平成19年 7月23日(月)(毎週月曜日発行)第899号
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巨大取引所は世界市場を制するか? 国際的市場再編の動きは止まらない
 「CMEグループInc.」誕生と今後(上)
◇“先物寸言”カラ売りの恐さ
◆日商協、特別電話相談 相談件数 前回上回る
◆東部管理部会 講師にに石戸谷弁護士
◆“先物オタクのススメ パートX”日本文化と市場の関係


巨大取引所は世界市場を制するか?
国際的市場再編の動きは止まらない
「CMEグループInc.」誕生と今後(上)

CBOTビル
7月9日、シカゴ商業取引所(CME)とシカゴ商品取引所(CBOT)の合併が決まった。両取引所の発表によれば、合併により「CMEグループ」と名称が変わる両取引所には世界80ヶ国以上からの取引参加者、16億ドルの年間収益(2006年度)、1日平均およそ1020万枚の取引高(2007年第2四半期)などが見込まれている。両取引所合算の年間取引高(17億8千万枚、2006年〉はライバルのユーレックス{9億6千万枚、同)の約2倍近くとなり、取引総額も米国内最大のライバル、NYSEユーロネクストより50%以上も大きい 300億ドルと、文字通り世界最大の先物取引所が誕生する。
 今回の合併については、シカゴの2大取引所による「覇権」を懸念したアトランタのインター・コンチネンタル取引所(ICE〉が今年3月以来、敵対的買収案を出し続けたことで、世界的にも注目された。しかし最終的には同じシカゴを地盤とし、昨年10月に買収・合併を呼びかけたCMEが買収合戦を制した形になつた。
 とはいえ、欧米先物市場関係者はまだ、これで新生「CMEグループ」が世界の先物市場の覇権を握ったとは考えていないようだ。逆に、NYSEユーロネクストなどいわゆる証券取引所のデリバティブ市場拡大戦略との統合が激化するとの見方も強い。そして、それは地元シカゴの先物関係者たちも同様である。「株式会社化」による株主と会員の取引所経営に対する考え方の違いにまで話題が及んだ今回のCBOT買収劇を改めて振り返ってみたい。

ICEを制した「シカゴ流」
 CMEは、CBOTの会員総会が開かれた7月9日月曜日の直前の金曜日の午前2時に突然、買収価格を7%引き上げて、結果的に、泥沼化しそうだった買収劇を制した。
 このちょっと強引な決め方を評して、地元新聞には『シカゴ流』の結末だったとのコメントが見られる。この「シカゴ流1という言葉にはいずれも、例えば西部劇に出てくるジョン・ウェインのように、あるいは禁酒法時代のエリオット・ネスのように、例え銃を便ってでも、とにかく「わが町を守れ」的なやり方をするのがシカゴ……というこュアンスがあるうだが、時代も違い、その使われ方には、記事によって多少の違いがある。
 例えば、7月13日付け「シカゴ・トリビューン」紙は、昨年10月にCMEが提示した買収希望価格80億ドルが最終的に 119億ドルで買収することになったことについて、わずか9ヵ月の間におよそ33%も跳ね上がってしまったとしても、今年3月に敵対的買収を仕掛けたアトランタのICEより高い買収価格で打ち負かしたのは『シカゴ流』であったとポジティプな使い方。
 というのも、『シカゴは19世紀に農産物などのリスク・マネジメント・ビジネスを開発し、20世紀にはこれに株式や債券・通貨などを加えて発展させた。今回の合併によって、21世紀もまた司令塔の座を守ることになる』あるいはシカゴ市では今回の合併のおかげで、2000人以上の取引所職員と、数万人以上の先物取引閏孫者の仕事が担保された』からだ。そして、合併の結果、『シカゴは、世界中で始まっている市場統合の中で競合できる力を準備することが出来た。株式からコーンまですべての先物取引を行う人々が、今後はもっと多くシカゴのワンストップ・ショッピングを利用することになる』と礼賛する。
 筆者も、合併後、CBOTの知人に電話したが、もともと「シカゴ大好き人間」が多いCBOTのフロアー・トレーダーたち。昨年10月の一株 120ドルから、合併か発表された7月9日には 160ドルまで上がったCBOTの株価のこともあり、「シカゴ流万歳!」とのことだった。
 もう一つは、ちょっとシニカルな使われ方。これも同じ「シカゴ・トリビューン」(7月10日付)の記事から。
 「今回の合併は、古い時代のビット・トレーダーたちに代表される2取引所が、『シカゴ流』で決めた。しかし、かれらが今後成功するためには、大きな声や派手なトレーディング・ンャケットより、新しい電子取引とアルゴリズムの世界に飛び込むことの方が大事である」
 どちらのコメントも、基本的には、シカゴの取引所トップたちの決着のつけ方を否定したものではない。ただ、後者のコメントからも伺われるように、「若い電子取引世代」のトレーダーたちの中に、歴史的な「オープンアウトクライ」を捨てきれずにいる、現在のCME=CBOTの指導者たちに対する懸念が存在することを示唆する記事ではある。事実、プロップ・ハウスのトレーダーの中には、「ICEのような完全電子取引所に、CBOTを委ねてみてもよかったのではないか」と指摘する声もある。
 むろん、CMEには圧倒的なシェアを誇る「GLOBEX」という電子取引市場があり、CBOTにせよCMEの電子取引市場の経営能力を信じて合併に踏み切る部分もあったわけだから、こうした懸念が必ずしも当っているとは限らない。
 ただ合併以後のシナリオとして、フロアーはすべてラサール通りにあるCBOTのビルに移転するという案がある。ここ数年、シカゴの業界関係者の間では、「CBOTのフロアーはいつなくなるのか」が話題になつていただけに、このシナリオが「当面、フロアーを残す」ことの表れなのかどうか、議論の的になりそうではある。もっとも、今後もしばらくはCBOTのフロアーの喧騒を楽しめるという意味で、観光客はもちろん、日本の先物閑係者の中にも両取引所の合併を歓迎する人は多いのではないだろうか。
 なお、現在のCMEのビルディングは売却し、フロアーは移転させるものの、「CMEグループ」の本部はこのビルの一部を再びサブ・リースして使うという。
(益永 研)

 (2007年7月23日―第899号)