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総合取引所発足、JPX清田CEO
「商品デリバは早期に一本化」
東商取代表執行役に大阪取の山道裕巳社長が就任

 日本取引所グループ(JPX)は1日、東京商品取引所を子会社化し総合取引所を発足させた。JPXは東商取の全株式を取得するために8月1日から9月24日まで株式公開買付け(TOB)を行い、買付予定数312万4,573株に対し303万1,033株の応募があった。議決権ベースでは97.01%となるが、TOBに応じなかった5社についてはスクィーズ・アウト(法的強制買収)で11日1日付で完全子会社とする。これに伴い1日付で東商取の新任代表執行役にJPX取締役兼執行役及び大阪取引所社長の山道裕巳氏が就任した。東商取の代表執行役社長はこれまでどおり濱田隆道氏が継続する。



 総合取引所発足に先立ち、9月26日に行われたJPXの記者会見で、清田瞭最高経営
責任者(CEO)は商品デリバティブに対して「総合取創設後に商品を拡充したい。またJPXとして営業も開始すると意気込みを語った。

 一方で来年7月に予定されている東商取から大阪取引所への一部商品移管について、「東商取との2社体制では非効率なので、できるだけ早期に一本化したい」との考えも示した。

 人事については来年4月にJPX全体の人事を固める方針を明らかにしたが、その際東商取の人事も併せて行う見通しとなっている。なお11月の完全子会社後、東商取の対外取締役は全員退任となる。

 今回の総合取創設に伴う新体制役員は以下のとおり。

日本取引所グループ
(10月1日)◇代表執行役グループCEO 清田瞭◇常務執行役(CIO、IT企画担当)横山隆介◇常務執行役(グローバル戦略担当)井阪喜浩◇常務執行役(総務・人事担当)長谷川勲◇執行役(東京証券取引所経営管理統括)宮原幸一郎◇執行役(大阪取引所経営管理統括)山道裕己◇新任・執行役(東京商品取引所経営管理統括)濱田隆道◇執行役(日本証券クリアリング機構経営管理統括)深山浩永◇執行役(総合企画担当)二木聡◇執行役(CFO、財務・広報担当)田端厚

東京商品取引所
(10月1日)◇新任・代表執行役 山道硲己◇代表執行役社長 濱田隆道◇新任・常務執行役(総合取引所推進担当)博康◇執行役(営業・広報・国際・システム・システム開発・市場構造研究所・新市場開拓担当)小野里光博◇執行役(経営企画・総務・法務・財務・経理・市場・自主規制・取引運営監視室担当)大石悦次

日本商品清算機構
(10月1日)◇代表取締役社長 濱田隆道◇新任・取締役(総合取引所推進担当)細村武弘◇取締役(総務・業路・リスク管理担当)安田毅史


香港、アジア通貨危機を乗り越え
グローバル金融センターに(下)
(第2952号の続き)
 ところが実際は、この後運用リターンを高めるため、LTCMは取引規模を変えずにレバレッジを高める作戦に切り替えた。投資家の出資金を一部返却し、資本の割合を減らしレバレッジを高めることで、大規模な運用資産からのリターンを小さくなった投資資本に還元し、利回りを高める手法である。

 具体的には70億jのうち27億j(約3,500億円)を97年末に返還し、この時点
でレバレッジを28倍に高めている。だが、このやり方では多額の運用資産から損失が発生した場合、損失を吸収するはずの投資資本が薄くなっていることから、破綻のリスクが高まってくる。翳りを見せたLTCMに一撃でとどめを刺したのが、98年に起こったロシア危機だった。

ソ連からロシアヘ、そしてデフォルトヘ

 92年1月1日、ソ連に代わりロシアが誕生した。それまで国家が生産や価格などをしていた計画経済を市場経済に移行しようと動いたが、あまりに急ぎすぎたためハイパーインフレを招いた。物価は1年で26倍も上がった。

 ロシア政府も90年代半ばまでは「資金が足りなくなるとお札を刷る」行為を繰り返しており、物価上昇率も年間100%を超えていた。この結果、92年から95年の4年間で物価が1,800倍ほどに膨れ上がっている。これを救ったのが国際通貨基金(IMF)で、経済が著しく悪化したロシアに対して資金を貸し、お札を刷る即席対応ではなく国債発行を指示した。

 売り出されたロシア国債は、国の信用が低かったため金利が20%以上と非常に高
く、実際よく売れていた。この結果ロシアのインフレは収まり一件落着…となるはずだったが、2つの要因で事態はマイナスに急罷関する。

 ひとつはアジア通貨危機でロシア国債の売れ行きが鈍ったこと、もうひとつは通貨危機で景気が落ち込み、ロシアの原油が売れなくなり、石油価格が大幅に下落したことであった。石油はロシア最大の輸出品であったため、石油会社からの税収が激減し、財政が急速に悪化していった。

 これにより、投資家がロシア国債に不信感を持ち始め、税収の悪化に加え国債も売れないというダブルパンチの状態に陥っている。IMFは再度ロシアに対し資金提供するが、金利が100%以上に上がったロシア国債に対しIMFの信用が裏付けされることでロシア国債は「ローリスク・ハイリターン」という歪な投資商品となり、資金提供を続けるIMFに対し批判の声が強まっていった。

 この結果、IMFから資金を借りることができなくなったロシアは、98年8月17日にデフォルトに陥った。

LTCMの実質破綻と救済

 ロシア危機により、世界中の投資家は「安全な新興市場など存在しない」とパニック状態になり、ブラジルやアルゼンチンなどの新興市場国から資金を引き上げる動きが強まった。

 さらにイタリアやスペインといったLTCMが「実状より安い」と査定した国からも資金の引き上げが始まり、国債や株が次々売られ出した。

 パニック状態の投資家はリスクに対し異常に敏感になっており、引き上げた資金を金利の額に関係なくアメリカやドイツの国債や株に回した。つまりLTCMが買っていた商品が次々値下がりし、空売りしていたものには人気が集中しどんどん値が上がった。LTCMの投資が完全に裏目にまわった瞬間であった。

 LTCMの運用は大失敗し資産は、急速に激減し、息の根が止まる寸前まで追い詰められた。事実上は破綻していたが、ただLTCMにはアメリカの大手銀行や証券会社などが多額の出資をしていたため、簡単に潰すわけにもいかなかった。

 ロシア危機の段階で、LTCMは70億jの出資金とは別に出資元の銀行などから1,000億ドル(約13兆5,000億円)ほどの資金を借りていたためである。さらにこれらの金融機関はLTCMに委託するとともに、自分達もLTCMと同じやり方で運用していた。

 つまりロシア危機で痛手を被ったのはLTCMだけではなく、アメリカの大手金融機関も多大なダメージを受けた。その上でLTCMに出資した資金が返却されなければ深刻な事態に発展しかねず、またLTCMも1兆ドル(約135兆円)に達するデリバティブ取引を結んでおり、これが破綻すると135兆円分の取引が一気に宙に浮くため、世界中の金融市場がパニック状態に陥る懸念があった。

 こうしたアメリカ発の金融危機を避けるため、ロシア危機後、ニューヨーク連銀が金融機関を集め、LTCMの破綻を防ぐことを決定した。

香港ドル金利一時300%超、ヘッジファンドらの攻撃防ぐ

 話を香港に戻すと、返還直前だった1997年前半は香港の不動産や株式市場に外国資本が大量に手流入しバブルの状況にあった。そうした中でヘッジファンドらの空売り攻撃でタイパーツの暴落から始まったアジア通貨危機は、マレーシアのリンギット、インドネシアのルピア、韓国のウォンと続いて香港にも上陸した。

 ヘッジファンドらは香港の銀行からもこれまで同様、当該国通貨である香港ドルを借り空売りを仕掛けた。同年10月21日にヘッジファンドらは大量の香港ドル先物を売り出し、この結果香港ドルの対米ドル相場がニューヨークやロンドンで急激に低落し、公定相場である1米ドル=7.8香港ドルを大幅に下回った。

 このため香港の金融管理局はヘッジファンドらの投機活動を手助けしている一部の市中銀行に対し懲罰的な高金利を徴収した。これにより銀行間市場の金利も大幅に上昇し、多くの銀行が米ドルを売って香港ドルを買うというスタイルに転じた。その後香港ドルの金利が上がり香港ドル安の状況が食い止められてヘッジファンドらが香港巻ドルを借りにくい状況が形成され、結果的に香港替はドルペッグ制を維持することに成功した。だが一時300%を超える水準にまで金利を上げた政策への
批判の声は多く、香港政府は市湯介入に一定のルールを設け、銀行間市場における流動資金の状況に関する情報報開示などを行うようになったのである。


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 編集発行人:村尾 和俊
(2019/10/1 2956 掲載)