|
商品、トレードから所有へ
「かつて商品への投資はオルターナティブ(代替)だったが、いまやメインストリーム(主流)になった。去年、ワトソン・ワイアットのシニア投資コンサルタントはファイナンシャル・タイムス紙に『商品はアセット・クラス(資産の種類)の中で比較的理解しやすく、投資しやすい。したがって、年金基金の資産分散にとって低い手のとどくところの果実を提供する』と語っている」
「この夏の出来事もまた他のアセット・クラスに比べての商品のアピール力を増すことになった。現物商品をベースとした投資商品は流動性の破損下にもクレジット市場の商品群に比べ耐久カを発揮した」
英紙ファイナンシャル・タイムス(FT10月29日付)のファンド・マネージメント特集にある「商品、トレーディングから(現物)所有へ」と題するビンス・ヒーニイ氏の小論の書き出しである。
「商品への人気は収益幅を縮小させていく。同じような手法で利益を求めようとするファンドが商品先物市場に多く参入するにつれて、収益余地は小さくなってくる。収益向上を求める投資家の要望に応えるためヘッジファンドは新たな道を模索する」
記事はヘッジファンドが新たな利益確得源として、現物商品市場へのアプローチをはかっていると指摘している。
なぜ、ファンドが現物を目ざすのか。記事によるとその利点は二つ。
ファンドは逆ザヤ時には期近を買い、期限切れ近くに2番ぎりに乗り換えていわゆるローリング益を求めることができる。順ザヤ、特に順ザヤ幅が大きいケースでは現物を確保し保管し、先行き先物市場で現物を渡すことで利益を得ることができる。
現物を保有することによって、ファンドはスクライーズ(玉締め)益が獲得できる。ここ数年、非鉄金属でみられることだが、ファンドの現物保有で自由市場在庫が細り、値段が上がった。小さな市場で大きな買いポジション、ヘッジファンドはプライステーカーではなく、プライスメーカーに転じている。
記事の筆者はこのヘッジファンドによる現物商品所有は両刃の剣だとする。
「商品を取り巻く環境が変われば大量保有玉の処分をこなす流動性が不足する一方、値段が上がるにつれて規制当局の目が厳しさを増す。天然ガスでのアマランサ・アドバイザーズによる大量買い建てと、その失敗は価格の大幅変動と高値による消費者の打撃へもたらし、議会からの批判を招いただけでなく、規制当局(CFTC)が店頭市場での取引をもチェックすることに結び付いた」
記事は結語部分でへッジファンドが生産─物流まで含めて商品に大規模に参入してくれば、流動性が干上がった金融市場同様、流動性不足で動きが取れなくなる可能性を指摘している。
◇ ◇ ◇ ◇
現物商品市場の需給規模は一夜にして変わることはない。金融市場の混迷、混乱の受け皿としての商品市場にはおのずから限界がある。原油、プラチナの史上最高値更新、金の高騰…比較的安全とみなされる商品市場は高値更新劇の道程でその限界を見極めようとしでいるか、にみえる。
先の記事には「現物商品への投資はマネージャーに商品に関する情報の優位性を与える」という記述がある。
ひるがえって日本の商品先物市場で現物商品に触れることで情報の優位を得ようとするプレーヤーがどれだけいるのだろうか。
商品取引員の現物市場への接近(貴金属では一部みられる)と同時に、現物中心の業者(現物商)の商品先物市場へのアプローチがともどもに進む必要があるのではあるまいか。
トレードから現物所有へ、という世界的な動きには行き過ぎる懸念があるが、ひとつの行き方であることは確かだ。 |