平成20年 1月1日(火)(毎週月曜日発行)第920号
新 春 特 集 号
        発行所 有限会社 先物ジャーナル社
        発行人・米良 周 編集人・高橋 伸幸
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先物ビジネスの将来展望
◇“めらの目”08年、ソフトに買い人気 大豆は史上最高値更新を視野
◆“年頭所感”日本商品先物取引協会 会長 荒井史男
◆ネット顧客の情報管理 システム構築し4月にも立上げ
◆上級外務員認定 試験は2月2日
◆東工取、次期システム OMX社に決定
◆東工取、株式会社化の機関設計
◇お知らせ
 編集の都合により、1月7日付を休刊します。
 14日より通常通り発行します。ご了承ください。


先物ビジネスの将来展望
覆面座談会
出席者
国際派(海外事情に精通した金融シャーナリスト
事情通(先物研究家・元ファンド・マネージャー
飛入り(傍聴していた取引員OB)
司 会 本誌
業界の不振が続いています。そこで新春企画として「先物ビジネスの将来」について、海外に豊富な人脈をもつ国際派の金融ジャーナリストと商品ファンドの草創期から先物業界との深い係りもつ業界事情に精通した進歩派の先物研究家に、ごく近未来の先物業界についてビジョン展開していただきました。

取引所間ネットワークの進展で、顧客の利便性増す

 (司会)いま市場の競争力強化、活性化が政府間レベルで審議されています。商品先物だけでなく金融・資本市場も世界から大きく遅れていることが指摘され、商品と金融の相互乗り入れの話も具体化されています。
 はじめに産業構造審議会の意見から、近未来の先物ビジネスの展開について、進歩派・国際派の観点から展望を述べてください。
 (国際派)個人的には、金融審議会も含めて今回の2つの審議会での議論は国際化のステップとして評価しています。具体的には、06年に合併したNYSEユーレックスや、昨年のシカゴ商業取引所(CME)の動きなどと似た流れを生むのではないかと思っています。これによって「ワンストップ市場」と「ネットワーク化」が進めば、海外のトレーダーたちには受け入れられるでしょうね。つまり商品も、株や通貨などと同じ市場で取引する、そして電子取引プラットフォームの共有=取引所間の合併やネットワーク化が進むという形です。
 CMEは昨年7月13日にシカゴ商品取引所(CBOT)を合併した後、10月にはブラジルのBM&F(ブラジル商業取引所)との株式持合いについても合意し、今後は、BM&Fの上場商品についても「GLOBEX」で取引できるようになるというシナリオを描いています。「GLOBEX」はすでにニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油他のミニ取引や日経225も上場しており、今年はさらに、CBOTの農産物も韓国のKOSP1200株価指数も上場するとしています。これにBM&Fの全商品が加わるわけです、つまり、「GLOBEX」を使って、様々な市場の商品を同じ端末で取引できるということです。
 12月にシンガポール取引所{SGX)の関係者と話しましたが、昨年CMEから全株買い戻した商品取引所のJADEについても同じ構想を持っていて、今後は、アジアの他の取引所とネットワークを組みたいと語っていました。取引所間ネットワークによって、投資家は、同じプラットフォームを通じて様々な商品を取引できるようになります。アジアは国によって法規制もシステムも言葉も違うので、欧米のように簡単には進まないだろうとは言っていましたが。

既存取引員は減少の方向に、新参入者はまだ未定

 (司会)確かに、海外の市場間統合や取引の多様化などには目を見張るものがあります。同じ質問ですが、国内の取引員に焦点を絞って考えてみるとどうでしょうか。
 (事情通)産業構造審議会の意見からというわけではないが、既存の商品取引員の離脱が増えていくと思、う。先ず、これまでのテレコールによる新規獲得という営業態様自体がビジネスモデルとして通用しなくなっていることはいうまでもないでしょう。勧誘営業行為の考え方を根底から転換しなければならないが、これまでの営業形態を見なおそうとした時、結果として、し用品取引員業務がいままでのように儲かる商売か否かを考えざるを得ない。
 とすると、自ずから「やーめた」という気分になる経営者も多いのではないか。東工取の24時間取引のシステムにしろ、国際化はいいが、85億円ものコストを誰が負担するのか、疲弊しきっている取引員に負担能力はあるのか。取次ぎ業者というと、いままでは落ちぶれたイメージもあったが、このコスト負担を考えれば格好つけている場合ではないでしょう。
 それに今後は、市場参加者のプロ化を志向するらしいからリテイル・オンリーだった取引員からすれば、全くソッポを向かれた施策が今後次々と送り出されてくることになる。先ずは取引所を辞めましょう、次いで清算機構もどうでもいいやとなり、ついにはこんな商売やってられねえ、ということになるのではないか。
 ということで、既存の取引員はどんどん止めていくと思われる。外資か、証券、金融からなのか。次の新たな参加者は誰がなるのか分らないが、極近未来というと、既存の商品取引員が激減するのは間違いない。これは主務省の思惑にも沿っている。

高コスト経営の終焉

 (司会)商品先物業界が得意としてきたリテイル(個人投資家)営業の今後は、かなり厳しくなるとの話がでましたが、ネット取引だけで、高コストの取引員経営が維持できるのでしょうか?
 (国際派)準個人営業をどうするのかについては、最終的には会社の最高経営責任者の判断です。少なくとも、高コストで組織営業を続けられる時代は終わりましたよね。続けるのは勝手ですが、少しでも問題のある営業マンがいたら、紛議処理で会社の財産はなくなるぐらいの覚悟が必要です。実際に、過去数年間、取引員を買収した異業種の関係者たちの中には、「産業廃棄物の山を買ってしまった」と言った人もいましたし、既存の取引員経営者の中にも、会社統合や自主廃業といった形で見切りをつける方も増えつつあると思います。
 一方、最近は、歩合外務員制度を推進する取引員があります。これは米国のFCMの外務員と同じなので理解できます。完全歩合でなくても、最低の生活保障をした上で、それでも良いという営業マンだけが生き残るのが自然の流れではないでしょうか。
 先物取引は、本来様々な形で利用できる運用ツールです。ただ、日本の営業マンに、そうした知恵が足りず、「売らんかな」のセールスにばかり頭が回っていたということが問題だったと思います。だから、商品ファンドを知らない営業マンさえいたわけです。
 結論から言えば、勧誘段階だけでなく、顧客の売買から返金まで含めて、従来型の営業を全て見直して、質の良い外務員を育成して、商品先物会社の信頼を確立することに専念することが第一です。逆に、それが出来ない経営者は他の事業に資金を回してくれたほうが、日本の先物市場のためにはいい。本当の意味で先物を勉強して、個人投資家の利益のために継続的かつ適切なサービスを出来る営業マンなら、どこでも必要とされます。
 ネットについては、この第一段階、つまり商品先物取引全体の認知度、信頼度を上がってからでなければ経営は大変だと思います。
FXもそうでしたが、ネット取引については手数料が安くなりますから、まず顧客口座を増やすことが求められるからです。すでに顧客基盤のある証券会社に聞くと、商品価格全体が上がって、金や原油など、個人投資家に注目されていることもあるので、商品もオンライン取引のメニューの一つとして推奨すれば、既存客の数パーセントは商品の口座も開くのではないかという希望的な声もあります。しかし、現実には、商品市場を分析したり、取引ノウハウをアドバイスしたりといった手間をかけてまで勧めるだけのメリットがあるかどうかは疑問だという声も少なくありません。「ゼロサム取引で、大事な株のお客さんをなくしたくない」という証券会社もあります。その辺、商品だけでやってきた人たちの方が、リスク管理を含めて、やはり先物を取り扱う気構えが出来ています。その意味で、「証券会社にやらせれば、ネットだけで紛議がなければ商品先物市場は栄える」という意見にも疑問はありますね。

個人投資家は大切なリスク・テイカー

 (事情通)主務省や取引所による制度、施策は市場参加者のプロ化を指向するであろうが、業界としては個人投資家を忘れていいはずはない。様々な思惑を持った人間が参加をし、価格という主題で競い合うのが市場であって、投資・金融のプロのような特定、少数の参加者で構成される市場が市場といえるのか、疑問だ。確かに、一般投資家はそのようなプロの背景に多数存在して、一般投資家の意思は当該プロというフィルターを通して市場に反映させればいいのかもしれない。市場の阻害要因とも言うべき、本来入るべきでない意思を排除して、適正な競争環境を構築した市場を形成できるのではないか、という理屈が成り立たないわけではない。しかし、当業界関係者は古くからマーケット信奉者であったはずで、伝奉してきたマーケットとは誰もが参加できるものであったはずだ。これまで、この「誰でも」のところの中心が顧客である一般投資家であった。商品取引員はいまこの時にこそ、主務省・取引所が何と言おうと、大切なリスク・テイカーたる個人投資家を体を張って守り抜く党悟が必要だ。まずは投資家に勝って儲けていただくことを最優先に置く。その最優先課題を達成させるためには商品取引員こそが、その商品と相場のプロにならなければならない。進歩的でもなければ国際的でもないが、委託者保護、委託者のニーズに全力を挙げて応えるという商売の原点に戻れというのが率直なところだ。さもなければ商品取引員業務など止めるべきだし、未来はない。
 商品先物取引とは「何ぞや」ということを考えれば、最終的には物の受渡しを伴う物流の一環なのだから金融商品と完全に一体化させることは不可能だ。金融商品と一体的に考えるべきなのは投資家保護、営業のあり様という側面だけではないのか。確かに一般委託者が入ると苦情、紛議が出るかもしれない。しかし、こっちが「儲けましょう」と声をかけておきながら、いざ委託者がその気になって入ってきたら損益など知らぬ存ぜぬを決め込み、手数料だけいただければいい、という当業界に蔓延していた対顧客感情に苦情の発生原因があるのであって、個人投資家の存在自体に問題があるわけではない。
 なぜ委託者は商品取引をしなければならないのか、ということを業界全体で再考する必要がある。不招請勧誘の禁止に対して相当神経質になっているが、その前にこれまでの「勧誘」のあり万を考え直すことが先だろう。委託者はなにも先物業界の発展のためにとか、取引員の会社を大きくするためとか、外務員にいい思いをさせたいために商品先物取引をするわけではない。金を儲けたいから入ってくるのであり、これまでのテレコール営業はその金銭欲を刺激して、新規獲得作戦を展開していたのではないのか。ところが新規参入者のどの程度が儲けを手にすることができたか、定着したか、生き残ったか、ということになると言うのも憚れるというのが実情ではないか。
 商品先物取引は10倍以上のレバレッジ取引であり、投資リスクは一般的な金融商品より数段高い。株式の信用がおよそ3倍であるから、商品先物取引はその更に3倍以上のリスクがある。もともとゼロサムゲームであり、売りか買いかという二者択一の丁半ばくち的な部分がある一方で、この高いレバにより想像以上の損益が出る。投資資金以上の、ときにはその数倍、数十倍の損益が出る。投資はリスクとリターンが同率で存在することが鉄則であるから、その投資の常識を業界は委託者に説明してきたのであろうか。いまは懺悔と猛省のときといっていいのではないだろうか。
 (飛入り〉インターネットの普及で、電子取引が手軽にできるようになった。業界OBも結構ファンはいるようですよ。でも私なら知り合いの外務員を通して楽しみたいですね。なぜなら相場談義や世間の噂話など、いろいろ話が聞けるからです。日計りで毎日商いするわけではないし、そんなに大きな枚数を取引するわけでもないから、通常の手数料は担当外務員へのサービス科と思っている。

商品ファンドは世界に運用の幅を広げる

 (司会)個人は集団型で参加するのが望ましいといわれています。いわゆるファンド、投資信託の類ですね。だが、わが国の商品ファンド運用額は昨年11月末ついに300億円を割りました。かたや証券の投資信託は80兆円を超える。規模の違いが余りにも大きすぎます。
 団塊世代の資産管理の受け皿と期待される商品ファンドをこれから伸ばしていくには何か対策が必要と思われます。どんなものが考えられますか。
 (国際派)商品投資顧問の能力アップ、成績アップが前提です。最近、商品投資顧問が金融業界を回り、ファンド・オプ・ファンズに組み入れて欲しいといった話をしています。以前に比べて熱心に営業するようになってきたのはいいことですが、投信会社や生保などほかにも競争相手が多い中で、「商品は高騰しているので、この指数を買っておけば儲かります」といった話だけでは、ビジネスにはならないと思います。まずパフォーマンス作りが必要ですし、自分たちの資金である程度の運用実績を示していくことが求められます。
 それから、商品ファンドを単に、日本の商品先物市場で運用するだけに使うのはもったいない。金融商品取引法で運用規制が緩和されたことも考えて、例えばファンド資金を分散することで、新たなビジネスチャンスをつかむ武器にすることも考えられます。ビジネスはギブ&テイクです。
 また、商品ファンドをきちんと分析する媒体もあればいいですね。今は協会がデータを開示していますが、個人投資家だけでなく、法人も、数字だけを見て判断できる人は多くはありません。業者の紹介も含めて米国のパークレーズリポートやMARのような媒体が必要です。
 〈事情通)もっとストレートにいえば、専業取引員が設定する商品ファンドは日本市場にこだわりすぎている。日本の商品市場でなければ手数料が落ちないとか、先物取引をじかに取引した方が手数料をすき放題取れるといった助べえ心を捨てることが第一。でなければ、いつまでたっても商品ファンドで飯を食える企業にはならない。
 次に、運用成績をもっとクリアにするべきだろう。日本のCTAには未だにパフォーマンスを公表していないところがある。その公表していないCTAを使う商品ファンドもある。そこそこの結果を出しているからいいようなものの、何か裏でやっているのではという疑いをもたれても文句は言えないはずですよ。損得いずれも、どんな投資対象で、相場がこう動いた結果、こうなりましたということがクリアでなければ投資家としても納得できるものではない。この2点をすでに達成しているのは一社だけです。顧客情報は社内にファイヤーウォールを構築して管理し、情報にできるかぎりの透明性をもたせる努力もしている。これを見習うべきですよ。後はいかによいパフォーマンスを挙げられるかだ。
 (司会〉全取引員参加型の販売団をつくるのはどうか。証券各社がいろいろな投信を扱っているように。
 (事情通)面白い発想だが、商品ファンドが個々の商品取引員所属のものという発想があるかぎり難しいのではないか。金融商品取引法の世界で野村なり大和が組成したファンドを売るのであれば可能性は十分あるが、野村、大和、あるいは三菱商事Fのファンドを売ったからといって、その顧客名簿は完全に当該販売取引員からファイヤーウォールによりシャットアウトされるから取引員に旨みはほとんど無いに等しい。そんな暗い旨みを望まない体質に各社がなっているのであればいいのだがね。
 (国際派)話題にもなりますし、面白いと思います。そのためには経営者の間で、業界内で、なぜあそこのファンドを売るのかとかといった話はやめにして、市場啓蒙、ファンド啓蒙のために、目先の利益不利益には目をつぶる覚悟が求められます。その時点で、世間に出して恥ずかしくないファンドを業界全体で啓蒙することが必要です。
(続く〉
 (2008年1月1日―第920号)