(3)プットとコールはどちらが得?
- −Q− コールの買手は強気の気分があるから買い、プットの買手は弱気の予想をしているから相場が下がれば得をする方のプットを手に入れるわけですね。それは単純なことですけれども「買い好きはアマチュア、売り好きはプロ的…」という考え方が原市場の先物取引ではありましょう?その考え方でいえば「オプション取引もコールは素人好み、プットは玄人好み…」ということになりそうですが、どうなんでしょうか?
- −A− コールは買い、プットは売り、という考えは、おそらくコールを買う権利、プットを売る権利と訳す日本語訳から来る誤解だと思います。コールもプットも買手は買う、売手は売るのです。前にもお話しましたように、コールとプットは、むしろ赤い小豆と黄色い大豆くらい別種の商品と考えた方がいいと思います。小豆を買う人は素人で、大豆を買う人は玄人とは言えないように、おかしな解釈だということが分かると思います。
- −Q− 原市場の先物と、オプション取引をごっちゃに考えているらしく、もどって考え直さなければ、錯覚が解けないことがあります。
- −A− コールは買う、プットは売るのではなくて、「コール」の買いは先物相場が上がると価値が上がる商品で、「プット」の買いは相場が下がると価値が上がる商品という正反対な商品だと考えた方がいいと思います。現物取引に慣れた人々は、商品価格は将来上がるもんだと信じがちです。ですから「低いときに買って、高くなったら売る」ということが頭に沁みこんでいて、先物取引で、いま持っていないものを売る(カラ売り)ということが不得手な人が多いといわれます。このあたりが先物の限界とされていますが、オプションが出てきて、価格が将来、上がりそうだと思うときは「コール」を買うのは当然ですが、価格が下がりそうだと思うときは「プット」を買うことができるようになったのです。
(プットの買い)
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(コールの買い)
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(プットの売り)
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(コールの売り)
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- それでアメリカなどでは、オプションが生まれてから、先物の裾野が一挙に広がったといわれています。将来価格が上がると思うときも、下がると思うときも、買うことで利益を追求できるからです。逆説的ですが、先物を熟知している人は、かえってオプションは不得手かもしれません。先物取引では、将来、価格が下がると思うときは、まず売りから入りますが、オプション取引では、将来、現物価格や先物相場が下がると思うときも、まず買う
- ことから始めるからです。その意味では、オプションは初心者向きかもしれません。
- −Q− リスクを防ぐ手段が増えたわけですから、オプションは大きな大きな安心につながるでしょうね。
- −A− そう思います。リスクそのものをなくすことはできませんが、リスクをヘッジして損失を軽減するか、逆にリスクの発生で利益を得ようとすることはできます。この場合、リスクというのは価格変動のことです。相場は上がるときもあれば、下がるときもあるのが自然です。例えば相場も上がったら喜ぶが、下がったら文句を言うのは、一方に偏った見方です。先物やオプションでは相場が下がったら喜んでいる人が大勢いることは常識です。先物相場が下がりそうなとき、先物取引では先ず売りますが、オプション取引ではプットを買うのです。
- −Q− プットを買う、ということはある条件で「売る権利」を手に入れる、という意味ですね。この辺の表現が少し難しい。
- −A− プットは売る権利、コールは買う権利と訳すと、混乱することになります。強いて言えば、「プット」は「売りポジション」を取得する権利ですし、「コール」は「買いポジション」を取得する権利です。プットの価値は、先物相場が下がるときに上がりますし、コールの価値は先物相場が上がるときに上がりますから、むしろプットはプット、コールはコールと別の種類の商品と考えた方がいいと思います。
- 先物に慣れた人々にはなかなか理解されないところですが、先物相場が上がりそうなときも下がりそうなときも、オプションでは買えばいいのです。オプションが、何でも買うことに慣れた一般の人向きといわれるのは、その辺を指すのでしょう。
- −Q− いや、ただ「買いさえすればいい」という表現では迷わせる元になるかもしれません。「予想の方向に合った権利を買う」というふうに言えば、意味を特定できるだけではないですか?いや、これも言いまわしが冗長になって問題ですか…。
- −A− よく言われることですが、欧米でオプションの大衆化を促進したのは、オプションの損失限定という特性だと言われるのですが、もちろんそれもありますが、私は、むしろ相場が上がっても下がっても(コールまたはプットを)買って利益を求めるというオプションの特徴が、顧客層を拡大した理由にあげられるのではないかと思います。そして、現代人のニーズに合った商品性ということです。
- アメリカでは、農産物の価格変動のヘッジに、農家にまでオプションを買うことを勧めて、それを政府が後押しをしているくらいです。コーン生産農家は、収穫期前に、例えば2ドル90セントなら2ドル90セントのプット・オプションを買っておくのです。そのプレミアムの一部を政府が補助するのです。どこの農家にとっても、収穫時に価格が下がることは困るわけです。そこで、あらかじめプット・オプションを買っておくのです。
- 例えば農家が秋の収穫期に小麦や大豆を、例えば1トン30,000円で売りたいと思えば、種を蒔く春に、農家は行使価格30,000円のプットをプレミアムを払って買っておくのです。政府はそのプレミアムの一部を補助します。秋になって、現物が30,000円以上で売れれば、プットは掛け捨てにします。現物価格が30,000万円よりも低いときは、プットを権利行使するか、転売するという仕組みです。
- 例えば先物のヘッジにオプションを使うときは、例えば「先物の売り」のヘッジには「コール」を買っておきます。先物相場が上がると先物で損が出ますが、買っておいたコールでは益が出ます。「先物の買い」のヘッジには「プット」を買ってヘッジします。先物相場が下がって先物で損が出ても、買っておいたプットで益が出て助かります。
- −Q− 先物での両建て、という伝統的なヘッジがありますから、これをし慣れた人は、やはり両建てをして凌ぎを計るでしょう。
- −A− 先物の両建ては、必ずどっちかの益は必ずどっちかの損ですから、あとの処理が大変でしょう。それに比べて、オプションでのヘッジは一種の掛け捨て保険ですから、オプションのプレミアムを掛け捨てにすれば、先物の益は残るのです。先物の損は、オプションの益で相殺されます。
- −Q− コールとプットを同時に買い、途中で当たりの方にウェートをかける戦略もありますね。オプションの買手には、受渡し義務がないわけだから、初めからオプションの二刀流で…。
- −A− コールとプットの両方を同時に買う戦略は、オプションの最も有名な戦略のひとつで、先物相場が大きく動くときは、どっちに転んでも利益になるものです。こういう戦略は先物だけではできません。
- −Q− オプションの売手に回れば、プレミアムを稼げるから得である。何と言ってもコツコツと現ナマを集めた者の勝ちだ…と教えてくれた人がいるんですが、コールでもプットでも売手になってプレミアムをもらう、ということは、デリバリー(受渡し)に関する義務を幾分か負っている立場ですね。ただでご馳走を食べる人ではないでしょう?買手から権利行使が来たら、知らん顔はできない義務が少しある?
- −A− オプションの売手は、オプションを売ったとき、買手からプレミアムをもらっていますから、買手の権利行使は必ず受ける義務があります。オプションの売手の場合は、現物を受渡しする義務ではなくて、オプションの買手の権利行使を受ける義務です。ただし、オプションの売手は必ず権利行使を受けるかというと、現在の東穀取のオプション取引では、オプションの買手集団と売手集団とで、比例案分で売手に割り当てますから、当たらないことがありますが、潜在的には売手には買手の権利行使を受ける義務があるのです。
- −Q− 仮に市場に私と柳沢さんだけしかいないとして、私はいつでもオプションの買手で、柳沢さんは売手専門とします。たまたま私のオプションがヒットして権利行使しますと…。
- −A− もちろん私(取引所の常務でない)は貴方の権利行使を受けて、「コール」の権利行使なら「買いポジション」を、「プット」の権利行使なら「売りポジション」を、そのときの先物相場がいくらであっても、貴方の持っているオプションの権利行使価格で差し上げなくてはなりません。
- −Q− 例えば、コールとプットの両方を持って、損の出る方を途中で捨てて、得の方を残す。ところがプットの方は、コールの側から権利行使が出た場合、渡さなければならない義務を負っているわけですね?
- −A− 何度も申しますように、「コール」の相手は「コール」ですし、「プット」の相手は「プット」なのです。コールの権利行使を受けるのはコールの売手であって、プットではないんです。コールとプットは、同じ現物で同じ限月であっても、小豆と大豆くらい違うと前に申しましたが、権利行使に当たっても、コールの権利行使にはコールの売手が、プットの権利行使にはプットの売手が対応するのです。小豆の買いに大豆を持っていけないのと同じです。
- −Q− では、デリバリーの責任を負うのは?
- −A− オプション取引では、買手の権利行使を受けるのは常に、そのオプションの売手なのです。プットもコールも、買手が権利行使し、それを受けるのは、コールならコールの売手、プットならプットの売手なのです。
- −Q− よく分かりました。それでは、次のポイントに移っていただきましょう。
続く
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