第 253回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

商品市場 金融のプロがかく乱
  
 石油、金、農産物…。3月18〜21日の国際商品の総売り人気はなんだったのだろうか。
 改めて英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、3月22日付)の商品週間市況欄を読み返してみる。
 「エネルギー、農産物、メタルに売り旋風」が見出し。
 「金、原油が月曜(17旦に史上最高値を更新したが、メタル、エネルギー、農産物と広絶囲にわたって売り物がかさみ、週間を通じて強人気の揺り戻しが生じた。ファンドによるリスク軽減の利食い売りがかさんだ結果で、イースター休み(21日)前に現金に逃げ込んだ」
 「今年に入ってヘッジファンドによるドル売り・商品買いが日立っていたが、そうした取引の解消が目立った。一時的な調整安なのか、はたまたかつてない新規投資家の参入が招いた商品バブルがはじけたのかは見方が分かれるところだ」いずれにせよ、この売りの突風は商品のファンダメンタルズ派への強い逆風となった。日本の小口商品投機家の買い建ては軒並み吹き飛ばされ、商い縮小に輪をかけたのである。
 大きくかつぎ上げ、どんとばかり落とす。需給ファンダメンタルズに大いなる異変が生じたわけでもない。この春の売り旋風の主役は金融のプロによるものだったといえう。
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 先物情報誌メリット春号の作家島実蔵氏の日本の市探訪記Gにある文章の一部を借りる。
 平成19年の暮れの産業構造審議会・商品取引所分科会で、商取市場は「プロの市場」にすることが「善」だ…と声高に報じていた。ド素人を市場に巻き込むから紛議になるというのだが、その場合の「プロ」とは誰のことを指すのか、審議会の口は重いが、どうも「金融や証券など」の金融プロらしい。
 本当に馬鹿バカしいが、平成19年10月の第45回金融審議会金融分科会第一部会における参考人、東京証券取引所の斉藤社長の意見を議事録から紹介してみよう。
 「ご案内のように先物市場というのは日本のコメ市場から始まったわけですけれども、もともと先物から取引というものは始まっておりまして、現物から始まったわけではなくて、先物をカバーする意味で現物というのは始まったわけであります」
 笑ってはいけない。仮にも金融庁特別審議会でのまじめな意見なのだ。
─中略─
 現代、社会的批判となっている紛議多発は単に勧誘行為の問題だと思う。当然、処罰して排除すべきだが、だからといって日本の商品市場を世界的余剰マネーの巣窟にしてしまうと、諸外国と同じ投資マネー跋扈の舞台に陥ることになる。
 先の証言は速記ミスか勘違いによるものだと思うが、プロとは金融屋のことだけに限ってしまうのではなく、その商品の生産者や加工業者、その銘柄の流通業者や消費者が原則である。リスクテーカーとして参加するものは、そこを自覚しなければ「角を矯めて牛を殺す」ことになる。
 プロとはそもなんぞや、この欄で、いくたびもこうした疑念を発した私にとって、生田さんならぬ島実蔵氏の文章は我が意を得たりであり、一部ではなく全文引用したかった。
 金融のプロの中のプロ、それは投資銀行であろう。それが、お手のものの証券化商品で深い痛手を負っている。そこから資金を借りてレバレッジを効かせてきた一部ヘッジファンドの撤収、そのあおりを受けての急騰の果ての急落、まさに金融のプロがいたずらに高下を増幅したといえるのではなかろうか。
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 国際商品は金融のプロの売り突風一過、再び底堅い地合いに復している。
 先導役は原油。WTlは9日、一時、1バレル112.21ドルと3月17日の最高値(11.80ドル)を更新した。
 米国の原油、石油製品在庫減少を手がかりにまたぞろファンド資金が流入してきたようだ。
 だが、再び最高値更新の背景には次のようなさまざまなギャップが指摘されている(柴田明夫丸紅経済研究所社長の3月15日講演会資料から)。
 CFTCのチーフ・エコノミスト、ジェフリー・ハリス氏が議会で次のように証言している(FT、5日付週間商品市況欄)。
 「投機家のポジション(買い)が原油相場を押し上げている証拠はほとんどない。中国とインドの強い需要と弱いドル、産油国外地政学的緊張、などが価格押し上げの大きな要因だ」柴田さんの説明資料と重なり合う。
 代表的な国際商品の中でいちはやく最高値更新にこぎつけたのもファンダメンタルズの裏付けがあってのことだろう。
 商品相場分析にはまずファンダメンタルズ。ゆめ、金融のプロにちょうちんをつけるなかれ。
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 「金は今年1トロイオンス1100ドルに乗せる可能性がある、と貴金属コンサルティング会社、GFMSのフィリップ・ケラップウィジク会長は予測する。『いまの足踏み状態は金の上昇局面の終わりを告げるものではない。GFMSは金投資にとって強気な環境は09年前半まで続くとみている。クレジット・クランチが続き、リスク回避とドル、世界経済、株式市場の弱さを招くからだ』と指摘している」(FT、10日付商品市況欄)GFMSの年次報告書「ゴールド・サーペイ・2008」が9日に公表され、ロンドンでの発表会を受けての記事であろう。
 小社は貧しい台所事情にかかわらず、GFMSの貴金属関連報告書を購読している。小社着は10日夕刻。辞書片手にひもどくには時間を要する。次号でその中味をデータとともに紹介させていただく予定だ。

 (週刊 先物ジャーナル 08年4月14日 第934号 掲載)