第 230回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

「商品先物取引業の考えられる姿(自由化後)」を考える
 執筆中の商品先物の手引き書のうち石油に取りかかるための資料を探していたら石油は見つからず、10年以上前のメモが出てきた。題して「商品先物業の考えられる姿」(自由化後)
 日本商品取引員協会が1996年に開いた第6回ビジョン第3部会の検討概要メモの冒頭に出ているメモ書きである。
 「ビジョン委員限り」とあるが、手数料が自由化されたいまは時効と判断して、このコラムに原文のままに掲載させていただく。
 メモを読み返してみてこう考えた。
 考えられる姿の(1)の方向に手順を踏んで、取引員あげて突き進んでいたら、現在のどろ沼の業態はおそらくはなかった、という思いを深くする。失われた10年といってもいい。
 (2)はほとんどの実現していないか、実現いまだし、である。その原因は(1)の失われた年によるところが大きいと考える。
 (3)は現在進行中の事態をなかなか適格に予想している。
 (4)は(1)〜(3)が考えられる姿に達したあとの姿で、方向性そのものは否定できまい。
 第3部会長は当時岡藤商事社長の隅井賢一郎氏。
 概要メモには隅井さんの冒頭発言が出ている。
 「第2次橋本内閣は、現在の衰退しつつある日本経済に関して、活性化対策を講じたうえで次の世代に引き継ごうということで、2001年を目処に、金融ピックバンをはじめ4つのシステム改革に取り組むことを表明した。この状況をみると、商品先物業界の取組方針を検討する時間的余裕がなくなって議論のピッチを上げざるを得ない」
 切迫感のある発言である。
 「隅井さん、あの時期なぜ急ごうとしたのですか」、質問しようにも隅井さんは8月19日、天に召されて、それは不可能である。
 2、3年前だったろうか。「あなたの手数料自由化早期論は手厳しかった」といわれたことがある。いま推測するに、手順を踏まない手数料自由化の早期実施は叩き合いとなり、過当勧誘につながるという意味が込められていたのではなかろうか。
 (l)の3)への道のりはまだ半ば以下だが、岡藤商事は(3)では業界の先頭に立っている。
 通夜の席でも数人の方に隅井さんは自由化後をどう考えていたのか聞いてみたが確たる答えはなかった。
 ひよっこり出てきたメモは隅井さんの答えかも知れない。
 メモの(1)にある「顧客の自主性を尊重した営業への転換」は官主導の勧誘規制厳格チェックにより、この2年主流となってきた。この流れにさおさす取引員の強制的、自主的退場も峠がみえてきた、
 (1)の考えられる姿が定まれば、(2)〜(4)にいたる業態の浮上コースが想定できる。
◇     ◇     ◇     ◇
 この9月、金、原油急上昇の局面で、国際商品へのリスク回避資金の環流という市況解説を少なからず耳にし、目にした。
 レバレッジの高い商品先物は、本来高いリスクを伴なう。ここでいうリスク回避資金とは現物商品自体の価格変動に伴なうリスク回避ではなく、混乱を極める金融融商品の下落リスクを回避する資産を意味するのだろう。
 サブプライム問題を起点とする金融商品市場の混乱は二つの面で商品先物取引の追い風となる。
 まず、現物商品に関連するいわゆる当業者ヘッジニーズだけでなく、金融資産の下落リスクヘッジニーズの台頭である。
 さらに一般の投資家には理解しにくい多重構造の負債の証券化商品に比べて、商品先物投資のベースとなるのは需給原則。極めて透明度が高く、目配りを怠らなければ需給情報は万人に公開されている。
 客観情勢は商品先物復興を告げている。
◇     ◇     ◇     ◇
 国際商品の夏安─秋高という局面転換では次のような指摘があった。
 夏安=金融商品の損失の穴埋めのため、商品の買い建て解消、流動性確保の動きがみられる一方、米住宅市場の落ち込みが米景気の減速を招き商品需要を冷やす。
 秋高=商品の買い建て整理が一巡するとともに、商品のファンダメンタルズのよさが見直され、買い直された。米国景気が落ち込んでも中国の需要の強さがそれを補って余りある。
 GFMSの「ゴールド・サーベイ2007アップデートT」のデータで中国の金事情を点検してみよう。
 金需要の中心であるジュエリー加工需要で07年前半、06年同期比21%増え、145トンを記録した。黄金の豚年という吉兆年で、豚をデザインしたジュエリー需要が好調だったことに加え、経済成長の加による可処分所得増加が寄与、株式の値上がり益を金ジュエリーに移す動きもあった。
 一方の供給。中国は着実に産金国としての地位を築き上げ、07年通年では産金国百位の座を南アから奪う可能性が強い。
 中国は確かに需要大国だが、同時に一次産品の供給大国をも目ざしている。
 金だけではない、アルミ、鉄……。
 中国の存在感は需給両面で強まっている。
 夏安→秋高への移行局面での米国がだめでも中国があるさ人気、は各種データが裏付ける。
 商品先物取引はデータの予測、分析ゲームでもある。
 データ力をみがくべし。
(1)個人委託者営業は、自己責任原則の徹底、顧客の自主性を尊重した営業への転換により、次のような変化か進むとみられる。
 1)外務員による新規顧客開拓を中心とする高コスト営業の維持は、次第に困難になり、顧客の自主的参加による客層の変化(継続中心、大口、かつ経験者中心)と営業の効率化が進む。又、店頭営業も見直される。
 2)技術革新を前提とした高度の情報提供サービスが求められる一方で、単純な売買執行サービスのみを求める顧客も出てくる。
 3)新規の小口個人客は、リスク軽減を求めて、これまでの直接参加だけでなく、商品ファンド等による間接参加のウェイトを高める。商品ファンドに対するニーズは多様化する。
(2)法人営業は、次のようなニーズを前提にそのウェイトを高めるとみられる。
 1)ヘッシニーズの高まり。
 2)機関投資家の資金運用二一ズの高まり(高齢化社会の進行による増大する年金資金の運用など)
 3)低金利時代を背景とする短期資金運用。
 4)ボーダレス化の進行による商品先物市場の金融市場化現象の進展。
 5)海外短期資金の受入れ。
(3)商品取引員経営は、クリアリングハウスの導入により資産条件が高まることにより、大手を中心に総合化へ向かう一方で、中小取引員はリテイルを中心に特定の分野や業務を中心とする専門化に向かう(二極分化)ものとみられる。
 1)取引所会員権を有しかつリテイルも行う総合的商品取引員、会員権を有するかリティルは行わない取引員、リテイルのみを行う取引員(取次)への分化が進む。また、リテイル業者の中にも、ディスカウンター等の業態も出てくる。
 2)独立した外務員による商品取引員への取次ぎ活動も可能となる。
 3)なお、これらは、会員玉の商品取引受託の制度化、取次制度の導入、独立した外務員の制度の導入等が前提となる。
 4)仲介業務と自己売買業務の実質的分離(場合によっては、制度的分離)か進む。(仲介業務の一層の効率化が求められる)。
(4)経済のボーダレス化の進展により、隣接業界(金融、証券、ノンバンクなとからの新規参入、海外FCMの新規参入も進み、商品先物取引業界の競争は激化するものとみられる。また、大手を中心に当業界から金融、証券等への参入も進む。「商品先物取引業の考えられる姿」を考える。
 世界産金ランキング (GFMS、トン)
  
05年
06年
06年前半
07年前半
07年前半の
06年前年比
南ア
315
292
145
134
-7%
中国
230
247
109
129
18%
オーストラリア
263
247
120
125
4%
米国
262
252
118
118
0%
インドネシア
165
116
52
95
83%
ペルー
208
203
105
81
-23%
ロシア
175
173
61
59
-4%
カナダ
120
104
51
49
-4%
ウズベキスタン
79
79
39
38
-3%
ガーナ
63
70
32
38
16%

 (週刊 先物ジャーナル 07年10月1日 第908 掲載)