第 219回

218回 220回
米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

中国、吉兆の豚年に豚インフレ?
 「中国、豚肉危機がインフレ懸念あおる」
 「市場、上海株急落を無視」
 英紙ファイナンシャル・タイムス一面の見出しだ。前者は5月31日付、後者は6月1日付。
 まず、豚インフレ懸念。
 「何百万頭という豚が病死し、中国の食肉需要の中心である豚肉の値段が上がり、インフレ懸念を広げている」
 「先週いっぱいで中国の豚肉小売価格は30%上がった。農業省によると、豚の卸値は4月以降71.3%の上昇。中国の5億頭以上に上る豚は食肉供給の中核。その供給途絶は政治問題化しかねない。えさ原料であるトウモロコシなどの値上がりはあるが、豚肉高の元凶はブルー・イヤー(青い耳)と呼ばれるなぞの病気と口蹄病」
 安値の南米産は衛生上の理由から輸入を制限し、欧米産は高値とあって豚肉高を抑える手だてはおいそれとはみられず、1990年代末に始めた冷凍肉と豚農場の契約による"戦略豚"の放出が考えられると記事は指摘している。
 「豚肉高は既に高値にある他の食品と相まってインフレ率を上昇させかねない。肉はCPI(小売物価指数)の7%を占め、上昇圧力は卵、魚などにも広がっていく可能性がある」
 中国は吉兆の豚年で出世率の増加が見込まれている。吉兆の年を裏切るかのような豚肉高である。食品インフレ懸念が台頭していた中での豚肉高、CPIの4%高は間近いとの予測も出てきた。
 豚肉高がいや気されたわけではあるまい。印紙税の引き上げが、5月30日、上海株価の 6.5%に及ぶ急落を招いた。 
 2月の上海株下落が金融市場の混乱を世界中に招来したのに比べ、今回は国際市場はほぼこれを無視している。印紙税の引き上げというきっかけがはっきりしているうえ、2月の急落がその後の急反発を招いたパターンの再現を想定しての無視なのか。
 「中国株については中国政府、中央銀行の関係者、メディア、投資銀行マン、香港の大富豪、それにグリーンスパーン米FED前議長、とバブル懸念をこぞって指摘している。米国のドットコム人気、住宅ブームはバブルがはじけるまで懸念を指摘する声は少なかったのに比べ、奇妙ではある」(英誌エコノミスト5月26日号)
 バブル懸念の広がりがバブル抑止役となっているということなのか。中国株はいまバブルや否やの答えは、だれにもわからないというのがバブルの歴史が教えるところである。
◇     ◇     ◇     ◇
 GFMSの金、プラチナ、銀、銀の前にJMのプラチナ。この1ヵ月余、貴金属の年次報告書の刊行ラッシュ。JMのは無料だが、GFMSは中間報告書を含んでざっと年間20万円。小さな会社の大きな出費。
 コストの元はとるべし、とがんばったが、読解力低下と目のしょぼしょぼ度の進行をつくづくと感じた。
 別項で銀の報告書のデータと要約を載せたが、貴金属全般に投機主導色がさらに強まっているというのが読後感だ。
◇ 世界の銀需給           (GFMS調べ、単位トン)

1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
供給









新産銀
16,174
16,860
17,319
18,378
18,853
18,468
18,683
19,353
20,082
20,095
政府売却(正味)
-
1,041
3,022
1,874
1,961
1,841
2,759
1,924
2,051
2,415
回収銀
5,265
6,032
5,647
5,621
5,684
5,830
5,721
5,646
5,797
5,848
生産者・ヘッジ
2,118
203
-
-
587
-
-
299
859
-
推定投資家売却(正味)
2,454
1,406
1,305
2,598
-
258
-
-
-
-
供給計
26,011
25,542
27,294
28,470
27,084
26,397
27,164
27,222
28,788
28,358











需要









加工









産業用
9,938
9,741
10,455
11,549
10,340
10,457
10,786
11,329
12,622
13,375
写真
6,761
7,011
7,087
6,790
6,628
6,353
5,999
5,629
5,040
4,535
ジュエリー
4,685
4,973
4,970
5,306
5,420
5,252
5,573
5,437
5,406
5,156
銀器
3,660
3,551
3,376
2,974
3,271
2,570
2,580
2,060
2,072
1,838
コイン&メダル
945
866
907
999
948
983
1,108
1,318
1,245
1.237
加工計
25,989
25,542
26,795
27,618
26,607
25,625
26,046
25,774
26,386
26,142
政府購入(正味)
22
-
-
-
-
-
-
-
-
-
生産者・ヘッジ買戻し
-
-
499
852
-
772
651
-
-
211
推定投資需要(正味)
-
-
-
-
478
-
467
1,448
2,402
2,006
供給計
26,011
25,542
27,294
28,470
27,084
26.397
27,164
27,222
28,788
28,358











銀価格(ロンドン)
(1トロイオンス・米ドル)
4,897
5,544
5,220
4,951
4,370
4,599
4,879
6,658
7,312
11,549

銀、11〜14ドルなら需要安泰 −GFMS見通し−
 「05年第4回半期を起点とする銀の強気市場は06年の年平均価格でにて58%という目ざましい上昇率をみせた。銀ETF(上場投資信託)の上場で5月に15ドル間近の高値を付けたあと一時、商品の売り人気に同調10ドル割れをみたが、それ以降の底堅さは印象的だ」
 英国のメタル調査・コンサルティング会社GFMSが、銀関連事業者の国際機会であるシルバー・インスティチュートの委託を受けた銀の年次報告書「WORLD SILVER SURVEY2007」の要約と展望部分の書き出し部分である。
 「トレーディン押し上げられているのは投資家の銀への関心が薄れないことによる。GFMSの06年データで正味の推定投資需要がそうは大きくないように投資は売り買いの双方で出入りいる。が、市場人気は圧倒的に強気に与している。その証拠にETF自身の人気が薄れないことだ(時に売られても、その規模は小さい)。銀自体の投資訴求力のほか、商品全般への関心の高さに加え特に金との伝統的な相関度の高さから金の投資主導の上昇には連動する」
 「銀の底堅さの大きな理由のひとつに高値への供給の反応度の薄さがある。事実、06年の供給合計は 1.5%の減となった。新産銀は05年はやや増えたものの06年はほとんど変わらず、回収銀も写真フィルム部門の回収が減ったため増加は小幅だった。政府部門からの売却はやや増えたが、生産者のヘッジ売りは高値下でも控えられた」
 「供給同様、加工需要サイドは26年来の高値(年間平均)にもかかわらず最大の加工部門、 0.9%の減にとどまった。加工部門トップの産業用は6%増えた。この部門は技術面や産業活動には反応するものの、短期的な価格変化には反応薄であることを実証した。ジュエリーと銀器需要は高値がマイナスとなったが、その程度は限られたものだった。例えばジュエリー加工需要は年間平均価格の上昇率が36%だった金が16%減だったのは金を上回る上昇率をみせた銀は5%減にとどまった。写真フィルムは10%減だったが、値段のせいというより、デジタル化の進展でフィルム需要が落ちた結果だ」
 06年の需給分析を踏まえて、GFMSは次のように展望している。
・1トロイオンス11〜14ドルのレンジでは需要は安値。ただ、産業用が加工需要の50%を超しているだけに、世界的な産業活動の停滞があればその影響は受けやすい構造にある。
・07年、供給サイドでは新産銀が3%増となろうが価格への大きなインパクトを与えることはあるまい。政府売却はインドの売却計画終了で減り、回収銀も落ちる(写真部門のデジタル化進む)。供給は引き続き細る。

 (週刊 先物ジャーナル 07年6月4日 第 892 掲載)