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取引所を株式会社化する目的(上)
CMEは2000年、組織変更の効果とは

 大阪堂島商品取引所が中期経営計画で、取引所の株式会社化を打ち出した。計画計値では2020年度を目途に現状の会員組織を株式会社に変更するが、物的は財務基盤の強化である。欧米では2000年前後にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)など有名な取引所の株式会社化が相次ぎ、日本でも同年12月に施行された改正証券取引法により証券取引所の株式会社化が可能となった。商品取引所も2005年(平成17)5月施行の改正商品取引所法で株式会社化が認められ、東京工業品取引所(現・東京商品取引所)が3年後に株式会社化したが、今画は取引所の株式会社化を特集する。

 取引所が株式会社化する目的について、CMEは@意思決定の迅速化、A戦略的提携の促進、B取引所運営の効率化、C経営参加権と取引参加権の分離─を挙げている。

 CMEが会員組織から株式会社に組織変更したのは2000年11月13日だが、これが米国で最初の本格的な株式会社取引所となった。

 会員組織時代CMEには100以上という数多くの委員会が設置され、各々が取引所
の意思決定に関与していた。これが株式会社化決定後の同年8月には、一般の株式会社に設置される監査委員会、役員指名委員会、報酬委員会など、委員会数は14に減った。

 さらにそれまで意思決定の最高機関であった理事会は株式会社になると取締役会へ移行したが、取締役の人数も組織変更直後の2年間で39人から19人に減った。

 つまり、100以上あった多数の委員会を14にまで集約し、役員会の規模を大幅に縮小することで、意思決定の迅速化が実現したわけである。

 CMEの株式会社化は取引所職員にとってもモチベーションの向上に繋がったよう
だ。会員組織時代のCME職員は、会員に仕える召使いのような位置付けだという不満が少なからずあったが、意思決定のプロセスを変更したことで、日常業務については職員が自主的に意思決定を行う一般企業に近い形になったと評価する声が内部から上がったという。

 取引所の株式会社化についてCMEは戦略的提携の促進を掲げていたが、当然会員組織であっても海外の取引所などと提携関係を結ぶことはできる。ただ株式会社形態をとると、提携先に株主として出資してもらったり株式の持ち合い関係を結ぶことで、より密接な関係を形成することが可能となる。これにより配当や株価など目に見える成果で提携ビジネスの結果を判断することができる。

 取引所運営の効率化については、営利目的の株式会社になると株主価値の増大が′根本的な経営指針となるため、経費の見直しが否応なく実践され、無駄な部分が削減される。CMEも株式会社化決定後に投資銀行ウォーバーグ・ディロンリードのコーポレート・ファイナンス部門出身であるジェームズ・マクナリー氏を社長兼最高経営責任者(CEO)として招招聘した。プロの経営者をトップに据えることで、経営改革を促したわけである。

 マクナリー氏は多数の幹部社員を採用し経営チームを構成しCMEの組織目標を改
定するとともに、顧客第一主義から始まる価値宣言も制定した。なおこれらの組織目標と価値宣言は、CMEの全職員が常時携帯する身分証明書の裏にも記載されている。

 日本の取引所もそうだったが、会員組職取引所では、会員が取引所の取引に参加すると同時に、取引所経営にも関与する権利を当たり前のように有していた。当然意思決定は有力会員の方向性に従うこととなるが、それでは現状維持の保守的な経営になりがちで、グローバル化を進める足伽になりかねない。

 日本国内の有力な取引所も21世紀に入ってから次々に株式会社化の道を辿ったが、必ず議決権の問題が生じている。つまり会員組織の持分をそのまま株式にスライドさせただけでは、意思決定のパワーバランスが変わらず、株式会社化にする意味がない。

 東京工業品取引所も、会員組織時代の1990年代後半から徐々に商社や外資系の市場参加が高まったが、同時に従来の取引員を中心とする市場運営に不満の声も高まっていた。ただ意見が対立した際は数の力で取引員が押し切る形となっていたため、商社や外資系にとって東工取の株式会社化は願ってもない事態であった。
(以下、次号に続く)



 堂島取の株式会社化は来年3月までに

 東京工業品取引所(現・東商取)が株式会社化を決めたのは2007年(平成19)6月だった。ただ機関決定は6月だが内部ではすでに検討を開始していたようだ。同年4月には国内で初めて総合取引所の構想ががクローズアップされ、商先業界も大騒ぎしていた。東工取の株式会社化は主務省である経産省もバックアップした。

 その後、東工取が株式会社となったのは翌08年12月で、機関決定から1年半もかかっている。これは東工取が会員との意思疎通をかなり重視したためで、何度も繰り返し会員説明会を開催して株式会社化への理解を求めている。

 結果的にこの時期株式会社化していたことで、東工取は生き残っている。当時改正商取法施行により出来高は下り坂に入っていたが、東京穀物商品取引所は脱退会員に持分の返還(当初は2億円)まで行っており、これが後々まで響いた。最終的に東工取との統合議論まで破棄してコメ先物に最後の望みを託したが、経営破綻してコメは堂島取に移管された。

 その堂島も、株式会社化とコメ先物に存続を賭けようとしている。東穀取のこの二の舞にならないためにも、とにかくスピード感を伴う行動が求められるだろう。東工取はたっぷりと時間をかける余裕があったが、堂島取は1年半もかけられない。まず、株式会社化の目標は来年3月くらいに設定すべきだろう。 


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 編集発行人:村尾 和俊
(2019/9/3 2950) 掲載