(8)オプション取引の最大の利用者は?
- −Q− 最もオプション取引を利用するのは誰か?という問題ですが、現場をご覧になってどうでしょうか。
- −A− 現在の東穀取のオプション市場では、実際に一番多いのは、やはりマーケット・メーカーのディーリングの皆さんではないかと思います。もちろん一般の委託者も増えて来ています。会社によって違いますが、いまのオプション取引全体の出来高の20パーセントくらいが委託玉です。これから委託者が、インターネットのシミュレーションで練習して、オプションに非常に詳しい人たちが増えてくると思いますね。
- 東穀取のホームページへのアクセス数を見ると、最近は毎月30万件を超えています。先物取引に強い関心と興味を持っている人々が、世の中には潜在的にかなりいることを示していると思います。海外、とくにタイ、インドネシア、マレーシアなどのアジア地域からのアクセスも増えています。
- これからの先物取引の発展は、オプションなしでは考えられないし、オプション取引に早く取り組み熟達した会社と、そうでない会社とでは、相当な差が出てくると思います。営業に近代装備のパソコンを駆使するか、旧来のままのソロバンかの違いくらいはあると思います。オプション市場は、いままでの先物取引の歴史にはなかったような、多種多様な人々に魅力のある市場を提供することになると思います。
- アメリカの例から見れば、どんな人々がオプション市場の顧客になってくるかが予想できます。第1に、安全に、つまり不測のリスクのない先物取引をしたい人々には、オプションを奨めることができます。先物相場が上がりそうだと思う人には「コール」の買いを、先物相場が下がりそうだと思う人には「プット」の買いを奨めることが出来ます。
- 第2に、先物を売ったり買ったりしている人々には、オプションは先物のリスク・ヘッジの役に立ちます。オプションが出て来てからは、先物をヘッジしないで、裸のままにしておくなどは怖くて、アメリカなどでは考えられないようですね。先物は怖いというイメージを軽減するためにも、先物を奨めるときにも、有力なツールになると思います。例えば、大豆先物を買っている人は、相場が下がったら損しますから、大豆のプットを買っておけば、相場が下がっても安心です。オプションを組み合わせておけば、追証もかかりません。
- 第3に、持っていない物を売るという「カラ売り」ができない人も、プット・オプションを買うことができます。インフレの時代には、物価は将来必ず上がって行くものだという神話がありました。そういう時代は、物は買っておけばよかったのですが、最近、ようやく物価も下がることがあるということを学びました。しかし、多くの人々は、まだまだ持っていない物を売ることは、なかなかできません。価格が下がるときも、プットを買うことで利益を追求できるオプションは、そういう人々に向いていると言えます。
- 例えば最近の為替のように、上がり下がりの激しい時代になりますと、価格が上がるときは買い、価格が下がるときも買いができて、しかも、リスクは限定されていて、追証もないオプションは、買うことしか知らず、持っていない物を売ることが不得手な人には向いているリスク・ヘッジの手段でしょう。
- 第4に、アメリカの小麦やコーンの生産農家のように、例えば前にも話した例で、コーンを1ブッシェルあたり2ドル90セント以上で販売したい人は、種を蒔くときに、その2ドル90セントを権利行使価格とするプットを買っておくのです。収穫時に、現物市場で2ドル90セント以上で売れれば、買っておいた「プット」は掛け捨てにします。もし、現物市場の価格が2ドル90セントを下まわれば、買っておいた「プット」の権利を行使するか、「プット」を転売するのです。そうすれば収穫期に少なくとも1ブッシェルあたり2ドル90セントは確保できるということです。先物と違って、見込みが違っても、追証や手仕舞いの義務はありません。最大のコストは、当初支払ったプレミアムに限られるのです。
- 第5に、加工業者のように、ある価格以下で、原料を仕入れたいと思う人も、例えば大豆を原料とする味噌、醤油あるいは豆腐の製造業者も、原料大豆を例えば30,000円以下で仕入れたいというときは、権利行使価格30,000円の「コール」を買っておくのです。前の例と同じように、もし現物市場で、もっと安く大豆が手に入れば、この「コール」は掛け捨てにします。現物市場の大豆の価格が高騰していたら、買っておいた「コール」の権利行使をするか、転売すれば、希望の価格で原料大豆を手に入れたこととなります。
- 第6に、先物には興味があるが、お仕着せ(レディ・メード)でなく、オーダー・メードで注文したいという人や、多種多様な戦略を立てて取引したいという人などにはオプションは最適です。先物だけでは多様な戦略は立てられないからです。
- 先物の基本証拠金の額は、一律に決まっています。例えば、大豆は1枚70,000円、粗糖は1枚80,000円というように、商品によって、あるいは相場によって、多少違いますが、画一的に決まっています。しかし、オプションは、いくらの行使価格を選ぶかによって、プレミアムの高いものから低いものまで選択できるのです。ディープ・アウトの低いプレミアムは、1枚30,000円くらいのものがあることがあります。
- −Q− 東穀の大豆オプションのプレミアムの幅は、上下どのくらいありますか?
- −A− いろいろあります。さっきも言いましたように、いくらの権利行使価格を選ぶかによって、非常に安いものから、証拠金と同じか、それより高いものまであります。
- −Q− 原市場の先物の証拠金よりも高くなる場合がありますか?
- −A− いくらの行使価格を選ぶかによって、プレミアムの金額が先物の証拠金の金額を超えることもあります。極端な場合、例えば大豆の先物相場が30,000円のとき、権利行使価格25,000円のコールは、すでに5,000円の益がついていますし、その上に期限までに先物相場がさらに上がるかもしれないという可能性の「時間価値」が乗っかれば、プレミアムはさらに高くなります。
- 先物取引は、いわば「権利」と「リスク」が分化していない取引です。先物は、オプション取引のように、リスクの部分だけを分離してプレミアムをつけて市場で流通させるところにまで至っていませんから、売手も買手も両方で先物の不測のリスクを負っているのです。先物では、不測のリスクの発生に備えて、売手と買手の両方が、証拠金を初めに預託するのですが、それだけでは不足しそうな状況になりますと、不足しそうな方がさらに追証を預託しなければなりません。
- オプションでは、市場に出すリスクの大きさに応じて、実際には権利行使価格の選択によって、プレミアムの大きさが決まってきます。市場に出すリスクに比べてプレミアムが余りに小さいと、そのリスクの引受け手が現われませんし、逆に余りに大きいと、リスクを市場に出す人が現われないでしょう。プレミアムの適正な金額も、やはり市場での実際のやりとりで決まってくるでしょう。基本的には、市場に出すプレミアムの大きさは、原市場の先物相場と権利行使価格との差である「本質価値」と残存期間や価格変動性(ボラティリティ)の大きさである「時間価値」で決まってきます。
続く
|