第 256回

255回 257回
米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

インド、食料品先物禁止へ
  
 「インド、食料品先物に批判の的」
 英紙ファイナンシャル・タイムス〈FT、6日付)1面には食品中心の高インフレにタイヤを燃やして抗議する群衆の写真を抱いた記事が出ている。
 「インドは食料品先物の包括的禁止を考慮しており、アジアに広がる『最近の商品値上がりに果たしているヘッジファンドと金融市場のトレーダーの役割についての懸念』を浮き彫りにしている」
 記事のポイントを抜き出してみる。
 ●5日、インドのチャイダムバラム金融相は緊急提案として食料品先物市場を閉鎖する考えを示した。5年前にインドを金融センターとする手だての一環として導入された先物市場だが、その流れをさえぎる動きである。
 ●マドリッドのアジア開発銀行(AUB)の年次総会でチャイダムバラム氏は農作物のバイオ燃料への転換について「我々が(食料品危機下にある単独での最大の原因である」と厳しく批判している。この発言はプッシュ米大統領が「食品値上がりはインドのせい」というコメントの次の日のもので「やわらかくいえば食料作物のバイオ燃料化は馬鹿げた策であり、きつくいえば人類に対する犯罪である」と述べている。米国のバイオ燃料源はトウモロコシだが、チャイダムバラム氏はマレーシアとインドネシア主導でのアジア地域でのバーム油の燃料化もやり玉にあげている。
(概要)
ソマリア 少なくともデモの群衆のうち5人が殺された。食料品値上がりに抗議する人の群れに治安部隊が発砲した。
南ア マント・トシャバララ・ムシマング衛生相が南アは食料引換券の発行を検討し、基礎的食品については税制で救済すると発言。
EU エコノミストのジェフリー・ザックス氏が米国とEUに農地をバイオ燃料源に奪われないようにうながす発言。
セネガル アブドラヤ・ウェ−ド大統領が非効率なUN食糧・農業機構の改組を求め、国連主導のグローバルな農業支援組織を提唱。
ベトナム スタンダート・プアがベトナムを安定的なBBから格下げを示唆。食料品インフレ下の政情不安定を懸念。
 ●先物禁止について痛烈な批判も出ている。インド出身でAUBのマネージング・ディレクター、ラジャット・ナグ氏はFTに「取引の制限は誤ったシグナルを送り、決して建設的ではない」と語り.AUBの同じくインド出身のチーフ・エコノミスト、イフザル・アリ氏は先物取引の禁止は有権者をあざむく政治的な策略だ、と断じている。
 欧州中央銀行のジーンクロード・トリシェ総裁も5日、議論に割って入り、投機は食料品値上がりに責めを負う必要はないとし「原因は供給現象であり、需要現象であり、それでほとんど説明できる」と述べている。
 メッセンジャーを射るなかれ。商品先物市場論のベースとなる議論が食糧危機の強まるなかで急浮上してきた。
 FTの2面には食料品危機の概要が表組みで次のように出ている。
◆     ◆     ◆     ◆
 「アナリスト、200ドル原油を警告」
 FT(7日付、企業・市場面)に目をむく見出しが出ている。
 「3年前、100ドル原油という超高値予測を出して的中させたゴールドマン・サックスのアナリスト、アージュン・ムーティ氏が122ドル台という新高値を付けた日に向こう2年間に200ドル原油ありうべしという予測を出Lた」
 「ムーティ氏によると適切な供給力を欠くことが次第にはっきりしてきた、とし『向こう6〜24ヵ月間に150〜200ドルの可能性が強まっている』と指摘している。5月にはOPEC議長のチャキプ・ケリル氏が原油は200ドルもありうると警告を発していた。1バレル200ドル(12月)のオプション取引は年初に比ベ3倍に増えている。ムーティ氏は05年3月に55ドル台だった原油が100ドルになると予測、投資銀行による利益追求のための予測との批判に当時の社長へンリー・ポールソン氏(現財務長官)が弁護に立った」
 200ドル予測のひとつの根拠は予期せざる供給ショックの緩衝役となるべきOPECの供給余力の低下。
 供給天井が低くなれば需要減で応じなければ相場の天井は高くなる以外ない。
 「3人が3人とも油価引き下げを約束」
 英誌エコノミスト(5月3日号)では米大統領候補がともに石油価格引き下げを約束している愚を記事にしている。ヒラリー・クリントン氏の4月28日のスピーチ要旨は次のごとし。
 @連邦石油税(1ガロン、18.4セント)夏場のドライビングシーズンに限定して廃止、その穴は石油会社の課税で埋める。
 A油価の操作を禁じ、価格をつり上げる投機家を追及する。
 BOPECをWTO、さらには米国のさばきの場に召喚する。
 米国の石油中毒症極まれりの提案だ。

 (週刊 先物ジャーナル 08年5月12日 第938号 掲載)