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東アジアの先物市場
沼野 龍男
中国には「百年河清を待つ」という諺がある。黄河を流れる水が澄んだためしがないほどに、黄上を流し続けているということ。中国人の辛抱強さを表している。時には水害を発生させて多くの人命を奪ったりもするが、肥沃な黄土を下流に堆積して農耕面積を拡大してきた。
近年、黄砂と呼ばれる細かな塵が日本に飛来することがある。黄河の水が少なくなり、枯れ土が多くなっ
た時々を推測させる。
中国は世界の人口の約25%を占める農業国だが、農地(耕作面積)は世界のそれの約20%しか持たないといわれている。加えて、社会主義体制を維持するために、作物の品種改良はしても、農法の近代化や機械化(生産効率の高い農機具の導入など)は遅れている。かつて試験的に日本の脱穀機や精米機を導人してみたが、土や砂の混じった籾殻に精密な日本製機具が耐えられなかったらしい。
さて、中国の農民たちに最も知名度の高い日本人に白石和良氏がいる。彼は外務省に入り、中国の領事館に勤務した折、中国農業の実態に接し深く悩んだ。そして外務省を退官して農水省にトラバーユ、豊作物の品種改良と有機肥料の改善に没頭し、中国に普及していったのだ。
後年、私は関門取引所主催の中国取引所視察に行く折に白石さんをお尋ねして、いろいろ教えを乞うた。紹介状も何通かしたためて頂いた。中国国内貿易部の劉{リュウ)氏とはいまも親交が続いている。
中国は農作物や家畜の生産地と消費地がとてつもなく遠く、流通過程での品質保持などについて度々日本のシステムを研究しにやってきた。そのミッションの構成員は北は東北、南は深センにまで及びメンバー同志言葉が通じないほど全国規模のものだった。
国内における量と価格の平準化のための先物市場も形は整っている。この度の大地震被災地四川省の成都には、中国最大の肉類マーケットもある。高級日本酒や醤油の原料もちゃんと作られている。落花生や胡麻とならんで、緑豆は日本人に欠かせない。煮込んでも溶けない春雨やモヤシの原料だ。しかしながら食生活のレベルアップは国内だけでは賄えず、家畜の飼料、産業のエネルギー共々恒常的に世界から買い求めざるを得ない。国内の流通経済のためにのみ機能してきた先物システムも脱皮を迫られている。
今年の北京オリンピック、来年の上海万博と国際交流、門戸開放に向けてのイベントが連なっている。中国人は伝統的に射幸心も強い。日本が先物市場の本質を見失うようだと、東アジアにおける灯台の明かりは中国や韓国にもっていかれる。 |