第 215回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

08年には金850ドル越えも
ーGFMS予想―
 GFMSは短期、中期でみると金はさらに上昇するという見方に立つ。
 英国の金属調査・コンサルティング会社GFMSが4日発表した金の最新需給報告書「Gold Survey 2007」の第2章「金価格」の展望部分の書き出しである。
 「高値予想の牽引役は引き続き投資需要だ。投資家の金に抱く関心の高さの根拠はいささかも変っていない。潜在的なドルの弱さと米国経済の成長鈍化は伝統的資産の収益性低下を招き寄せていく。そうした懸念は新鮮味を欠くようにみえるが、米国経済の見通しにはもっとさしせまった変化がうかがえる。ひとつのシグナルは住宅市場全般の悪化で、それは派手に伝えられるサブ・プライム(信用力の低い借り手への貸し出し)市場の破綻にとどまるものではない。石油価格とインフレへの懸念は若干後退したようだが、エネルギーの再高騰の可能性は否定できない。特に米国政府がイランに再び圧力を加えるとすれば高騰への契機となる」
 「こうした投資誘因が表面化すれば、既存の金投資家が一段と投資意欲を高めるほか、投資層を押し広げていく。例えば今日まで限られている年金ファンドや、個人投資家の参入が見込める。景気鈍化が多くの商品の需要後退を招いた後には金の持つ準通貨としての役割が浮上してくることも見落とせない」
 「投資需要が価格を押し上げる位置に立つとみる理由のひとつは高値でも供給圧力がかかりにくい点にある。例えば回収金は06年前半の高値時には大方が出回り、 700ドル、おそらくは 750ドルといった水準にならない限り、前年比では落ち込む。公的金売却も沈静か保つ。06年、CBGA{中央銀行協定の売却枠以下にとどまった欧州の中央銀行の姿勢が維持されるうえ、欧州外の中央銀行による小口購入の可能性もある。回収金、公的金売却の減少は新産金の若干の増産圧力をかわすに十分だ」
 「需要サイドでは鉱山へッジの買い戻しが当初予想よりやや増えそうだ。ジュエリー加工需要は高値に押し上げる役割を果たさないまでも、下支え役を続ける。 600ドル台半ばまでの線では落ち込まず、投資家による損失限定あるいは利食い売りで下がる場面では増える」
 「07年の安値は既に付けた可能性は高い。ジュエリー加工部門は予想以上に強かった06年第4四半期を受け、在庫処分から在庫補充への姿勢転換し、インド、中国のなお強い成長の余恵もある」
 「07年は金相場の歴史上、おもしろい年になりそうだ。結局のところ年間平均の最高値は1980年の 614.5ドルだった。07年、やや強い程度の相場が続けば、この水準を準える(半年平均の高値は、80年
■ 実質金価格
後半の 639ドル、80年第3四半期の 649ドル)。これからの水準を超えたとしても、日中高値、06年の 725ドル(80年1月の 850ドルはいうまでもなく)越えは多分実現しないだろう。だが、08年には 725ドル越えが実現し、 850ドル越えも根拠なしとしない」
 GFMSの価格展望のページには金の実質値のグラフが出ている。物価上昇率で調整して06年までの値動きを追ったものだ。7年で2倍値に達し、高値警戒感が上昇の節々で浮上するが、グラフは実質値でみると1980年平均値の半値にも届いていないことを教える。
 最終需要の表をみよう。高値がジュエリー加工需要をそこなっているが、産業・歯科用はエレクトロニクス中心に高値にもかかわらず着実に増えている。GFMSが金相場の牽引役とする投資需要ではETFという手軽かつコスト安の投資手段が相場上昇と足並みをそろえる形で増えていることがわかる。
■ 金の最終需要(単位トン)

2002
2003
2004
2005
2006
ジュエリー加工
2,660
2,482
2,614
2,707
2,280
産業・歯科 合計
357
381
411
427
451
エレクトロニクス
206
233
260
279
304
その他産業・装飾用
82
80
83
85
86
歯科
69
67
68
62
61
確認できる投資 合計
343
332
473
594
640
地金退蔵
264
180
257
263
226
公的金貨
97
107
115
111
129
メダル
26
26
26
37
59
他の確認できる個人投資
-48
-20
-57
-24
-33
ETFと関連商品
3
39
133
208
260
最終需要合計
3,360
3,194
3,498
3,728
3,371

■ 世界の金需給(GFMS社調べ、単位:トン)
   
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2203
2004
2005
2006


新産金
2,527
2,574
2,602
2,618
2,645
2.612
2,620
2,492
2.550
2.471
公的金売却
326
363
477
479
520
547
617
469
674
328
回収金
631
1,105
615
616
713
841
944
849
886
1,108
ヘッジ売り
504
97
506
-
-
-
-
-
-
-
欧米投資家売却
229
-
-
303
16
-
-
34
-
-
供給計
4,217
4,139
4,200
4,017
3,894
4,000
4,181
3,844
4,111
3,906




ジュエリー
3,294
3,169
3,139
3,204
3,008
2,660
2,482
2,614
2,707
2,280
その他
561
567
592
557
474
481
513
552
575
639
加工計
3,855
3,736
3,732
3,761
3,482
3,140
2,995
3,166
3,282
2,919
地金退蔵
362
17
269
242
261
264
180
257
263
226
ヘッジ買い戻し
-
-
-
15
151
412
255
422
86
373
欧米投資家需要
-
229
200
-
-
184
751
-
480
388
需給計
4,217
4,139
4,200
4,017
3,894
4,000
4,181
3,844
4,111
3,906
価 格
(ロンドン午後の値決め
1トロイオンス・ドル)
331.29
294.09
278.57
279.11
271.04
309.68
363.32
409.17
444.45
603.77

◆     ◆     ◆     ◆
 「カストロは正しい」
 英誌エコノミスト(4月7日号)のエタノールを論じた社説の見出しである。
 「本誌がキューバのよろめく独裁者、フィディル・カストロ大統領に同意することはそうそうはない。が、先週、彼が病床から起き上がり書き上げたジョージ・プッシュ大統領への批判論文はポイントをついている。『プッシュのエタノール熱は有害。食糧を燃料に転用する邪悪な試みである』と難じている」
 記事のポイントを抜き出してみる。
 ・米国の外国産石油の依存度を下げる目的でトウモロコシ原料のエタノールを増産しようという試みは既にトウモロコシの価格を押し上げている。トウモロコシの作付け増加は他の食品原料、例えば大豆などの価格を押し上げる。動物用飼料でもあるトウモロコシ高はまた食肉価格をも押し上げる。食品供給はいってみれば飢える米国の自動車を養うために向けられている。
 ・06年米国の燃料消費に占める比率は 3.5%に過ぎなかった。だが生産は年季25%で伸びている。政府は国産を補助し、輸入には関税を課している。その結果、中南部ではエタノール生産工場がにょきにょきと出現している。
 ・なぜエタノールなのか。農家は新たな補助金ゆえに歓迎する。たか派は中東原油離れの可能性ゆえに賛同する。自動車産業はエタノール使用向上で地球温暖化のせめを逃れることができるとして歓迎する。政治家は補助金で有権者が喜ぶとして、エタノールを愛する。
 ・トウモロコシ原料のエタノールは安くはないしグリーンでもない。生産に要するエネルギーは大きく、補助金支出は年間55〜73億ドルの負担を納税者に強いる。砂糖キビ原料のエタノールはすぐれている。キビを育てるエネルギーを大きく上回るエネルギー源となる。ブラジルはキビ原料エタノールの最大手だが、キビが他の食糧品生産地を奪ったり、熱帯雨林を侵食しないで済む広大な生産適地がある。インド、フィリピン、さらにキューバさえも砂糖キビ原料のエタノールを富める米国が受け入れれば繁栄の余地が広がる。
 記事ではトウモロコシ原料エタノールをバッド、砂糖キビ原料エタノールをグッドと評価し、セルローズエタノール〈木材、草、農業廃棄物などが原料)をベストと位置付けている。
 「ベストが実現するまで、米国はバッドを捨て、グッドを選択すれば世界のグリーン度は向上し、米国の納税者も救われる」エコノミスト誌説くところだ。
 日本の選択肢いかん。
 ベストの早期実用化を目指す一方、エタノール需要地ならしのため、最もコストの安い砂糖キビ原料エタノール輸入を増やしていくことではないか。中東原油依存度の高い日本にとって、ささやかながらエネルギー源の分散へッジにもつながる。
 エタノール輸入が増えていけばへッジニーズが出てくる。エタノール先物市場の必要性も浮上する。

 (週刊 先物ジャーナル 07年4月16日 第 886号 掲載)