第 242回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

08年の金は高値志向
  
 「1月3日、金はロンドン午後の値決め(フィキシング)で1トロイオンス858.85ドルと名目値で史上最高値を更新した。それ以降も900ドル台に向けて値上がりしている。この展開はおどろくに足りない。07年9月のアップデート1で我々はサブプライム危機の発生に触れ『この危機は金の強気市場に向けての新たな段階の出発点となる』と記した。それが証明されたといえる。米国の抵当権市場の崩壊を契機とした金融危機が進行中であるだけに投資需要が金を未知の高値に導くことを疑う余地はない」
 英国のメタル調査・コンサルティング会社、GFMSが17日発表した金の最新需給報告書「ゴールド・サーペイ2007─アップデート2」の「要約と価格展望」の章の冒頭部分である。
 以下要約部分のポイントを抜き出してみる。
 ・GFMSは投資による押し上げの余地はまだかなりあるとみる。例えば、多分年前半ではないにせよ年内に1000ドルレベルを試す可能性を否定しない。世界の金需給表にあるように08年前半、投資需要が先導して1〜6月の平均価格は前年同期比28%高の840ドルを予想する。
 ・高値への火種は引き続く金融市場の不安定と経済成長の鈍化。さらにはその打開策として特に米国の金融緩和策である。こうした環境下では米ドルの下落が進む可能性が高い。ドルの下落は景気後退懸念が消え、米ドルの復調の素地が整うまで続く。その時期は09年のいずれかの時点となろう。それはまた金相場の転換点となる。
 ・08年前半、加工需要の停滞、特に主力のジュエリー加工部門は20%以上の落ち込みが予想される。だがその減少は新たな投資需要で十分埋め合わせが付くと我々はみている。
 ・ただ、高値が変動の大きい金相場によるジュエリー部門への打撃は過小評価することはできない。08年通年の全需要に占めるジュエリー部門の比率は50%を割り込むことも考えられる。この事態は金高基調の持続性について大きな疑問を呈する。投資需要の動きが一本調子でなくなるとみられる09年早々は要注意だ。
◇     ◇     ◇     ◇
 金のサブプライムショック高は14日の914ドル(ロンドン)でひとまず休止する。
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT)19日付)の商品週間レビュー欄の見出しは「ETFの流出、金の上昇軌道に歯止め」
 「最大の金EFT(投資信託)であるストリート・トラックスからの投資家撤収は1月第3週22.7トンに達した。特に17日には世界最大の産金国中国の月間生産量に匹敵する21トンが流出した。『ETFの投資家は他の投資家と異なり、パイ・アンド・ホールド(買いを維持する)とみられていただけにこの傾向が続けばこの見解に疑問符が付く』とHSBCのジェームス・スティール氏は指摘している」
 21日、世界の株式市場は01年の9・11以来の下落幅を記録、インド株式は11%の下落。
 世界経済と金融市場混迷見通しでパニック売りが走った結果である。
 エネルギー、非鉄金属が実体経済の悪化懸念を映して下がったが、危機に強い金もまた下落で足並みをそろえた。直近の高値に比べ、約50ドル安。「ドルがユーロに対して上昇したため」(FT,22日付商品欄)。
 22日、米抜き打ち大幅利下げ(FFレートで0.75%)。金急反発。米利下げでユーロが買われ、ドルが売られた結果。「22日の金上昇には投資家銀行の強気のコメントも支援した。モルガン・スタンレー、クレジット・スイスは08年の平均予想価格を950ドルに引き上げ、パークレイズ・キャピタルは夏前にも1000ドルを試すとの見通しを発表した。弱いドル、インフレ懸念、米景気減速が重なり合うというのが強気の根拠」〈FT、23日付商品欄)
 まさに強弱の日替わりである。
 第3週の金ETFの売りが、他の資産の目減りの穴埋めである可能性がある。大豆、砂糖など農産物が調整安を演じたのも、金融資産の損失穴埋め動機が指摘されている。
◇     ◇     ◇     ◇
 24日、フランスのソシエテ・ジェネラルの巨大取引損失発覚。金はドル高、ユーロ安もあって一時910.5ドル(ロンドン)と14日高値にせまった。「巨大損失のニュースが金融市場のさらなる動揺を招くとして、金、プラチナのほか、非鉄金属、農産物など幅広い商品が買われた」(FT、25日付商品欄)。
 08年の金は高値志向、といえよう。

 世界の金需要 (単位:トン、GFMS調べ)
 
 
2006
07年
推定
06年
06年
前半
06年
後半
07年
前半
07年
後半推定
08年
前半予測
07年
前半比
供 給
 
 
 
 
 
 
 
 
 
新産金
2,479
2,444
-1.4%
1,171
1,308
1,197
1,284
1,226
2.4%
公的金売却
367
488
32.7%
225
142
218
270
209
-3.8%
回収金
1,107
895
-19.2%
627
480
456
439
524
14.8%
推定投資家売却
-
-
n/a
-
-
228
-
-
n/a
供給計
3,954
3,826
-3.2%
2,023
1,930
2,098
1,956
1,959
-6.6%

 
 
 
 
 
 
 
 
 
需 要
 
 
 
 
 
 
 
 
 
加工
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ジュエリー
2,283
2,407
5.5%
1,054
1,229
1,285
1,123
1,031
-19.8%
その他
647
661
2.2%
326
320
349
312
302
-13.4%
加工計
2,930
3,068
4.7%
1,380
1,550
1,634
1,434
1,333
-18.4%
地金退蔵
232
238
2.6%
91
141
145
93
87
-40.0%
ヘッジ買戻し
369
418
13.5%
282
86
319
99
95
-70.3%
推定投資家購入
423
101
-76.0%
270
153
-
329
444
n/a
需要計
3,954
3,826
-3.2%
2,023
1,930
2,098
1,956
1,959
-6.6%
価 格
ロンドン、午後の値決め
1トロイオンス当たりドル
603.77
695.39
15.2%
590.00
617.54
658.12
732.35
840.00
27.6%

 (週刊 先物ジャーナル 08年1月28日 第923号 掲載)