第 220回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

OPEC、バイオ燃料熱に 冷水(投資抑制)?
 「バイオ燃料の石油価格へ与える影響について警告」
 英紙ファイナンシャル・タイムス (FT、6日付)の一面にこんな見出しの記事が載っている。
 OPEC石油輸出国機構)のアブダラ・エルバドリ事務局長が5日「先進国が地球温暖化対策とエネルギーの安全保障策を狙いとしたバイオ燃料増産策に努めるなら、OPECは新油田開発投資を抑えぎるをえない」と発言したのを受けた記事だ。
 「OPECは以前にも代替エネルギーに関して懐疑的な見解を示していたが、エルバドリ氏の今回のコメントはバイオ燃料への移行に直面、自らの権益を守るための具体策をはっきりと打ち出したことになる」
 「エルバドリ氏はバイオ燃料増産は中期的に持続性を欠く。食料向け供給と競合するからだ。バイオ燃料の増産は食品小売価格が30年振りの上昇をみせているひとつの理由だ、と指摘する。
 『プッシュ氏と欧州の指導者が主導するバイオ燃料戦略は裏目に出る。なぜなら、石油の増産もエタノールもともに見込めないからで、このケースでは石油価格は大きく押し上げられる』と述べ、我々は需要の安定保証が得られなければ長期的に投資を見直すことになる』と警告している」「OPECは2012年まぞに約1300億ドルを投じる増産を計画している。イラクを除き、OPECの生産能力は現在の日量3570万バレルから2010年には同3970万バレルに増えると予測している。2013〜2020年のOPECの投資計画5000億ドル。バイオ燃料の見通しいかんによって、こうした計画は変更されるとエルバドリ氏は述べている」
 エルバドリ発言を伝えたFTの同日付商品欄の見出しは「干ばつが小麦価格を押し上げ」
 「欧州と米国の小麦相場は5日、ルーマニア政府が長引く干ばつのため、今年産小麦収穫は4年来の低水準となるという見通しを明らかにしたため上昇した。ルーマニア産小麦は46%減の 290万トン、大麦は30%減の23万5000トン、にそれぞれ落ち込む予想。新穀の指標であるユーロネクストの小麦先物11月限はトン当たり 166ユーロとなり、干ばつが広がれば、02/03年の欧州大干ばつ時の 170ユーロにせまるとの予想が強まっている。干ばつによる減産被害下にあるウクライナは4日に穀物禁輸に踏み切っている。
 「マレーシアのバーム油相場が5日、記録的高値を付けた。インドネシアが可食油の輸出税を引き上げるとの観測が高まる一方、インドが植物油の輸入関税引き下げを提案したためだ」 バイオ燃料需要の増加の一方で広がる干ばつ減産。食品原料の世界では需給両面の強材料がそろって表面化してきた。
 北半球の天候相場本番。07年夏相場の本命商品は穀物と油糧種子に絞られてきた。
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 先進国のバイオ燃料熱冷ましにOPECは増産投資抑制へ動くこともありうべし、というエルバドリ発言をFTが社説(11日付)で取り上げている。
 「バイオ燃料には多々問題がある。農地開発による熱帯雨林の破壊、そしてトウモロコシへの原料移行による高値はパンとトルティーヤ(薄焼きトウモロコシパン=メキシコなど中米の主食)の値上げを呼び、さらに悪いことにはビールとテキーラ(メキシコの蒸留酒)代に響く。だが、ただひとつバイオ燃料がなし得ないこどは石油を高値にすることである」
 FTの説くところを抜き出してみる。
・エルバドリ氏は先進国のバイオ燃料への移行に対応して、OPECが投資を抑える結果、石油価格は急騰すると説く。IEA(国際エネルギー機関)のクロード・マンディル氏は「バイオ燃料は大成功したとしても世界石油需要の数パーセントを代替するに過ぎない」と反論する。
・OPECの考え方には他にも多くの間違いがある。仮りにバイオ燃料がエネルギー源として離陸したら、次の局面は供給庄力で石油価格は上がるのではなく、下がるだろう。
・OPECがこうした事態を避けようとするなら、バイオ燃料の儲けを少なくするため、石油への投資拡大を約束するだろう。だが、先物市場は2012年に至るまで70ドル原油が続くことを見込み、OPECにも植物由来のエネルギーにも懐疑的なようだ。
・エルバドリ氏の過小投資予測は多分正しい(ただバイオ燃料はほんの小さな理由)。その主な理由は次の3点。
 @最大の理由は(OPECという)カルテルの存在意義にある。クラブを作る目的は供給を制限し、価格を押し上げることにある。新規開発に巨額を投じることはその目的に反する。
 AOPEC加盟の政府は国営石油会社を通じて生産をコントロールしている。一枚岩の運営のため、石油の収入は例えば社会福祉費用などに割けられる。また一部では大型投資計画をまとめ上げるすべを欠く。
 B第3の理由は1970年代の事例への反省だ。OPECは新規開発を進めたが、消費国は原子力や天然ガスに目を向けた。OPECはこのミスを再び犯したくない。しかも、高油価、エネルギーの安全保障、気象変化などの懸念から、多くの国が石油消費を抑える手だてを求めている。バイオ燃料はそのひとつに過ぎない。
 「20年といった尺度でみて、石油価格の不安定は続く。世界的な経済成長はエネルギー需要を拡大していく。OPECがその需要を石油で賄なうつもりなら、おどしをやめ、多少なりとも新規投資を進めるべきだ」
 社説の結語である。
 英誌エコノミスト(6月2月号)の気象変化へのビジネス社会の取り組みを特集した記事に「そうきれいではない」と題した一次エネルギー源別シェアのグラフがある。再生可能源の多くを占めるバイオマス。だが、あくまでも石油、石炭、ガスの補助に過ぎないことがわかる。
 バイオ燃料への過度の期待は食品インフレの芽を育てる。OPECも増産はいやだとそっぼを向く。
 あまり食べない、車には乗らない、冷暖房を控える。エネルギー消費の極めて小さい老生としては60〜70ドル原油を前提した省エネを社会全体が進めるのが唯一の解と考える。

 (週刊 先物ジャーナル 07年6月18日 第 894 掲載)