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次なる危機は食料品 (2)
「食料品の高値、UNに授助削減をせまる」
英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、2月25日付)一面の記事の見出しである。
「飢えを救う国連の機関(ワード・フード・プログラム=WFP)は農産物の急上昇で食料技助の削減を検討し始めた。WFPのジョセッテ・シーラン専務理事はFTに『新たな寄付金がすぐにでも集まらなければ、食料品の割当量を削るか、支給対象人員を減らすか、に迫られている』と述べた」
シーラン氏のFT紙へのコメントを抜き出してみる。
●援助削減は避けたいが.WFPの必要額は食料品の値上がりで週ごとに数百万ドル増えている。途上国の都市部の中産階級が食品市場からはじき出される“飢餓の新区域”が出現している。
●飢えは広範の国々に広がっており、インドネシア、イエーメン、メキシコなど、かつては緊急性を要しなかったところまで差し迫った問題と化している。WFPの活動の中心はこれまで食料品が入手できにくい地域に限られていたが、量的不足ではなく値段による入手難の地域にも援助の手を広げる必要に迫られている。
●食料品の値上がりに対応するため、途上国では三食をただの一食にする動きがあり、主食だけに限った食事もみられる。
WFPが食糧援助の削減にせまられているだけではない。記事は食料品高の対応策の広がりを指摘している。
「エジプトは20年ぶりに食料品割り当て制度を広げ、パキスタンは1980年代半ばに取止めた配給カード制を復活させた。中国とロシアなどが価格統制をはかる一方、アルゼンチンやベトナムは輸出税徴収あるいは禁輸措置を打ち出している」
食料品値上がりの背景についての記述をみよう。
「途上国の強い需要、世界人口の増加、気象変動に伴う洪水と干ばつの増加、バイオ燃料業界の穀物需要増など複合的要因が働いている」
「その結果、2月22日には大豆が1プッシュ14.22ドルと史上最高値を付け、トウモロコシは5.25ドルと12年来の高値となった。コメと小麦は1年で2倍になったうえ燃料費上昇で輸送コストも急上昇している」
◇ ◇ ◇ ◇
スパイラル(螺線形)な食料品上昇は食関連ニュースのスパイラル現象を招いている。FTからピックアップしてみる。
▽穀物輸出大手国のカザフスタンが輸出抑制を狙い、小麦輸出に関税を課すと言明した結果、高品質小麦相場が暴騰(2月26日付)「カザフスタンの農相は25日、年率20%近くのインフレ抑制のため、『なにが生じようと、すぐに輸出を制限する』と言明。カザフスタン小麦は北米産同様、たん白とグルテン含有が多い高品質。ミネアポリス穀物取引所の春小麦相場は25日、このニュースを受け、1プッシュル当たり3.89ドル高の23.15ドルと最高値を更新した。1日で20%の上昇ははじめて。春小麦は1月以来倍値、1年で4倍値に達している」
▽インドネシア高官、食料品価格上昇が10年前スハルト大統領を追い落とした社会不安を再現しかねないと警告(2月27日付)
「先週、何百人という食肉店主が牛肉の値上がりに抗議してジャカルタの路上に繰り出した。豆腐とテンペ(インドネシアの納豆)の上昇に怒った1万人以上のデモを受け、政府は1月に大豆の輸入関税カットに追い込まれている。インドネシアでは豆腐が1年で50%、コメが25%、調理用油がおよそ40%値上がりしている。クリスナマーティ農業副大臣は米国に世界の食品危機打開に向け主導的に動くよう呼びかけ『バイオ燃料産業への補助策は問題を大きくしている』と指摘している」
インドネシアはバーム原油の大手生産国でバイオ燃料ブームの恩恵を受けているが、同時に国内の調理用油も上昇している。2月に政府はバーム原油に輸出税を課す一方、大豆、小麦、小麦粉の輸入関税をカットしている」
▽「サウジアラビア、水不足懸念で穀物生産停止へ」(同〉
「米農務省によると、サウジは2016年までに小麦の生産を中止する。水資源の枯渇に対応する手立て。サウジは1970年代に農業振興策を打ち出し、食料自給に踏み出した。1970年の小麦生産3000トンから1991年には380万トンを産し、一時輸出国でもあった。一方、水需要は人口が1974年の700万人から2400万人に急増、産業振興策と相まって急増している。何千という深い井戸や27年の淡水化工場に依存するなど、水問題はサウジにとって深刻」
「米農務省によると、2016年のサウジによる小麦輸入は340万トンに達し、穀物大手輸入15ヵ国にランクされる(現在の小麦国内生産量は約250万トン、輸入量は取るに足りない)」
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英誌エコノミスト(2月23日号)は「なにが下降?」と題して、国際商品の高騰を解説している。農産物について触れている部門を抜き出してみる。
「理論的には農家は価格が発するシグナルにいち早く反応し、ある作物から他に転作すべきだろう。だが、小麦、とうもろこし、大豆とそろって高い。ある作物に集中的に転作すれば、残された作物が上がる。ウクライナ、カザフスタンには未開拓耕地が広がっているが、耕作適地化には基盤整備を要し、それには何年もかかる」
「米農務省は世界の小麦需要は今年も供給を上回り、米国の小麦在庫は1948年以来の低水準になると予測している」
国際商品全般に、世界景気の減速で需要はある程度減り、供給事情もここ数カ月急速に悪化することはなかった。ならば高騰には他の要因が働いているはずだ。記事はこうした分析に立って、投機に高値の責めを負わせている。
「金利の低下、株価の動揺、住宅価格の下落が相まって、投機家は債券、株式、不動産市場から退出、新たな居場所を求めている。国際商品はここ数年高い収益をあげ、最近の経済混乱を比較的痛手なしで乗り切ってきた─魅力ある選択肢となっている。シティグループは原油高は主としてファンド資金流入の急増によるものとし、ロンパート・ストリート・リサーチは。“鉄バブル”と評している。シティグループの表現を借りれば『ひとつのバブルの崩壊はしばしば次のバブルの種を蒔く』」
農産物もバブルなのだろうか。その判断は市場に委ねるほかない。
だが「バイオ燃料が飢えを救えない」(FT、2月26日付社説の見出し)のは事実だ。
「1990年から2005年の間、5歳以下の子供で体重が標準以下の比率は5分の1となった。だが、食料品価格の上昇は世界の貧困層に再び栄養失調と飢えを招来し始めている」
どうすべきか。
「供給が増え、在庫が積み増され、価格が安定するまでの数年かかろう。その間、バイオ燃料の助成国は補助を切り詰め、WFPへ供出すべきだ。世界はみんなに行き渡る食料品がある。そうする意思さえあれば」
社説の結語だ。
居酒屋で食い切れないとわかっているくせに注文してしまう。テーブル一面の酒の肴。
客に完食させないことがサービスだと心得ているような温泉宿の夕食。
小説現代3月号の荻原浩による砂の王国という小説の1節である。所持金もなくなり、路頭に迷う元サラリーマンが飢えの中で想起する飽食の記憶。
平均的なサラリーマンには、共通するものだろう。
スリムな体調を目指して、スポーツジム。それはそれで結構だが、筆者が近所のジムで見る限り自動車で往来するおばさん、おじさんがほとんど。走って往来すれば、ガソリン節約にもつながる。農産物高騰は先進国に身の丈にあった生活を、というシグナルを発しているように思う。

前号のこの欄は尻切れに終わった。
「投機買いもソフト三品なら大いに結構」の一部が脱落していた。校正ミスをお許しください。 |