第 217回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

欧州で広がる貴金属ETC
 「英国籍の金融会社、ETFセキュリティーズは9日、プラチナ、バラジウム、叙、金で構成するETC(エクスチェンジ・トレーデット・コモディティーズ=商品価格連動証券)をドイツ証券取引所に上場した」(英紙フィナンシャル・タイムス=FT、10日付)。
 ETFセキュリティーズのETCは既にイタリア証券取引所、ロンドン証券取引所とユーロネクストに上場している。
 「ドイツでの上場は商品の裏付けのある投資手段を商品先物市場への参加が限定される機関投資家、個人投資家に提供するというETFセキュリティーズの戦略にとって極めて重要な意味を持つ。ドイツは欧州最大のETF(上場投資倍率市場で欧州全体の40%を占める。ドイツはまた金の投資家層の厚さも欧州一。ドイツの小売り銀行の多くは金の積み立て口座を開いてる(預金を金に交換する)」「ETFセキュリティーズの会長であり創業者のグラハム・タックウェル氏は世界の他の地域に出ていく前に次はスイスを目ざすと述べている。タックウェル氏によると、ETFセキュリティーズの運用資産は8億ドル、資産の25%は貴金属で残りはエネルギーと農産物で折半し、週に3000万〜4000万ドルの資金が集まっている」
 前回この欄で「小粒現物商品プラチナの証券化に疑義」という記事を書いたが、証券化の波は商品の世界で着実に高まっていることを実証する記事である。
◆     ◆     ◆     ◆
 ここで、4月25日に発表された英国のメタル調査・コンサルティング会社GFMSのプラチナ族需給報告書「プラチナ&バラジウム・サーペイ・2007」の内容を紹介する(プラチナの需給表は4月30日付当欄で紹介済み、バラジウムは需給表とミニ解説を別項の形で取り上げてみた)。
 報告書のうちプラチナの要約と展望部分を抜き出してみる。
 「プラチナは06年1月に早々と1980年の史上最高値を上回り、06年を通じロンドンの値決めベースで1000ドルを下回ったのは2月16日午後の 997ドルだけにとどまった、5月には一時1300ドルを上回り、11月21日には1390ドル(午前の値決め)に達した。この劇的な値動きにもかかわらず、06年には14万5000トロイオンス( 4.5トン)と8年振りに供給余剰となつた。この余剰は6%の鉱山供給の増加と、自動車触媒需要の好調がジュエリー需要の減退に足を引っ張られ、需要合計は2%増にとどまった結果である」
 「余剰への回帰にもかかわらず値上がり基調にあったのは一見不思議に映る。だが、需給表をざっとみると、06年は従来の傾向線上にあることがわかる。01年を不足のピークとして、不足状態は着実に縮小しているにもかかわらず、価格は上昇トレンドをみせている。この矛盾を解くカギを投資活動の高まりに求める見方が多い。が、我々はプラチナ市場の持つ独自性にあるとみている」
 「そのプラチナ市場の独自性は3点。
 @需要はおおむね堅調。だが、その中味は急速に変化している。06年、プラチナの産業用途は自動車触媒を筆頭に需要全体の78%を占めた。1999年(GFMSのデータ集計初年は産業用需要が55%、ジュエリー加工は単独では需要部門トップの45%を占めていた。価格弾性値の高いジュエリーから、比較的弾性値の低い分野へのウエート移行は高値でも需要が落ちにくい需要ベースを構築している。
 Aプラチナ生産は高度に集中化している。南ア「国で全体の4分の3を占め、しかも上位3社のシェアは全体生産の3分の2に及ぶ。需要の弾力性が乏しいだけに供給事情に焦点が当たりやすい。先行きへの増産期待もあるが企業活動、操業などに関するリスクをはらむ(操業トラブルは最近事例に事欠かない)
 B地上在庫は限られ、しかも近年の不足状態の累積でカラカラとなっている。06年11月の現物供給の連絡はまとまった買いには対応できないことを端的に示している」
 「07年は自動車触媒用は強いが、ジュエリー加工は高値局面でさらに減る一方、南アの増産・自動車触媒回収の過剰が見込まれるものの、@〜Bの特性は07年もいささかも変わりはなく、投資世界からの支持も引き続き見込める」。GFMSは1150〜1450ドルを07年のレンジと想定している」4月29日には南ア鉱山ノーザム・プラチナム)のストライキが始まり、ストライキ2週入りの7日にはプラチナ相場は14ドル幅で上昇した(FT.5月8日付)前述の特性Aの事例登場である。
◇ 世界のパラジウム需給           (GFMS調べ、1000トロイオンス)

1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
供給







鉱山供給







南アフリカ
1,915
1,837
2,003
2,132
2,323
2,468
2,601
2,819
ロシア
2,546
2,697
2,626
2,652
2,732
2,841
3,133
3,164
北米
588
626
780
967
888
1,039
930
1,001
その他
113
102
105
158
203
252
262
268
鉱山供給計
5,161
5,263
5,514
5,909
6,146
6,600
6,925
7,255
自動車触媒回収
183
230
280
341
410
494
636
764
供給計
5,345
5,493
5,794
6,250
6,555
7,093
7,561
8,019
需要







自動車触媒
5,574
6,005
5,325
4,734
4,366
4,137
4,135
4,456
ジュエリー
367
337
280
276
336
867
1,178
981
歯科
1,158
816
699
759
784
809
686
633
化学
235
265
255
255
255
295
325
410
エレクトロニクス
1,995
2,110
800
765
1,015
1,066
1,121
1,219
その他産業
110
60
65
95
150
190
333
202
需要計
9,439
9,592
7,424
6,884
6,907
7,364
7,778
7,902









クロス加工/(不足)
(4,095)
(4,100)
(1,629)
(634)
(351)
(271)
(217)
117
推定在庫移動
3,067
3,044
1,971
1,167
1,016
1,064
1,858
1,613
差引過剰/(不足)
(1,027)
(1,025)
342
532
665
793
1,641
1,731
価 格
(ロンドン午後の値決め
1トロイオンス・米ドル)
357.81
679.24
605.12
337.07
200.52
230.22
201.08
320.00

07年バラジウム、230〜420ドルレンジ
 06年のバラジウム年平均価格は05年に比ベ59%上がった。自動車触媒や価格弾性値の低い用途が需要の88%を占める一方、鉱山生産がロシアと南アの手中に80%委ねられるといった商品特性に加え、在庫移動を除くグロス需給は比較的均衡していたためだ。
 @バラジウムは他に比べ出発点が低位にあったため、貴金属全般への投資家の関心の高まりの波にうまく乗れたA中国など途上国の自動車増産もあって自動車触媒が増加した(プラチナからの代替需要への期待も大きかった)Bジュエリー加工需要の増加期待、などが重なり合い、在庫からの売り圧迫を限られたものとした。
 07年は南アの増産と自動車触媒回収の増加がロシア(ノリルスク鉱山)の減産見通しを補ない供給は 830万卜ロイオンス( 258トン)が見込める。一方、06年に2000年以来はじめて増加に転じた自動車触媒需要の増勢は07年も続き、ジュエリー加工部門も中国での在庫取り崩しが06年で終え、上向きとなろう。クロス段階での過剰は消える。
 需給は改善基調にあるが、在庫放出という懸念は残る。GFMSは年内のレンジを 230〜 420ドルと予想する。

◆     ◆     ◆     ◆
 私事を書かせていただく。3月下旬入れ歯が不具合いになった。はじめ上が一部分欠け、次いで下が真二つになつた。「10年たったので疲労度も高い。新調してはどうか」と歯医者師のすすめで新調することにした。35万円も痛いが、新入れ歯になじむには連休明けまでかかった。
 いちごをかんでも痛い、ラーメンもかみ切れない。肩がこり、右の耳が遠くなり、目もしょぼしょぼ。とあってこの欄を書くのが精一杯。執筆中の商品先物の本も5分の1を残して3週間の中断。版元になんと言いわけをしたらいいのだろうか。
 連休前後に商品関連本が4冊出た。時系列でいうと@「相場は生さている相場実賎編」岩本巖著、トランスワールドジャパン一A「先物市場のただ乗り・トレード(斉藤裕著、実業之日本社)B「でっかく儲かる資源株のすべて」(泉雅浩、緒方史法著、アルケミックス)C「入門商品投資のすすめ」(三次理加著、トキワ企画)
 故岩本さんの復刻版が呼び水になったのだろか。岩本本の紹介はややずれ込むが、Aは14日付、Bは21日付、Cは28日付の小紙「自著を語る」欄で紹介していく予定。
 出来高底入れは商品本とともに、となってほしいものだ。
 私自身もあと2週以内には脱稿し、商品本の流れに加わりたい。

 (週刊 先物ジャーナル 07年5月14日 第 889号 掲載)