第 231回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

米FCM(商品取引員)10年で半減の教訓
 前週号のこの欄で「商品先物取引業の考えられる姿(自由化後)」という日本商品取引員協会(日商協)ビジョン委員会のメモを紹介したが、開催日について「1996年月日」とし、具体的月日が落ちていた。資料を改めてみると11月14日。進みゆく老眼ゆえとお許しを頂きたい。
 石油の資料を探していたらビジョン委員会のメモが出てきたのに続き、今週はゴムの資料を探していたら私のコラムのコピーが出てきた。
 エム・ケイ・ニュース社発行のエクスチェンジ1996年11月15日号)の「先物夜話」。題して「米FCM、10年で半減の教訓」コラムには96年11月9日に開かれた日商協の外務員登録更新講習会(名古屋)での筆者の講演「近未来の商品先物業界」の内容が載っている(下段)。
 ビジョン委員会のメモと重なり合うが、あえて掲載してみた。
 「先物夜話」には来日中だった米国の独立系FCM(商品取引員)R・J・オブライエンのオブライエン会長との一門一答が載っている。
 Q−FUTURES INDUSTRYの11月号で″FCMの窮地“という特集をしています。そこに預かり資産1億ドル以上の38社がランキングされていますが、証券、銀行、穀物商社系といったところがほとんどです。
 A−オプライエンが唯一といってもいい独立系で、激しい競争が続いていることを示しています。個々の顧客に合った取引という従来路線を踏み固めていく考えです。
 Q─日本では女性と老齢客はなるべく避けるというコンセンサスがFCMにはありますが、私は自らの成長の手足をしばっているように思います。米国ではどうですか。
 A─米国でも女性と老齢客へのアプローチには事前に取引の仕組みを十分に理解してもらい注意に注意を払っています。ただシニアにせよ女性にせよ潜在的には大きな顧客層です。特に一定の財産を持つ未亡人には財産の管理リスク回避ニーズは強く、いいアドバイザーを求めています。かつてに比べ米国人全般に先物利用の知識も豊かになっているのは事実です。オプライエンで2万ドルという小口商品ファンドを開発したのはそういうニーズに応えるためです。
 米国の投資事情を10年遅れてなぞる。金融商品の世界の半ば常識である。商品先物も同じかどうか歴史のみが知るところだろうが、米国でFCMがピーク時から半減した約10年前を想起しても無駄ではあるまい。
 独立系の生き残りR・J・オブラインはいまもランキング上位にどっしりと座っている。
 オブライエン会長のことばはそのままいまの日本に通じると思う。
◇     ◇     ◇     ◇
 「商品を買う前に基本に立ち帰れ」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(9月29日付)の市場ニュースとコメント面のコラム「ロングビュー欄の見出しだ。
 「私が知り得たのは過去
数年、商品への関心がヘッジファンドのみならず、主流格の大手金融機関にも広がってきたことである。基礎的な商品の上昇が続いていることに誘われたのだが、この新顔投資家の参入が商品をさらに高値に押し上げている。私が懸念するのは新規参入組の多くは私同様商品に無知ではないかということだ」、「いままでのところそれ(無知)が問題となったことはない。無知は(高収益という)至福を呼び込んできた。石油を除いてさえも、強い相場は続いてきた。そしてただいま現在もさらなる上昇を享受している。
 米国の利下げ以来、S&P・GSClの非エネルギー商品指数は16%上がった」
 コラムの書き手であるジョン・オーサーズ氏は「ジャーナリストたる第一ルールは、だれかのことばだが、無知であることを認めるを恐れるなである」とし、この欄を引き受けるまで、アルミとニッケルの値動きがなぜ異なるのか、なぜトウモロコシは小麦の値段から離れているのかについて、いささかの知識もなかったと無知振りを告白している。
 商品の世界は巨大かつ複雑であり、世界に広がる特定市場の需給特性によって値動きが支配されている。株や債券といった主流市場をカバーする知識があったとして銅の供給レポートを見る場合の役には立たない「2000年末から現在までGSClは140%上昇したか、上昇か加速したのはこの2年。だが、上昇の中味をみると強い市場の中心は産業用スタルで中国の飽くなき需要で、2000年の低水準から400%上昇、今年はじめに突然25%下落、9月には9%上がった。穀物は今年の上昇の目玉で、06年にも70%上がっているが、その上昇は先立つ2年間で50%下落している。商品が同調性を欠くことは例えば穀物間で小麦は過去6ヵ月で2倍値となったが、トウモロコシは値下がりしている事実でも実証されている」
 コラムではこの非同調性が、資産分散対象に目をこらす資産運用者の注目を集めたと指摘している。
 「個人投資家はさておき、機関投資家の大量資金流入に商品は耐えられるだろうか。非エネルギー商品は06年春の株価調整安に同調して下がり、今年2月の株安にも連動、さらにこの夏の信用危機下でも同調する動きをみせた。多くの投資家が追加証拠金を収めるため商品を利食ったためだが、商品はにわかに他の資産との相関度を強めたようにみえる」
 コラムを読んでの私の意見はこうだ。
 無知な機関投資家資金の商品市場への流入は個別商品の需給の壁を取りこわし、無知な個人投資家より、商品市場をこわしかねない。
 金融のワンストップショッピングは結構、だがその延長線上での総合取引所はいかがなものか、金融商品の知識は商品には通用しないというFTコラムの筆者の意見に賛成である。
 「商品投資はいまや一般の人々にも開けた。商品投資の未来は我々自身が、いかによく学ぶかにかかる」FTのコラムの結語である。商品先物の本執筆の最後の段落で商品知識の欠如に苦慮する私自身の自戒でもあり、商品取引員の外務員諸氏の旨とすべきことである。
「近未来の商品先物業界」
 21世紀に向けては「米国、EU、そしてアジアで商品先物市場の拡大が進み、その結果、サヤ取りなどの取引機会の増大というプラス効果が見込める一方、流動性が大きく、使い勝手のいい市場への商い集中というマイナス効果もありうる。一方で、手数料は自由化が待ったなしとなる」という前提で、次の点を強調した。
@手数料自由化はいや応なしに業界再編成につながっていく。FUTURES INDUSTRY(96年11月号)の特集では米国ではFCMの数はピーク時の半減、IB(イントロデューシング・ブローカー、注文をFCMに取り次ぎ、取引執行はFCM)が増加トレンドにあることがわかる。日本でも専業70社がそのまま生き残ることはなく、ホールセール的なFCMとIB的FCMに分化していく。
A個人投資家しかも中年男性客中心では成長に限界がある。その打開策としては次の二点が考えられる。
 (イ)ヘッジニーズの吸収。名古屋はかつて綿糸、毛糸先物の中心地で、ヘッジ売買比率は60〜70%だった(紡績の売り、機屋の買いなど)。流動性の高い市場は機関投資家中心に短期資金の運用の場となりうる。さらに小口個人の資金をまとめて大きくする商品ファンドも伸長余地が大きい。
 (ロ)ファイナンシャル・プランナー的性格を持った信用ある外務員には商品先物の一任売買を認めてもいいのではないか。資産の5%程度を攻めの商品先物で…といったニーズはあるはずだ。
B〜Aの前提で、やはり上場商品の品ぞろえを急ぐ必要がある。10年先ともなればコメ、水産物、非鉄金属…、かなりの品ぞろえが可能になるはずだ。商品上場に際しては米国並みに「まず上場、成功か不成功かは市場が決める」という市場主義に徹するべきである。
 「信用力と情報収集・分析力の向上、信用情報産業を看板とする商品先物業界の行方は信用力と情報力を兼ね備えた登録外務員の双肩にかかる」と結んだ。理想論に偏り過ぎと聞こえただろうか。

 (週刊 先物ジャーナル 07年10月8日 第909 掲載)