぶのです。こんな選択ができるのも、先物と違うところです。
- オプションの売手は、期間内の価格変動による責任は全部負うことになります。一般の保険と同じように、期間が重要です。また、価格変動によるどこまでの損失を補償するかということになると、買手は行使価格の選択、売手は受け取るプレミアムの大きさによって違ってくることも、一般の保険と同じでしょう。ただ、オプションの買手から、権利行使のない(保険金の請求がない)場合、あるいは権利行使があっても当たらない場合があります。
- いまのオプションの仕組みでは、もちろんオプションの売手は全員が、責任を負っているのですが、買手の皆が皆、権利行使をするとは限りませんし、買手の権利行使があっても、売手の全員に割り当てられるのではなく、売った枚数に応じて割り当てることになりますから、割当てに当たらない売手も出てきます。そういう売手は権利行使がなく、期間が過ぎてしまえば、請求がなかったと同じになります。
- −Q− 配分について、談合によって決めるということがあるでしょうか?
- −A− 権利行使の割当ては、取引所が機械的に売りの枚数に応じて計算して割り当てますから、談合が入る余地はありません。
- −Q− 割当てを免れた売手は、割当てを受けた売手に比して得をしますね。誰がリスクをどれだけ受けるかを、取引所が決めるわけですか。
- −A− そうです。オプションを私が売ったとします。私が売ったオプションを貴方が買って、貴方がそのオプションの権利行使をしても、私に割り
- 当てられるとは限らないのです。売り集団と買い集団がありますから、持ち分に応じて集団と集団で比例案分されるわけです。
続く
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