第 232回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

原油・金高騰の一考察
 原油は「春安→夏高→秋安→冬高」という季節性がある。北半球の夏場(ドライビング・シーズン)にはガソリン需要、冬場には暖房需要がそれぞれ急増し、春、秋の不需要期に積み増された原油在庫が夏、冬に取り崩されるからだ。
 商品先物の解説書でここまで書き進んで、この10月の原油最高値更新劇をどうみたらいいのか思い悩んだ。
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT16日付)のショート・ビュー欄の筆者ジョン・オーサーズ氏は次のようにコラムを書き出している。
 「この事態は想定できなかった。原油はニューヨーク先物が15日に最高値を付けた。米国のドライビングシーズンは終わり、ハリケーンシーズンによる被害も避けられ、冬場の集中暖房シーズンの始まりは先の話、石油は季節的に下落してもいいはずだ。トルコとイラクの緊張が石油上昇を説明しているようだ」
 「この2年、金相場は石油と連動している。金はインフレヘッジ財としての歴史を持つため、石油高はインフレ懸念につながるという見方もできる。だが、株式市場は落ち着いている。シティーグループの株式ストラテジスト、トビアス・レプコピッチ氏は、この点について『エネルギーコストはインフレを呼ばない。1970年代でもそうだった。70年代は労働コストがエネルギーコストに連動していたがためにインフレが高進した。労働組合の弱体化で石油価格は労働コストへのインパクトは当時ほど働かない。労働コストは企業にとってエネルギーコストより10倍の重みがある。(株式)市場が高油価に耐えている理由だ』と述べている」
 原油相場の季節性が薄れたようにみえるのはなぜかの答えはFTの記事からは見出せない。
 「地政学的リスクの浮上は季節を問わず、この秋はそれがトルコとイラクの緊張。原油自体のハリケーンシーズンという季節要因も、従来の秋安パターンを崩している」と書き加えてみる。
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 「金の高値、ジュエリー加工需要を抑える」FTの同じ16日付、市場と投資面、ニュース分析欄の見出しだ。
 記事は金の世界的販促機関であるワールドゴールドカウンシル(WGC)が15日に公表した「インドの金需要は07年間で当初見通しの1000トンから15〜25%減の800〜900トンにとどまる」という見通しを踏まえたものだ。
 「WGCの見通しは金が1トロイオンス759.9ドル(ロンドン)と28年振りの高値を付けた日と符合しており、金の主要下支え役であるジュエリー加工需要が高値で抑制される最初の兆しである。今年はじめ、WGCはインドの金需要は年間で40%増えると予想した。WGCのインド駐在マネージング・ディレクター、ジャイ・ミトラ氏は価格がはね上がったため、やや警戒感を強めているとし、年間予想を下方修正したとしている」
 「金の消費需要は07年上半期で25%増、インドでは72%も増えた。ジュエリー加工は上半期に比べ伸びが鈍るが、下半期も活況が続く、とみるのはモルガン・スタンレーのフセイン・アリディナ氏。ABNアムロのアナリスト、ニック・ムアール氏は『高値による減速は季節需要の高まりで一部カバーされる。10月中旬からのインドの婚礼シーズン入りとそれに続く祭礼需要がある』と説く。ルピーの対米ドルでの強さも、インド国内の金価格を06年高値以下にとどめる。北米、欧州のクリスマスシーズン、08年2月の中国の新年需要シーズンが続く。石油高のおかげで中東の消費も押し上げられる」
 「1月比20%高の大部分は過去2ヵ月に生じたが、ドル安から逃避、石油高によるインフレ懸念から投資主導の動きだった」
 記事は「市場は家屋のように砂上には建てられない。金のファンダメンタルズはまだしっかりしているが以前ほどではない」(リシエラ・ジェネラルの貴金属アナリスト、ステファン・ブリッグ氏)、「現物需要の退潮は金の上昇が急に過ぎることを示唆している」(UBSの貴金属ストラテジスト、ジョン・リード氏)」といった意見を紹介、目先警戒信号を発している。
 9月はじめの700ドル突破で現物需要が干上がったあと、750ドルから720ドルの調整局面で金調達がやや盛り返した、ともある。
 金は史上最高値を日ざす過程にあるというのが私見だが、それは押し目を入れながらという道行きであろう。
 別項にざっと20年前、現在休刊の日経ゴールド・リポートでの大和証券の児玉氏への私のインタビューまとめ記事を再録した。
 金はいま20年前とがらり異なり、buy and hOrdがふさわしい
  
     私の相場鑑定方      大和証券 投資信託部次長 児玉 満
 金であれ、株であれ、チャートにによる判断はどの程度の幅で高下したかという『値幅』と、どれほどの期間が経過したかという『日柄は3年といった寿命で山、谷を形成する)といった表現が経験に裏付けられて生き続けているゆえんだ。物価指数を基軸にして、例えば太陽の黒点の増減まで加味したりした50年周期の波動が、米国中心に珍重されることが多い。図@は1930年を100としたドル建て金価格と米卸売物価指数の推移である。金本位制、金為替本位制、金ドル本位制と金の固定期は長いものの、物価安定期に金への復帰という道筋が読み取れる。80年初頭の1トロイオンス当たり875ドル(ニューヨーク・コメツクス期近、1月21日)は1930年代をボトムにしたインフレの上昇大波動の頂点で示現したものだ。
 大相場の調整のメドとして相場の世界では「半値・8掛け・2割引き」という経験的モノサシがある。875ドルの半値437.5ドル、その8掛け350ドル、そこから2割引きで280ドル。
 85年2月25日の281.2ドルは調整安のメドをとりあえずは実現した数字と読める。現段階で居心地のいいところは300ドル前後といったところだとみている。
 ひとつの循環が終わり、超大波動での調整局面にあるという見方に立てば、当面横ばい、いわゆるボックス相場で、そのレンジは300〜400ドルということになる。
 上昇波動にあるときの「buy and hold」(買い進み)から、いまは「buy and sell」(売り買いを小刻みに繰り返す)という手法がふさわしい。
 インフレが終息した82年9月にも500ドル近い相場があり、83年2月には一時500ドルを突破した。今回、年初からの急騰では仕手めいた買いが現物、先物市場ともどもに入り、先物では売り方を締め上げているようでもある。調整局面でも、なんらかのハプニング、人為策などによってはね上がることもあるが、基本的には往来の域を抜けない。
 超長期波動は次にどの方向を指しているのか。循環的な波動は克服できた、という見方もあるが、図@でみる点線(卸売物価指数)が下に曲がってくる兆しがないわけではない。ディスインフレ(インフレ終息)からデフレへ、という局面でもある。すずという小型商品で、下支えが効かなくなり、原油のスポットも下落を速めている点、物価のチャートのアタマがまるまってきたという感触がなきにしもあらずだ。
 1929年の大恐慌の先駆現象とした図Aにみるように10年ほど前ごろから商品相場が頭を打ち、株式中心のマネーゲームが盛行していた。オプション取引が過熱化していたのも恐慌前だ。金融機関の行き詰まり、農地下落一現象的にはよく似た点が数多く指摘できる。商品相場鎮静から約10年後の恐慌、50年周期の波動が生きているかどうかの検証は2〜3年の期間ではできないのはもちろんだが、こうした超長期波動をまるきり軽視することはできない。

日経ゴールドリポート、1986年1月27日号)

 (週刊 先物ジャーナル 07年10月22日 第911号 掲載)