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42日にこだわった男
沼野 龍男
 かつて相対力指数なるものが一般化しつつあった頃は、30ポイント(P)以下は買い、70P以上は売りといった単純な指標として利用されている程度だった。そして、この指標が短期的には有効であるが、中長期的には弱いといった欠点をさらけ出してもいた。
 この欠点を補い、せめて中期程度にまで持っていけないか。思い当たったのが「相対力指数の移動平均線」だった。14日の相対力指数とその移動平均線との関係から判断していくもの。
 相対力指数の基本数は14であり、2で割ると7で、それ以上は割り切れない。従って、7を基数にして、その倍数である7、14、21、……と移動平均線を作り、それらと日足の14日相対力指数との関係を解明していった。その結果、基本法則はグランビルの移動平均法に準じているが、唯一の違いはお馴染みの逆行現象がでることだった。
 移動平均線の日数だが、7、14、……70まで算出してみたが、いたずらに日数を増やしても横ばいになるだけであった。その日数の限界点が感覚的に42日だった。
 例えば、高止まりしている42日の移動平均線を14日の指数が突き抜けて30Pあたりまで示したときは、買いではなく「売りシグナル」となる。その逆で、低位では70Pの示現が「買いシグナル」。或いは、下降しつつある42日の指数が接近・交差したときは、指数の値がたとえ50Pあっても「売りシグナル」となる。
 逆の上昇局面では、50Pであっても「買いシグナル」等々。即ち、単純な数値判断だけでなく、姿で把握する要素を加味した。
 後日談だが、相対力指数嫌悪派の先輩諸氏に「何だ、死に目(42)か」と茶化されシマッタと思ったものだ。実は前後の35日でも49日でも、さほど差はなかったからだ。
 この法則は当時かなり評判になり、商社のディーラーを中心に広がっていった。ただし「42日の相対力指数の移動平均線と14日の相対力指数の関係」が「42日の相対力指数と14日の相対力指数の関係」と誤って伝達された。
 さらに時は流れ、この42日の相対力指数が一人歩きし、チャート本にも顔を出した。しかしながら、何故42日なのかに言及したものはなかった。
 以上はその昔、法人部門の新規開拓に悪戦苦関していたときに、創意をこらしてユーザーに提供してきた村上久浩氏(もと豊商事)からの貴重な話である。思い起こせば村上氏は信州大学在学中に商品先物業界入りを決意、大分県出身なのになぜか新任地は北海道釧路を望んだ。全国を駆け巡って福岡で業界を去った。
 この秘話開示は、彼の業界への恩返しとみた。
(週刊 先物ジャーナル 08年3月3日 928号 掲載)