「毎朝、何百万人という米国人が朝の食卓で商品市場の上昇傾向に直面している。米農務省が″アグフレーション(農産物イフレーション)“と呼ぶ、食料品の値上がりが朝食費用を突き上げているからだ」
「オレンジジュースは1年で25%上がり、鶏卵はざっと20%、牛乳も5%値上がりした。ケロッグ、ゼネラル・ミルズなど朝食用シリアル(穀物食品)メーカーは値上げに踏み切っている。値上がりの背最には最近10年振りの高値を付けたトウモロコシ、小麦など穀物の急上昇がある」
英誌エコノミスト(6月23日号)の「バイオフューエルが押し上げる農産物」と題する記事の書き出しである。
アグフレーションの始まりは06年秋の世界的な小麦干ばつ減産。特に輸出余力の大きいオーストラリア小麦の大減産が世界的に供給不安感を増幅し、まず、小麦が急上昇した。
飼料分野で競合するトウモロコシが、これに追随する。トウモロコシは米国が世界生産の40%、輸出市場では70%のシェアを持つ米国産主導商品。その米国ではエネルギー自給率向上の目玉としてトウモロゴシ原料のエタノール増産策が打ち出され、エタノール用需要が急拡大中だ。小麦減産の余波にエタノール需要増が加わり、07年2月にかけトウモロコシ相場が急騰の軌跡を措いていく。
米国のエタノール需要急拡大のためには作付け面積を大幅に増加する必要がある。確実な需要が見込めるトウモロコシ、とあって米国農家はトウモロコシの作付けを大幅に増やし、その分大豆、綿花さらには小麦などの作付けを減らす。トウモロコシの作付け急増、大豆の急減がはっきりする。出遅れていた大豆が急上昇に転じる。
06年秋〜07年夏に至る小麦→トウモロコシ→大豆の強気相場バトンタッチの推移だ。
前出の記事では「トウモロコシなり小麦が不足すれば、増反し、天候が許す限り増産になるのが穀物のパターンだった」という記述がある。
米産トウモロコシの大増反と急反落はこのパターンに沿った動きといえよう。
米国の食卓で主婦が落ち着きを取り戻し、アグフレーションは束の間の造語となるのだろうか。

「国際穀物協議会(IGC)の予測によると07年の世界穀物生産は16億6000万トン(06年は15億6900万トン)に達し、供給不足が増産を促しているのは確かだ。
が、07年の需要は16億8000万トンが見込まれ、供給を上回る。過去4年で3年は需要超過だった」
「需要超過の主因はバイオ燃料用需要の増加。穀物の主力用途である食用はここ数十年人口増加率の鈍化で緩やか。家畜用〈飼料)は中国など急成長国の食肉需要増で着実に増えている。これに比ベバイオ燃料用は急拡大中。米国のエタノール生産用需要は2000年以来、3倍に増え、米産トウモロコシ需要の5分の1を占めるに至った。しかも米国はバイオ燃料増産を奨励する41ヵ国のひとつに過ぎない」
「かくて、穀物の需要は加速している。石油価格が低位に低迷していた1990年代、バイオ燃料の声はなく、穀物需要の伸びは年率 1.2%にとどまっていた。それが 1.4%増に高まり、ゴールドマン・サックスによると向こう10年、年率 1.9%増となる」
エコノミストの記事には 100万Btu当たりドル表示で原油とトウモロコシの単位当たりエネルギー生産コスト推移のグラフが出ている(トウモロコシは補助金含む)。
原油とトウモロコシが同一ラインに収れんしている。原油が下がらない限り、トウモロコシの減産意向は動きにくいということだ。
その原油は米国のガソリン高(増産制約)と政情不安(おなじみイラン、イラク、ナイジェリアの政情不安定に加え、英国、イエメンのテロ)WTIが70ドル台に復帰している。
アグフレーションなる造語は消えにくい。