第 259回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

畜力」の時代、ラバ・ラクダ人気
石油の需要屈折点告げる?
  
 原油価格の高騰に対応して、米テネシー州の農家ではトラクターを改造し、ラバ2頭曳かせて農場で干し草の回収作業をするようになった。ラバは軽油で稼動するトラクターより遅いが、燃費で言えば飼料代の方が安いとう。将来の農家の姿だと、この農家は自慢しているとか。
 週刊新潮(6月5日号)の[B級重大ニュース]面、「畜力」の時代、と題するニュースである。
 インドでラクダの飼育頭数底入れという話を最近どこかで読んだことがある。車両輸送が石油高のあおりでコスト高になった結果、ラクダの輸送力が見直されているという話だったと記憶している。
 ラクダといえばアラブと思い込んでいただけになんとなく読み飛ばしたが、いま手許の辞書を引いてみると「アジアとアフリカの砂漠地方で飼育され、乗用・運搬用に使われる」(小学館、新選国語辞典」とある。
 つきの砂漠をはるばると…。童謡で刷り込まれたラクダはアフリカの思い込みをこの年になって恥じるとは…。
 米国の農家、インドの輸送業者が、石油に見切りをつけた話はいつなのかわからないが、需要の屈折点を告げる先駆け役を果たしているのではなかろうか。
◇     ◇     ◇     ◇
 2002年を起点として原油は新たな均衡点を求めて、右肩上がりの上昇局面が続いてきた。
 20→30→40→50→60→70、1バレル当たりドル建ての原油(WTl)は語呂合わせのように西暦年の末尾に0を付けた水準に切り上がってきた。
 08年1月の100ドル乗せは2010年相場の先取りともいえよう。
 拙書「商品先物取引の手引き」で、こう記したのは07年10月、二校段階で100ドル相場に言及したが、石油には需要の場所点がないのか、という疑問をいだいたものだ。途上国の強い需要(特に中国)を背景に年間10ドル幅での上昇は許容範囲としても、である。
 だから、5月第4週の高値1バレル135ドル台示現(長期限月=2016年12月限145.6ドル)には、これはバブルではないか、と身構えた。
 「Recoil」。英紙エコノミスト(5月31日号)の表紙にはRecを赤字、oilを黒字で印刷し、135ドルと書かれたドラムかんが表紙を飾っている。
 Recilを辞書で確かめてみる。Ia(驚き・恐怖などで)[…から]あとずさりする、ひるむb[…を見て]後退する、2a(ばねなどが)はね返る、あと戻りする─などと出ている(研究社、新英和中辞典)。
 エコノミスト誌は社説で原油高の犯人を投機やピークオイル説に求めるのを戒めている。新油田開発には大きなコストとかなりの時間がかかる一方、需要増加国は補助策によって製品価格は原油コスト以下にあり、供給ひっ追感がぬぐえないからだ、と指摘している。
 また特集では「みんなが高い原油高のつけを払っているわけではない」と、原油補助策についてスペースを割いている。
 「世界人口の半ばは石油への補助策を享受している。この推定はモルガン・スタンレーによるもので、世界の石油の約4分の1は市場価格以下で販売され、ベネズエラのガソリンは1リットル5セント、中国の79セントがかなり高くみえるが、米国の1.04ドル、さらにドイツの2.35ドルに比べればお買い得」
 だが、アジアでは財政悪化から補助策の削減の動きが広がり始めた。5月のインドネシア、スリランカの値上げに次ぎ、4日にはインドとマレーシアが製品値上げに蹄み切っている。
 3日のバーナンキFED議長の「ドル安が歓迎できない物価上昇を招いている」という発表がドル安に歯止めをかける一方で、アジアでの製品値上げラッシュ。
 原油高一休止の背景である。

 (週刊 先物ジャーナル 08年6月9日 第942号 掲載)