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   オプション取引 Q&A(上)   
―おくればせの事はじめ―
柳 沢 逸 司
(6)買方を儲けさせて、売方は大丈夫?

−Q− オプション取引は買方に儲けさせるもの、とすれば、売方は大丈夫なんでしょうか。買方が利益を得て終わり、ということなら、市場のコストは誰が負担しますか。
−A− オプション取引は、一見、権利だけを持つ買手の方が有利なように見えますが、当然ながら、買手だけが儲かるとか売手だけが儲かるとかいう仕組みになっていません。前にお話しましたように、オプションというのは、いわば先物の「権利の部分」と「リスクの部分」との2つにちょん切って分割して、「権利の部分」はオプションの買手に、「リスクの部分」はプレミアムをつけて売手に持たせるようにしたのです。だからといって、権利を持った方(買手)がつねに有利で、リスクを負った方(売手)がつねに不利だということではありません。権利を持った方は、その権利を取得するときに「プレミアム」を支払っていますし、リスクを負った方は、そのリスクに見合う分だけのプレミアムを貰っています。また、オプションの売手は、期限までずっと売手でいる必要はありません。いつでも、そのオプションを買い戻して、取引から離脱できるのです。
 オプションという商品は、前にも申しましたように、ちょうど「兎と亀」の競争で、兎(リスク)と亀(時間)が競争しているような商品といえます。兎(リスク)が目を覚ます前に、亀(時間)が先にゴール(期限)に到着してしまえば、プレミアムがオプションの売手の利得になるわけです。つまり、時間が経つ(亀がゴールに近づく)と、プレミアムはどんどん下がり(売手に有利)、期限までにリスクが上がる(兎が跳ね起きる)と、プレミアムが上がる(買手に有利)のです。価格変動性が高い(兎が目を覚ましやすい)というときは、期限が近づいても、兎が跳ね起きる可能性が大きく、プレミアムが上がることがあります。
 これは一般の保険と同じで、保険期間内に保険事故が発生しなければ、保険金を支払う損害もありませんから、当初受け取った保険料(プレミアム)は、保険を売った保険会社の収入になります。
 オプションでは、常に亀(時間)が勝つとは限りませんが、ゴール(期限)までに兎(リスク)が跳ね起きなければ、無事に亀が勝つのです。しかし、価格変動という兎(リスク)は今の世の中、常に起きる可能性があります。
 オプションの画期的なところは「リスクを商品化」したことだと思います。オプション取引は、よく「権利」の取引だといわれますが、裏返してみると「リスク」の取引ともいえるんですね。オプション市場は、リスクにプレミアムをつけて、市場でやりとりする、いわばリスクの市場です。リスクにプレミアムをつけて、市場に出してしまった方は、とりあえず、これ以上の価格変動リスクに脅かされることはなくなる、というメリットがあるんですね。
 リスクを商品として市場で流通させるには、リスクにプレミアムをつけます。プレミアムをつけなければ、誰もリスクなど引き受けてくれません。この価格変動というリスクは、兎のように途中で休んだり、昼寝したり、また起き上がったりしますから、それにつれて、プレミアムも上下するのです。
 例えば、現物を生産したり、輸入したりする人も、価格変動というリスクを負うことになります。また、先物を買ったり売ったりする人も、相場変動というリスクを負います。このリスクの部分だけをちょん切って、このリスクにプレミアムをつけて、市場に出してしまえば、プレミアムを受け取った人に、リスクが移転するのです。つまりリスクを移転した方は、これ以上のリスクに見舞われることがなくなるのです。もちろん、このプレミアムつきのリスクを引き受けた人も、あらためてプレミアムをつけて、また市場に出すことができます。市場ですから、新しいプレミアムつきのリスクの引受け手がまた現われるという仕組みです。その際、どのくらいのプレミアムをつけて、どのくらいのリスクを市場に出すか、つまりどのくらいのリスクは自分で負担するかは、リスクを移転したい人の選択にまかされているのです。
 また、オプション市場でオプションを売ったり買ったりするのは、実はプレミアムの差額を求めて、商品化したリスクを買ったり売ったりしているのですね。オプション市場はリスクの市場ですが、リスクを引き受けた人が、そのリスクを最後まで持っている必要はありません。いつでも、そのリスクにプレミアムをつけて、もう一度市場に出していいのです。そのプレミアムの差額が損益になるのです。もちろんリスクを期限まで持っていて、最後まで、つまり亀(時間)がゴール(期限)に着くまでに、兎(リスク)が起き上がらなければ、引き受けたリスクのプレミアムは、引き受けた方の収入になります。

−Q− よく分かりました。

続く

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