平成19年 5月21日(月)(毎週月曜日発行)第890号
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東穀取・森實理事長退任会見 在任10年を回顧する
◇“先物寸言”気概を失うな
◆東工取、出来高 3期連続で前年度割れ
◆先物協会・戦略実施委で具体的提案を作成
◆“先物オタクのススメ パートX”失敗に寛容であるべし
◆“自著を語る”でっかく儲かる!資源株のすべて 緒方 史法


東穀取・森實理事長 
退任会見在任10年を回顧する
 東京穀物商品取引所の森實孝郎理事長は15日の理事会で退任を表明した。その日に退任記者会見を開き、6期10年5ヶ月の長きにわたる任期の思いを振り返った。

森實 孝郎 東穀取理事長
 冒頭に、長かった(体力的に)し、楽しかった(仕事に追われて)10年であった。関係各位の理解と協力があって業務が遂行できたことに感謝の意を表した。
 いろんなことが10年間にあった。その中で強く印象に残っている5つの問題について回顧した。
@コーヒー上場
 コーヒーの上場は前任の森理事長から強い要請を受けてのもの。コーヒー業界に知己もあり、彼らの協力を仰ぐことができた。中南米大使館とも話し合いの機会を得てコーヒー上場を実施した。10月からはザラバ取引に移行するので、新たな発展に期待している。
A委託者税制の改正
 それまでは雑所得として総合課税に組み込まれ、委託者はかなり高額の税金を徴収されていた。申告分離課税への移行は税制面で大きな改善となった。
 業界人は結論を急ぎすぎる嫌いがあるが、ことを急ぎすぎると失敗することも多い、総合的に税率を引き下げるように計らい、先ず申告分離課税26%からスタートし、20%に引き下げることができた。
 最後は米国並みに3年間の損失繰り越しが認められて、業界の同意を得ることができた。
 商品先物取引はゼロ・サムゲームでもあり、損することも多い。損失繰り延べができたことは大きな成果である。
 この税制改正で、商品先物取引の差別がなくなった。その後、安堵して先物取引に取り組めた。
B米の試験上場
 それまでタブー視(市場経済に対する拒絶反応)されてきたものにチャレンジできたことに大きな意義がある。
 上場検討段階には農業問題の専門委員会で2年間にわたり調査、問題点を検討、分析してきた。現実の経営リスクなどあらゆる想定問答に取り組みセミナーも実施した。国政レベルでも与党内に米上場問題を取り上げていただき、昨年暮れに上場申請した。
 全農、全中の反対は想定通りであったが、なかでも全中の生産調整を取り崩すことができなかった。
 事後処理として、強行派に行政訴訟辞さずと唱える人もいたが、再度上場挑戦することで業界の同意を得ることができた。そう遠くない時期に渡辺新理事長が申請するものと思う。理論武装としての想定問答集はでき上がっている。
C新システムの構築
 当初から米上場はザラバ取引を考えていた。それに合わせてシステムの構築を進めてきたが、現行の板寄せシステムの老朽化もあり、新システムの開発となった。
 「枝から木登り」するととかく間違いが起こりやすい。「幹から登る」正当性で望むことが大切である。この8月から新システムに移行し。10月にコーヒー、粗糖がザラバ取引になる。来年4月には、とうもろこしがザラバに移行する。
 ザラバ取引は国際性への対応(特にファンド玉の等入など)として避けて通れない。
D法改正
 10年間に2回法律が改正された。10年改正は手数料の自由化がある。段階的に引き下げて、最終的に一般委託者の自由化になる。この仕上げの時期と次の法改正の時間が一致して勧誘ルールの行為規制が厳格になり、昨年後半から後遺症がでてきた。
 16年改正はT+1への移行が大きい。各取引所が資産プールして資金効率を高めようと闘ってきたが、結果的には、アウト・クリアリングハウスに決った。
Eその他のこと
 東穀セミナーで講演したが自分の専門分野でもある農産物の需給変動要因について、環境変化(?生産国の中国、インドが消費国に、?バイオエタノール、?作付け競合)を紹介することにあった。
 米の上場が実現した後には麦や畜産物も上場可能になる、農産物の指数もできる。
 外資の導入には建玉制限や値幅制限など未解決の問題もあるが、現在でもオムニバス経由で5%規模の海外玉が入っている。
 業界の出来高不振から不協和音を醸し出す理論がでてきている。商い活性化のためには上場品目を増やして、商品ファンド玉を積極的に取り入れる。上場品目のETFを考えてもよい。
 業界の整理統合が進む。クリアリング・メンバーのハードルを高くしてメンバーとノンメンバーの区別をはっきりさせることも考えられる。それに絡んでもっと自由な取次ぎ制度があってもよい。
 取引員の許可条件は純資一本である。制度の垣根がなくなったのだから、日本の証券会社が会員として参加してきてもよいのではないか。東京工業品取引所に会員申請してきたのは外国の証券会社ばかりである。
 勧誘問題の不招請勧誘は認めるべきだ。株式投資は知っている人が多い。それに対して商品先物取引はゼロ・サムゲームとして認められた数少ないもののひとつ。需給を知らなければならない、勧誘なくしては広めることができない。
 総合取引所問題に関しては、商品先物取引は現在、将来の価格指標を形成し、ヘッジと投機資金の運用の場である。慣れ合い取引や風説の流布といった問題は困るが、プロの市場参入をどう見るか、金融市場は資産運用のプロだが、商品先物市場は生産者などプロにも2通りある。先ずは自己資本を充実させることが求められる。
 76才である。今後はのんびりしたいので、他の仕事は何もやらない。週に1、2回取引所の4階に顔を出すだけである。
(なお森實氏は25日の総会で正式に退任する)

 (2007年5月21日―第890号)