第 258回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

コメ市場和らぐ カンボジア禁輸解く

 「コメ市場は26日、カンボジアがコメ禁輸解除に初名乗りを上げたため緩和の兆しをみせた」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、5月27日付)は2面にこんな記事を載せている。
 「世界第8位のコメ輸出国カンボジアは2ヵ月前、食品インフレ抑制策として輸出を禁止したが、フン・セン首相は26日、カンボジアはもはやコメ不足下にはないと言明し、『禁輸は直ちに解除し、100万トン以上のコメを輸出する』と述べた」
 「国際的な指標であるタイの中級品コメはカンボジアの声明を受けトン当たり1000ドル以下に下がった。ハンコクのトレーダによるとタイ中級米のオファーは約920ドル、4月の最高値1100ドルに比べかなり下がっている。フン・セン首相は『禁輸解除は世界、特にフィリピン(世界最大のコメ輸入国)の懸念を和らげることに役立つだろう』と述べている」「コメの価格は1年前の350ドルから4月高値まで、07年末から08年はじめにかけてのベトナム、インド、エジプト、中国、カンボジアなどによる貿易制限で暴騰した。こうした制限は国際コメ取引の3分の1に及び、フィリピンなどコメ輸入国のパニック買いを呼んだ。コメは東南アジア、西アフリカ、中米の30億人に及ぶ人々の主食。輸入国は輸入関税の廃止などで対応、メキシコは25日、最後の輸入関税廃止国として、コメ以外トウモロコシ、小麦、モロコシ(ソルガム)の関税を廃している」
 他のコメ輸出国は夏場の収穫情況を見定めて、当分は模様ながめを続けよう。例えばインドはモンスーンを待って態度を決めるのではないか、と全面禁輸解禁は尚早との見方を紹介しているが、小麦では輸出上位10ヵ国の1国ウクライナが、5月はじめに禁輸を解き小麦が6ヵ月来の安値に収まるのに寄与している。
 禁輸の広がりと買い急ぎ、国際貿易の“近隣窮乏”のあしき例がひとまず去りつつあるといえようか。ところで、日本の備蓄米国米のフィリピンへの輸出はどうなっているのか。
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 小麦、コメと二大穀物のパニック的急騰局面はひとまず去ったかにみえるが、OECD、国連の食糧・農業機構(FAO)など国際機関の予測によると食料品の高値は10年続く。
 FT(5月22日付)にはFAOとOECDによる長期食料品価格実績と予想のグラフを抱いた食品高止まり予想の解説記事が出ている。
 「短期的に緩むが、各国政府に長期にわたって高値圧力がかかる」というのが小見出し。
 「食料品価格はバラダイムシフト下にあり、危機以前の水準まで下落することは少なくとも向こう10年はなく、各国政府は食料品高の重圧に苦しむ。OECDとFAOのリポートによると、食料品の高原状態はバイオ燃料向け、中国など途上国の需要増加に基因する。ただ、短期的には記録的高値の一休止が見込める」
 「05〜07年の平均価格に比べ、インフレ率で調整した小麦価格は2017年には2%、コメは1%、トウモロコシは15%高となろう。油糧種子は33%高が見込まれる。『例外なく』実質平均価格は1985〜2007年の水準を上回るというのがリポートの予想」「1970年代の食料品危機、1996年のトウモロコシ危機時には元の水準にすぐに戻ったが、今回は全般に需給はタイトで在庫水準は低く、積み増しには時間がかかるため数シーズンにわたって急騰の可能性がある、とみている。リポートはさらなるバイオ燃料増産という前提に立っている」
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 「石油とメタル、需要減退懸念で下がる」(FT、5月30日、商品欄見出し)。
 「29日、商品の価格が広い範囲にわたって下がった。記録的高値が需要を減退させる恐れと米国経済の減速懸念が重なり合ったためである」
 下落幅が特に目立ったのは非鉄金属。ロンドン金属取引所〈LME)では先導格の銅がトン8000ドルという節目を2ヵ月振りに割り込み、2.9%安。アルミ(2.7%)、亜銘7%(7%)、鉛(6.6%)と軒並み下がった。インドネシアの供給不安から今月トン2万5500ドルと市場最高値を付けたすずは前日比10.2%の急落。
 原油は米国在庫が04年9月以来最大の減少幅をみせ、当初は買われたものの結局は安値引け。米原油製品在庫も減ったが、同時に過去4週で需要が0.7%減というデータに押された。
 農産物は29日正式に発表されたOECD・FAOのリポートで「食料品価格は最近の記録的高値から調整安あるべし」と報告されたため、コメ、小麦、トウモロコシ、大豆がそろって下落した。コメでは世界第2の輸出国ベトナムが2ヵ月以内に貿易制限を緩和するという見通しが弱材料となりシカゴのコメは10週振りの安値となった。
 国際商品市場は5月のどんずまりにきて高値による需要減退という大原則がじわり効き始めたようにみえる。
 原油も別格ないということなのだろうか。
 「原油、クレージィ・ウイーク”(狂った週)に10ドル上がる」(FT、5月24日の市場ニュースとコメント面の見出し)
 クレージィの表現は22日、OPECのアブドラ・エルバトリ事務局長に報道陣が「なにが起こったのか」とたずねたのに対する答え「マーケットはまことにもってクレージィ」から借用したようだ。
 「通常、1過で10ドル上がるには戦争を要する。だが今週(5月19〜23日)はそうではなかった。月曜には新高値の125ドルは維持できるだろうかと疑念に包まれていたのに期近(WTl)は135ドルを越え、長期限月(2016年12月ぎり)は145.60ドルに達した」
 記事によると16日にゴールドマン・サックスが「08年後半の平均価格は141ドルと予測、顧客に長期限月の買いをすすめる」とリポート、20日には米国の石油投資家、T・ブーン・ピケンズ氏が150ドル原油ありうべしと発言、21日には米原油在庫の大幅減発表と買いを刺激するコメント・ニュースが相次いだ。
 一方で、高騰局面で需要サイドの弱材料も浮上してきた。@欧米(補助策なし)では既に需要が減退Aさらに東南アジア各国(台湾、マレーシア、インドネシアなど)で、安値維持のための補助策を取り上げる動きが出てきたB米国中心に航空機会社が減便に乗り出す一方、ガソリン消費量の多い大型車の売れ行きが落ちている−など高値に抵抗する動きも広がっている。
 原油は立派な商品。マネーマーケット要因がうたかたのものとすれば、需給原則にはいずれさからえなくなる。
 5月最後の週はそんなことを改めて示したのではなかろうか。

 (週刊 先物ジャーナル 08年6月2日 第941号 掲載)