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巌さんの教える相場道
市場経済研究所代表 鍋島 高明
岩本巌さんの名著『相場は生きている』(上、下2巻)が復刊され、人気を呼んでいる。この本の初版が日本繊維新聞社から刊行されたのが昭和31年だから、50年振りに版を改め平成の投機家を元気づけている。この本には錚々たる人が序文を寄せた。繊維商社豊島を率いる豊島久七大阪三品取引所理事長、大阪商工会議所会頭で大阪化繊取引所理事長の杉道助。杉は「これまで理論だけで相場に近づこうとしたものが、よく相場を解明し得なかったのは、相場のもつ生命を無視したからであり、世のいわゆる相場師たちが理論を遠ざけたのは、虚心に相場の声を聞こうとしたからである」と述べている。杉はかつて、老舗の繊維商八木商店社長として相場と格闘した経験がある。そして、野村証券専務取締役の平山亮太郎、伊藤忠商事常務取締役の越後正一の四氏で、越後は後に社長に昇進、相場師経営者として「伊藤忠の中興の祖」と称された。
本書の中で岩本さんは、「相場という名の生き物はニュースを食って生きている。その意味ではあらゆるニュースは相場に吸収されるが、そうかといってあらゆるニュースが相場を動かす材料となるわけではない」と述べている。ニュースが相場を動かす「材料」としての資格を持っためには「人気という濾過作用を受けなければならない」と岩本さんはいう。
プロはニュースが材料に熟成するのを静かに眺めながら見守る。プロはニュースを食べ急がない。
それは仕掛ける時だけでなく、手じまいする時にもいえる。プロは利が乗った光り玉を食べるころあいをじっくり見極める。かつて桑名筋こと板崎喜内人が言った「プロは儲けに耐えられるが、アマは儲けに耐えられない」という名言が思い出される。
相場は奥が深い。相場道を五十年以上に亘って追求してきた岩本さんでも実践においては収支決算はマイナスだった。古今東西、相場で財を成すのは稀である。だが、相場で一攫千金の夢を見る人は後を絶たない。相場{投機)が丁半バクチと根本的に異なるのは、研究次第で勝率を高めることが可能な点にある。秋の夜長に『相場は生きている』をおすすめしたい。相場の醍醐味に一層引き込まれることだろう。 |