第 227回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

国際商品、左眄ではかる強い夏
 首を右に曲げると痛い。寝違えたのか、しつこい肩こり(40肩ならぬ70肩)の延長なのか。自宅から会社の往復で、極力右側を歩いている。歩道と車道の差別がないところでは自動車が、歩道では自転車に注意、左に首を曲げるためだ。  右頷左眄。小学館の新選国語辞典によると「頷」はかえりみる、「眄」はながし目に見る意で右を見たり、左を見たりしてためらうこと、とある。
 この欄の読者から、業界擁護に偏り過ぎ、批判精神に著しく欠けるという叱正を受けた。お前の記事は右頷左眄という評価である。
 物理的に右頷ができにくい今回は国際商品の現況を左眄してみる。
 結論は強い基調崩れず、である。
 8月1日、原油(ニューヨークWTl・期近)相場は1バレル 78.77ドルと06年7月の 78.40ドルを上回り、最高値を更新した。高値達成感からか、ファンドの利食い売りがかさむ一方、米国の景気減速見通しによる需要減退懸念も加わって8月第2週には週安をみせている。
 07年7月の底値は20ドル幅の下落を呼び、OPEC(石油輸出国構構}の協調減産を招いた。
 原油相場は02年から、02年=20ドル、03年=30ドル、04年=40ドル、05年=50ドル、06年=60ドル、と西暦の末尾にゼロを加えた線で底上げの軌跡を描いてきた。その伝でいくと07年は70ドル中心。
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 決して語呂合わせではない。
 二つの図表をベースにして考えた結果である。世界の石油埋蔵量(英誌エコノミスト6月23日号、BP調べ〉の表。
 「約1兆2000億バレルの確認埋裁量(現在の技術で生産可能な既存油田)の4分の3は7ヵ国に偏っている。サウジのシェアが5分の1。イラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連合(UAE)合計でシェアは3分の1。06年の生産ペースで進行と世界の石油は40年余で尽きる。米国と中国は10年余で枯れる。クウェートは1世紀余の寿命がある。
 イラクの内乱、イランでも国内の不平分子が増えつつある。イラン、ベネズエラは反米流の代表。ロシアもエネルギーを武器に強推色を加えている。石油輸入国の経済を損なわない程度の高値を目ざす穏健派は7ヵ国中、サウジ、クウェート、UAEにとどまる。
 石油はまさに地政策的リスクのうえにある。言い換えるとリスクプレミアムがはげ落ちる可能性はにわかには見出せない。
 次いでバルチック取引所ドライ指数(1985年=1000)のグラフ(英紙ファイナンシャル・タイムス=FT、6日付け)
 鉄鉱石や穀物などドライ(固形)商品の海上運賃が騰勢を強めている。3日、バルチック指数は7007と指数算出開始時以来の最高となつた。過去1年で 103%の上昇、2000年以来5倍の水準にある。ブラジルから中国への鉄鉱石、大豆などの輸出など、輸送距離の遠隔化が進み、港湾の混雑などの上昇要因が指摘できるが、途上国の需要急増による荷動きの活況をずばり示している。
 国際商品市況は値動きと荷動きを乗じてその強弱をはかるが、まさに好調の域にあることがわかる。
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 「コモディティーズは最近の市場の混乱の影響を比較的受けず、多くの商品指数は過去4週、プラスの収益をあげた」
 FT(7日付)の「コモディティーズの強気は上を目ざす」という見出しの記事が載っている。
 ポイントを抜き出してみる。
 ・約 700億ドルの資金が運用の基準にしている最も名高い商品指数であるS&P・GSCIは7月、ダウジヨーンズ指数が 1.5%マイナスとなり、信用市場が大きな損失を出したにもかかわらず 5.5%のプラスを記録した。ロジャーズ国際商品指数、ロイター・ジェフリーズCRB指数ともプラス3%となった。
 ・過去数週、商品の下落は短期にとどまり、先導格の商品に追隋して再び高値を目ざす動きをみせた。他の市場の損失にもかかわらず、商品では記録的高値を付ける動きがみられた。原油の高値更新のほか鉛、すずが最高値を付け、小麦も11年振りの高値となった。
 ・CFTCのデータによるとノン・コマーシャルによる商品のネットの買い建ては7月はじめ(信用危機前)の79万6000枚から7月31日には84万9000枚に増えた。パークレイズ・キャピタルの商品アナリスト、ケビン・ノリッシュ氏は「通常リスキーなアセット(資産)に区分されがちな商品が安定のビーコン(標識)となっている」と述べている。
 ・信用市場の混乱が経済成長に悪影響を与えた場合はどうか。米国経済に変調があったとしても途上国の成長持続が需要の増加に結び付き、商品への影響は限られる。IMF(国際通貨基金)は直近の予測で、07年の世界経済の成長率を 4.9%から 5.2%に引き上げている。米国の成長率は 2.2%から2%に下方修正をしたが、中国に関しては10%を11.2%に引き上げている。
 同じ7日付FTの商品欄には「原油相場は信用危機が米経済を減速させる懸念とハリケーンシーズンは大過なしとの予想が加わって下落した」という説明が出ている。
 大きく膨らんだ投機の買い建てが整理されたあと再び新高値を目ざす。07年原油は70ドル中心。金融経済の実態経済への影響は限られるとみるからだ。
  

 (週刊 先物ジャーナル 07年8月13日 第902 掲載)