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現物株とデリバティアで損益通算、実現に向けた動きが本化・下
先物協会。令和2年度改正要望

 日本商品先物振興協会は29日、令和2年度の税制改正に対して@金融所得課税の損益通算範囲の拡大について、A決済差損失の繰越控除期間の延長について、B外国商品市場の決済損益に対する課税方法の変更について─を要望する。以上3項目は例年要望し続けているが、未だ実現には至っていない。だが総合取引所が創設され、取引のプラットフォームが一元化される状況を踏まえ、税制だけが垣根を維持し金融商品間に隔たりを残したままでは取引所の総合化も意味がないと指摘する声は多い。政府の大綱では「検討事項」の扱いだが、金融市場発展のためにはこれらの実現は必須だ。

個人投資と法人投資、同一ルールの適用を

 先物協会が要望する詳細は、@は申告分離課税を前提に商品先物取引を含むデリバティブ取引に係る損益、商品ファンドの収益分配金及び償還などに係る損益、そして上場株式などの譲渡損益などに係る損益も含め幅広く金融商品間の損益通算範囲を拡大し、個人投資家が商品先物を含む多様な金融商品に投資しやすい環境整備、Aは商品先物取引などのデリバティ取引に係る損失について、個人投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境整備の観点から、繰越控除期間(現行3年間)を延長すること、Bは外国商品市場取引の差金等決済に係る取引損益について、申告分離課税とすること一である。

 個人投資の場合、現行制度では前年に損が出た場合その後3年間の益と通算が可能になっている。だが反対に前年に利益が出ている場合、その後3年間の損失とは通算することができないという矛盾をはらんでいる。ただしこれは個人投資の場合で、法人は3年間、損益も逆の益損になっていても通算が可能となっている。こうした差別をなくし、個人に対しても法人との同一ルールを適用させるべきだとの指摘も多い。

税制の未整備が投資参入の弊害に

 「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、企業の内部留保や個人のタンス預金を投資に振り向けて経済成長を促す方針が掲げられて長いが、なかなか狙い通りにシフトしていない。

 その要因としてリスクヘッジ手段がうまく活用されておらず、特にデリバティブ取引が現物取引のヘッジ手段として有効的に使われていないためだ。

 商品先物取弓lは現物市場のリスクを補完する金融商品として、諸外国では市場が拡大傾向にあるにもかかわらず、日本では縮小に歯止めがかかっていない状況といえる。

 取引の低迷は、個人に対する営業規制強化や、個人情報に対する保護法施行で名簿の売買が禁じられ、業者側のアプローチが以前に比べて難しくなった影響は確かにあるだろう。だが、税制の未整備が流動性向上を阻害しているという見方も多い。

 以下、具体的に問題点をリストアップしてみる。

現株の売却に限られる、個人投資のリスク管理

 現在の日本では、個人の株式投資において長期保有の考えを持っていても、株価下落の際には損失リスクを回避するために株を売るという選択肢に限られてしまう。

 一方、世界の金融マーケットでは株の長期保有を求められる年金などの機関投資家ばかりでなく、個人投資家も最新の金融工学を使ったポートフォリオ管理を行っている。

 それが可能にしているのはデリバティブ取引であり、これが活発に行われているからといえるだろう。株の損失をデリバティブの利益で相殺する運用手段が日常的に使われている。

 例えば株価下落を予想する恐怖指数(VICS)を活用すれば、株を保有したまま、少額のオプション料で株価下落リスクを相殺できるなど、デリバティブが個人投資の保険として有効に機能している。

日本の税制に耐え切れず逃げ出す投資家

 前述したように法人については、現行で現株とデリバティブの損益通算が認められている。

 法人の場合は損益・益損通算で利益後1年間のみ有効という条件付きだが繰り戻し還付請求が可能で、また関連費用の経費計上、さらに10年間に渡る損益通算なども利用することができる。

 そのため、富裕層の個人投資家が投資を行うための法人組織を設立し、個人に課せられた金融所得課税を逃れるケースも後を絶たない。

 また海外法人を利用した租税回避行為にもつながりかねず、金融当局も警戒を強めているようだ。

 しかし香港やシンガポールでは、個人に対しキャピタルゲインの課税がなく、日本の個人投資家が香港やシンガポールに拠点を移す例もみられ、今後もこうした動きが増えると危機感を訴える関係者もいる。

金融庁の「税収100億円減少」試算は乱暴な極論

 金融庁は先物協会などが要望する損益通算を認めた場合、「税収が100億円減少する」との試算を提示している。

 だがこの試算は2012年以降のアベノミクス相場における株価上昇局面が根拠となっており、株価の下落局面が考慮されていない。

 現行ではバブル崩壊などの株価下落局面においては、個人投資家は株の塩漬けか、もしくは売却行為に及ぶしかない。

 つまり個人の投資環境では株価の下落局面では一切利益を得られず、金融所得課税が大きく落ち込む懸念がある。デリバティブやオプション取引はこうしたリスクをカバーする手段であり、現株は塩漬けで含み損が発生していてもデリバティブなどによる別の収益が期待できる。

 従って株価が下がり株式市場が落ち込んでいても、その分デリバティブの反対売買でデリバティフト市場等が活性化し、取引所や証券会社の収益が増加するため、株価の下げ局面でも安定的な税収に寄与するはずである。

仮想通貨業界も税制改正を要望、利便性ある金融税制を

 日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)も7月24日、税制改正に関する要望書を講評した。これは資金決済法と改正金商法が来年4月に施行されることを受けたもので、仮想通貨も金商法の規制を受けることになるため、他の金融商品同様に20%の申告分離課税とするなど、税制の公平性や中立性の担保を求めてい
る。

 金融税制で問題点を抱えたままでは、個人投資の促進が厳しく、「5G」・「ロボティクス」・「AI」時代において、アベノミクスの成長戦略に沿った形で、早急にデリバティブを含む金融所得一体課税を拡大させるべきであるといえるだろう。


中国金融市場の形成とその発展・下
公定レートと交換所、元切り下げで二重レートの解消

 1970年代まで外国為替の締め付けが厳しかった中国政府が、79年に輸出業者とその地方政府に対し、制限はあったものの外貨を手元に取り置くことを認可した。これは貿易収支以外の外貨についても適用されたため、80年代半ばまでには外国為替の40%を各省と輸出入業者が保有し、政府管理が60%にまで減った。

 為替管理の緩和に伴い、外国為替の取引l市場も徐々に形成され、80年10月からは輸出業者が割当を上回る外貨を売却することも認可されていた。80年代半ば以降、10以上の都市に外国為替交換所が設立され、取引額は90年に130億ドルに達した。

 だが交換所での取引lレートは公定レートに対し常に割高という問題を抱えており、外国為替市場が登場したことで中国元の公定レートと市場での実勢レートとの差が国内外で明らかにされた。

 中国政府が初めて元の切り下げを行ったのは81年1月だったが、この時は公定レー卜が1ドル1.5元だったのに対し新たに設定された「内部決済レート」は同2.8元とほとんど100%に近い切り下げ率だった。

 だが内部決済レートは貿易取引のみで機能し、それ以外の商取引には引き続き公定レートが使われた。こうした二重レートの状態は85年に解消されたが、その後も交換所は機能し続け、そこでの実勢レートと公定レートの間には変わらず差異が生じていた。

 中国政府はその後も段階的に公定レートを切り下げ、86年半ばの1ドル3.2元から89年12月の同4.7元、93年末には同5.8元とし、94年1月1日にようやく公定レートを当時の外国為替交換所のレート近似値である1ドル8.7元まで切り下げた上で公定レートと交換所レートの統合に至った。以後数回の調整を経て、97年10月までに為替レートは1ドル8.28元とし、05年7月に人民元改革が施行されるまでの間、ごく狭い幅での変動はありつつもこのレートで固定された。
    (以下、次号へ続く)



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(2019/10/29 2962 掲載)