市場成功者たちの内幕物語
スティーブン・ドロブニ一 著
柳沢 逸司 訳
 今度新しく翻訳した「市場成功者たちの内幕物語」(晃洋書房)は著者スティープン・ドロプニーが13人の市場成功者にインタビューしたものです。
 中でも面白く読めるのは商品先物のジム・ロジャース(11章)をはじめ、その前後のイラ・ハリスやドワイト・アンダーソンらとのインタビューした章は出色でしょう。
 私の友人がこの本を読んで、市場成功者の現場主義は他書には見られない貴重なことだよと伝えてくれたことは訳者としては気づかなかったことでした。
 有名なロジャースの二度にわたる世界一周の現場主義は言うに及ばず、ハリスが日課にしている取引フロアに降りる習慣や、アンダーソンがバラジウムの現地調査でシベリアまで行く話を読むと、なるほどと思います。
 さらに偶然ですが、彼らが前訳書「トカゲの脳と意地悪な市場」に出てくる3つの「トカゲの脳」を、うまくコントロールしていることも興味深いことです。
 つまり市場成功者は過去にとらわれがちなトカゲの脳に左右されないのです。臨機応変に君子豹変する柔軟性を備えているのです。また規則性を見出そうとするトカゲの脳にも影響されないことです。チャートなど穴の開くほど見ているよりも、まず現場に行って見ることを重視します。
 さらに他人と同調するというトカゲの脳にも組みせず、独自性を持って市場に臨んでいることです。
 彼らに特徴的なことは、成功者も必ず一度や二度は失敗しているのですが、文字通りそれを成功の母としていることです。
 自分の予想と市場の動きが異なるとき、市場の方がマチガっているとか、市場のことは俺が一番分かっているとか、ウヌぼれたり、ナマいきだったり、思い上がっているときは失敗に終わると反省するのです。
 彼らの相場を見る目は実に謙虚で、あたかも自然や歴史を見るように、変な理論を振り回さず、市場の動きを素直に尊重して規律をもって眺めているのです。
 もうひとつ、市場成功者は87年の暗黒の月曜日や98年のLTCMの破綻や01年9月11日のテロ攻撃をきっかけに、市場では、予想もしない飛んでもないことが起きるということを知っているのです。
 つまり市場の非連続性ということを認めているのではないかと思うことです。鏑木繁さんが言ってくれましたように「赤線でも黄色線でも引いて、この本がポロポロになるまで読めば、きっとあなたも相場成功者になる」ことが実現すれば訳者としてはこれに優る喜びはありません。
〈晃洋書房 3300円+税)

    (週刊 先物ジャーナル 第893号 掲載)