第 244回

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米良 周              
 1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

高値の先導役、エネルギー・メタルから農産物に

 商品の買い人気の対象が日替わりといわぬまでも週変わりで変化している。
 1月28日〜2月1日(メタルの週)。中国の大雪と電力不足、南アの電力供給危機が非鉄金属と貴金属を押し上げた。
 非鉄金属ではアルミ、亜鉛、鉛が値上がり御三家。いずれも中国の生産シェアが高いことで共通するが、アルミは特に電力消費量が多いため、電力不足による減産見通しで、週間で10.6%と非鉄金属中最大の上昇幅をみせた。鉛では悪天候でバッテリー需要が増えるとの見方も支援した。
 貴金属では火力発電用石炭不足から南アの国営電力会社エスコムが、電力をカットしたため、鉱山会社が一時操業停止に追い込まれた結果、南ア依存度の高いプラチナ族が急騰、金も追随高となった(1月29日、通常電力の90%を供給することを決め、鉱山は操業再開)。
 07年推定で南アの世界供給シェアは78%、金は11%(中国と南ア合計でも22%)。
 「UBSのジョン・リード氏は『南アの貴金属供給には向こう5年間、不安がつきまとう(エスコムは電力供給安定には5年かかると表明している)。特にプラチナでは供給不足が強まる』と指摘、UBSの08年平均予想価格を1トロイオンス1500ドルから1820ドルに引き上げている」(英紙ファイナンシャル・タイムス=FT、2日付商品欄)。
 大雪(中国)と電力不足(南ア)がメタル相場を押し上げたメタルの週を終えても、プラチナは史上最高値更新の歩みを止めない。
 2月4日〜(農産物の週)。小麦を先導役として幅広い農産物が高値を競い合う。
 FT(6日付、市場と投資面)で、新春の農産物高騰劇を解説している。
 「農産物が5日、軒並み記録的高値を付けた。強いファンダメンタルズとインフレヘッジ対象資産として関心が高まっているからだ」
 まず、上質春小麦、大豆、パーム油が史上最高値を付けたほか、トウモロコシが12年振り高値、軟質下級小麦も史上最高値にせまった。春小麦は年初から41%の上昇、過去3カ月で上昇率は75%に及ぶ。高品質小麦は食パン、軟質など低品質はビスケットなどに向けられる。
 アラビカコーヒーはニューヨークで8年振りの高値、ロンドンでロブスタは10年半、ココアは4年振りの高値をそれぞれ付けている。
 記事では値上がり商品を列挙し、その値上がりの背景を次のように分析している。
 ●金融機関によると、アジアの機関投資家は農産物をインフレへのヘッジととらえ、関心を深めている。アジア地域での食品インフレは他の部門にも波及し始めている。JPモルガンの農産物アナリスト、レビス・ヘーグドーン氏は、商品への投資は経済環境に関するヘッジだと指摘、「外的(要因)市場の農産物価格への影響は08年強まる一方だ。金融的な面からの農産物市場への投資は増え続ける」と述べている。
 ●インフレヘッジの買いに加え、需給ファンダメンクルズの強さもある。在庫は低水準、途上国とバイオ燃料部門の需要は活況を呈している。
 ファンダメンタルズの強さの例として、アナリストは世界3位の小麦輸出国であるカナダの在庫急減をあげている。カナダの小麦在痺は07年12月末、1520万トンと1年前に比ベ30%減っている。小麦ではトルコとモロッコの輸入軍費増加に加え、日本と韓国の新たな入札も伝えられている。米国の春小麦在庫は30年来の低水準にある。
 ●シカゴのブローカーであるアイオワ・グレインによると、いまトウモロコシ、小麦、大豆と米国の春の作付けをめぐる三つどもえの競合が進行中で、向こう数週はさらなる高値が見込まれる、と指摘する。
 農産物の週は持続性があり、月、四半期へと伸びていく可能性がある。
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農産物高騰。在庫水準が低く、需要増加基調が買い人気を誘っていること自体問題視する点はない。
 だが、FTの記事にある経済環境へのへッジ、この場合、特にサブプライムローン問題に発する金融商品の波乱への金融機関によるヘッジ需要が農産物高騰に大きく寄与しているとしたらどうか。
 現物商品は需給データに透明性があり、需給の規模はつかみやすい。こみ入った証券化の果て、抵当権市場は崩壊の過程にある。そのつけの一部を農産物への買いヘッジに回している。小麦、トウモロコシ、大豆は基礎的な食品原料であり、広く世界の食卓にその価格動向が影響を与える。
 S&P GSCl指数といったインデックスであれ、農産物ETFであれ、買いヘッジは現物・現物先物市場で建てられる。金融市場の混乱へのへッジ買いだとしたら、混乱収束まで、その買い建玉は繰り延べられはしても減ることはない。
 ある意味で需給の一部は凍結され、実需給の実態を需要超過への増幅して伝えていく。
 金融のプロの失敗で、食事代が高くなる。
 金ETFなら過剰流動性の受け皿となる。ジュエリー高騰など高値のつけは需要を減らすことでしのげる。
 農産物の証券化には一考あってしかるべきだと思う。
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 「巨大な需要パワー、小麦を大きく押し上げ」(FT、8日付商品欄の見出し)「7日、シカゴ、ミネアポリス、カンサスの小麦先物相場がそろって1ブッシェル当たり30セントの値幅制限いっぱいの高値を付け、小麦粉原料に適した高たん白春小麦(ミネアポリス)が海外からの強い需要を背景に小麦高騰の先導役となり、3月限が15.23ドルと史上最高値を更新、シカゴ小麦3月阻も10.63ドルと新高値に進んだ」
 小麦主導の農産物の春高基調はいささかのゆるぎもなさそうだ。
 騰勢一服のメタルの中でプラチナは南アの電力不足減産をはやして、5日に1トロイオンス1850ドルに達した。
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 石田さんがお亡くなりになった。鍋島氏に悼む文章を寄せてもらったが、筆者も1節をささげたい。
 80歳をとうにこえていた頃だと思う。すたすたとあまりに軽やかに歩いてこられたので、「年不相応ですね」と失礼なことばに「頭だって、足だってきたえなきゃね。プールを歩いてます」と返された。
 ある席で「私が苦情山積み時代の理事長でございます」と自虐めいたことばをあいさつの中にはさまれたことがある。7、8年前だったろうか。
 石田さんは言外に「おのおの自戒めされ」といわれたのだろう。自戒不足がいま深刻な日本の商品先物不況の根底にある。
 「石田さん、この1、2年様変わりに自戒の歩みが進んでいます。農産物市場、活性化の動きも強まっています」こう申し上げたい。

 (週刊 先物ジャーナル 08年2月11日 第925号 掲載)