上巻目次へ              (1)へ  (3)へ
   オプション取引 Q&A (上)   
―おくればせの事はじめ―
柳 沢 逸 司
(2)選択権の売り買いとは?

−Q− 具体的な例で「選択権」の売り買いという言葉の意味を説明してください。
−A− 「選択権」というと、ちょっと難しく響きますが、これが「オプション」の日本語訳だとすると、2つの意味があります。
 まず選択権というからには「選択」ということですが、何を選択するのかと申しますと、オプションは、その名前が示すように、いろんなことを選択できるのです。まず、大豆とか粗糖とかコーンとか商品の種類や限月を選択することは、先物と変わりませんが、つぎにオプションでは「コール」を選ぶか「プット」を選ぶかを決めます。これらは、前回お話しましたように別個の商品だと考えた方がいいと思います。そして「権利行使価格」を選択します。どの権利行使価格を選択するかで、プレミアムの金額が違ってくるからです。
 例えば、いま大豆の先物価格が3万円のとき、権利行使価格2万8千円のコールを選択する場合と、権利行使価格3万2千円のコールを選択する場合とでは、プレミアムの金額が違います。当然、前者の場合はすでに2千円のプラスですから、それだけプレミアムが高いのです。後者の場合は、いま権利行使したら2千円のマイナスですから、プレミアムは低いのです。
 また「選択」ということからすると、オプションの買いは権利ですから、いまの先物相場で、権利行使するかどうかも選択できるのです。例えば、いま先物相場が3万円のとき、権利行使価格2万8千円のコールを権利行使したら得ですが、3万2千円のコールを権利行使すると、2千円の損が出ます。こういうふうに権利行使して損が出るときは、権利行使をしなくてもよいのです。オプションの買手は、権利行使を使い分ける(損が出るときは権利行使しない)ことができるのが特徴です。

−Q− 原市場の先物取引にはない特徴ですね。
−A− そうです。先物取引は義務の取引ですから、大豆の先物を3万2千円で買った人が転売するにも、2万8千円で売った人が買い戻すにも、現在の先物相場が3万円のときは3万円で売り買いしなければなりません。つまり、どっちの場合も、2千円の損が出るのですが、損が出ても、手仕舞いしなければなりません。(もちろん、現物取引でヘッジしている場合は、先物の損を現物の益で相殺する形になります)。オプションの場合は、利益になる方だけ選択すればいいのです。
 もうひとつは「選択権」の権は「権利」だということです。この権利はオプションの買手が初めにプレミアムを支払って買った権利ですから、行使しようと、忘れてしまおうと、オプションの買手の自由だということです。忘れてしまうことは滅多にないでしょうが、権利を行使して損が出るときは、放っておくことができるのが、義務の取引である先物と比べて、オプションが権利の取引といわれるゆえんです。
 「オプション」というのは、1つの商品であって、「プット」も「コール」も、大豆と小豆くらいに異なる商品と考えた方がいいと思います。例えば、いま先物相場が3万円のとき、権利行使価格2万8千円の「コール」と「プット」では、損得が正反対なのです。つまり行使価格2万8千円のコールの方は得ですが、行使価格2万8千円のプットの方は損です。しかし、オプションという商品の中身は権利であって、大豆や小豆のように手にとって眺められる商品と違って、先物市場にポジションを持つ権利だということが、オプションを分かりにくくしているのかもしれません。

−Q− オプションの価格は、何によって変動しますか?マーケットの権力者たちが、好き勝手に決めている、というようなことはないでしょうね。横文字が多く出る話は、大体うさん臭いから気をつけろ…と親から教えられましたので…。
−A− 日本語に訳しようがないというか、無理に訳すと誤解のもとになる言葉があります。
 オプションという商品の価格がどうして上がったり下がったりするかと申しますと、まず、オプションの原市場である先物の相場、例えば大豆オプションであれば、東京米国産大豆の先物相場と密接に関係しているのです。大豆の先物相場が上がればコールの買いは価値が上がり、先物大豆の相場が下がればプットの買いは価値が上がる、という具合です。

−Q− 権利行使の値段が近づけばプレミアムの額が大きくなり、遠ざかるほどに少なくなる、というわけですね。実現の可能性を絶えず値洗いしているわけですか?
−A− と申しますよりも、ご自分の持っているオプションの権利行使価格と、原市場の現在の先物相場とを比べてみて、益が出るようであればプレミアムが上がるし、損が出るようであればプレミアムは下がります。オプションの価格、つまりプレミアムは2つの要素で構成されています。ひとつは権利行使価格と原市場の先物相場との関係です。これは「本質価値」と呼ばれる部分です。例えば、大豆の先物相場が3万円のとき、権利行使価格2万8千円のコールは、いま行使したら2千円の益が出ますから、すでにそれだけの価値を持っています。本質価値を持つオプションのプレミアムは、少なくとも本質価値の2千円以上になります。大豆の先物相場が3万円のとき、権利行使価格2万8千円のプットはどうかと申しますと、いま権利行使したら2千円の損ですから、プレミアムは低いのです。
 しかし、こんなふうに、いまの先物相場と権利行使価格とを比べてみて、マイナスのとき、そのオプションの価値はゼロかというと、そうではありません。まだ、そのオプションに寿命があって、まだ期限までの時間が残っていれば、大豆相場が変動して、オプションが有利になる可能性があるからです。これはプレミアムの「時間価値」と呼ばれる部分です。プレミアムには、この時間価値、つまり期限までに価格変動の可能性がありますから、本質価値がない、つまり、いま権利行使したら損であるオプションの価値も、ゼロではないのです。

−Q− なるほど。それで到底実現しそうもないオプションにも、何がしかのプレミアムがつくのですね。
−A− そうです。オプションの時間価値は、先物相場が変動して、希望する価格に到達する可能性で左右されます。つまり価格変動性です。価格変動性が小さくて、とても3万2千円に達することは無理だろうと考えられれば、権利行使価格3万2千円のコールの時間価値は低くなりますし、逆に、変動性が大きく3万2千円の希望価格は簡単に実現するだろうと思われるときは、コールの価値は高くなります。

−Q− プレミアムを本質価値と時間価値の2つの要素から考えて、到達の可能性を計る。それがプレミアムの差で表現されるということですね。しかし、期限までの時間があれば、何が起きるか分からないというのが、先物相場ですから、超低価格のコールを好んで買う行き方も、論外のこととは言えないわけですね。
−A− その通りです。オプションの選択は、すべて買手の自由です。期限までの時間がたっぷり残っていても、価格変動性が小さいと、希望価格に到達する可能性は小さいわけですし、残り時間が短くても、価格変動性が大きければ、希望価格を達成する可能性も高いわけです。初めのうちは、低いプレミアムのオプションを買うことは非常に意味のあることです。この価格変動性をボラティリティと言いますが、ボラティリティについては後でお話します。【(40)、(44)参照】

続く

上巻目次へ        (1)へ   (3)へ