第 252回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

取引所取引の安定性
  
 「各国、基礎食品の貿易制限を急ぐ」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、2日付〉の一面脇トップ記事の見出しだ。
 「途上国政府は輸入増・輸出制限を通じて、食料品価格高騰とそれに伴う政情不安を抑え込もうと動いている。サウジアラビアは1日、広範にわたる食品の輸入関税を引き下げた。小麦は25%の関税をゼロに、鶏肉、乳製品、植物油などの関税を引き下げた」
 「3月31日にはインドが可食油、トウモロコシの輸入関税を廃止、高品質のバスマテ種を除くコメの輸出を禁止した。一方、世界3位のコメ輸出国であるベトナムは今年の輸出量を11%減らす意向を示している」記事のポイントを抜き書きしてみる。
 ●こうした動きは輸入関税によって農家を保護する政策から消費者を食品不足と価格高騰から守ろうという方向への急転換を意味する。だが、そうした措置は国際食品価格の螺旋状上昇を招くリスクを包含しているという批判もある。
 ●市場には投機家が満ちあふれ、供給になんらかが生じればすぐに反応する、とアグリビジネスへの貸し手であるロポバンクの商品アナリスト、ポール・ブレーク氏。
 「市場は非常にタイト、ネットの輸出業者が国内市場安定のため、輸出を制限するのをみれば、市場は神経質になる」
 ●ブレーク氏は食品価格の不安定度は金融市場の問題によって増幅されているとし「信用収縮は投資家が安全を求めて商品市場に押しやった。もし、そこでやけどをすれば彼らは資金を引き上げる」と指摘している。
 FT(2日付)4面には「リアドとカイロ、輸入関税引き下げ」と題する記事に二つのグラフが載っている。06年の緩やか上昇と07年の急上昇、食品別指数でみても上昇幅に差はあるものの、基調は上で共通していることがわかる。
 ウクライナ、ロシアといつた耕作地拡大の余地のあるところが増反に本腰を入れるまで08〜09年は上向き基調は崩れまい。ロボバンクのブレーク氏の見立てだ。
 アジアのコメ不足。日本は国際価格とかけ離れた高値にあるせいか、コメ離れのせいか、はたまたメタポリック症候群をおそれての食控えなのか、我関せずである。
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 FT(2日付)の一面トップ記事はUBSの190億ドルの償却発表(1日)によって、信用収縮危機は底入れしたという市場人気を伝えている。
 そうなれば、商品から投機家は一歩退く。金が1トロイオンス900ドルを割り、非鉄金属、穀物も調整安を演じる。国際商品は不振の新年度入りとなった。
 「UBSのうみ出しのニュースでドルが反発したため金は利食いに押された。CFTCの直近データによると、投機家の買い建ては08年はじめの水準にまで後退している。『買い建ての整理がさらに進めば、現物需要が強くとも一段安がありうる』とみるのはUBSのジョン・リード氏」(FT、2日付、商品欄)。
 1−3月の金融市場から商品市場の安全性?を求めての資金移動はひとまず峠を超し、本来の需給相場への再帰の道のりにあるのだろうか。
 3月31日、ポールソン米財務長官がSECとCFTCの統合案を中期目標として示した。古くからある議論だが、CMEグループの反論には筆者も賛意を表したい。
 いわく「資本調達の場である証券市場と価格発見の場である先物市場のルールの相違について理解不十分」
 先物市場の中心は世界的にみて出来高では金融市場だが、実体経済とただちにつながる現物商品の存在を見落としてはなるまい。
 そこでは実需給の枠を大きくはみだす金融のプロ資金は時に過度に価格を高下させる。
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「産業用需要がメタル・ブームの支え」
  FT(3月26日付)にはこんな見出しの記事が出ている。なんだ当たり前ではないか、読み飛ばしていたが、添えられていたグラフにつられて改めて読んでみた。
 「投機家と投資家が商品価格押し上げの責めを受けているが、広範なメタルに共通するのは産業用需要家の強い需要である」
 米投資銀行、リーマン・プラザースの調べによると取引所外取引のメタルは02年1月から今年はじめまで598%上がったのに比べ、取引所取引の同期間の上昇率は246%。この両者の差は07年に拡大した。前者が94%の上昇、後者は26%にとどまっている。
 リーマン・プラザースのマイケル・ウィドマー氏は「投機家は取引所外取引にアクセスしにくい。このことはその取引価格はファンダメンタルズをよりよく反映していることを示すはずだ。
 取引所外取引価格の上昇を考えると、メタルの値上がりは投機家だけによるものではなく、ファンダメンタルズが寄与している」と述べている。
 メタルと鉱石のうちフェロクローム、コバルト、モリブデン、マグネシウム、ロジウム、熱間圧延鋼、鉄鉱石、アルミナなどは生産者、現物トレーダー、消費者間で相対で取引されている。金融投機家はほとんど介在せず、クレジット・スイスがコバルトなどに小規模に手を出しているに過ぎない。
 「供給面の事故多発と特に中国を中心とする需要の強さなど取引所、取引所外に共通するファンダメンタルズのよさがメタル価格を支えている」とウィドマー氏は強調している。
 「取引所取引は取引所外取引に比べ、価格をならす働きがある」という指摘は記事にはないが、流動性の高さも両者の差を生んでいるとみたい。

 (週刊 先物ジャーナル 08年4月7日 第933号 掲載)