第 214回

213回 215回
米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

米国、石油に上げ賛成?
「原油は3月30日、イランと西側の緊張増大と米国の製品需給の引き締まりを背景に07年の最高値を付けた。3月第3週の上昇幅はプレント8%、WTlは6%」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、3月31日付)週間市況欄の書き出しだ。
 イランによる美海兵隊の拿捕事件の解決がずれ込む一方、27日に流れたイラン・米国衝突のうわさが重なり、湾岸に緊張が走ったが、イラン・米国の衝突のうわさは打ち消され、4日には英海兵隊員が解放されるに及んで緊張はひとまず去った。
 が、一方の強材料である米国の製品需給はひつ迫度を強めている。4日には米国の先週のガソリン在庫が予想の30万バレルを上回る 500万バレル減と発表されている。
 米国の製油所は中西部中心に保守点検、火災、操業トラブルなどで製油能力が低下しているためで、正常に復するには時間がかかる。
 3月第5週の上昇率でプレントがWTlを上回り、しかも通常のWTl上ザヤが崩れ、プレントと逆転した。
 @中東原油の輸出基準価格にはプレントが使われ、中東情勢への反応度が高いAWTlの受け渡し場所はオクラホマで、その地区の貯蔵能力が限界に近いためだ(FT3日付商品欄)。
 湾岸の緊張緩和の4月第1週もプレントの上ザヤが変わらないのは米国要因(WTIの貯蔵能力限界製油能力不足)によるものだろう。
 迫り来る米国のガソリン需要期。ガソリン在庫薄がガソリン価格を押し上げ、原油高を招くという構図は崩れまい。
 石油をめぐる地政学的リスクもまたにわかに消えることはない。
■ 資源ナショナリズム高揚の産油国
  
 
ロシア
イラン
イラク
ベネズエラ
ナイジェリア
アルジェリア
生産量
(日量万バレル)
969
389
190
256
222
135
世界供給に
占める比率%
11.0
4.5
2.2
3.0
2.6
1.6

 フジフューチャーズの月刊誌「フジライフ」4月号には「資源ナショナリズム高揚の産油国」という表が出ている。
 イラン、ベネズエラは天然ガス産出国のポリビアと反米姿勢を強め、サウジと並ぶロシアはエネルギー収入の極大化をはかり外交面での有力なツールとし、強権国家の色合いを強めている。ナイジェリア、イラクでは反政府勢力による油断テロの示威にさらされている。
 資源ナショナリズムの高揚は外資導入の拒否・制限を呼び、資金、技術面での開発投資を阻害していく。中長期的な強材料といえよう。
 世界の原油需給は小幅ながら供給過剰。OPECが北半球の暖房需要とガソリン需要のはざまである2〜4月の下落に備えて減産を続けそいる。北半球の暖冬で1月中旬にWTlが50ドルを割ったのが端的な例だ。OPEC首脳のコメントを重ね合わせると、50〜60ドルの線での安定を見込んでいるようだ。
 仮に50ドルが需給実勢として、資源ナショナリズムの高揚を背景として地政学的リスクプレミアムが10〜20ドル幅で乗るというのが原油相場の自然体であろう。
◆     ◆     ◆     ◆
 「外国産石油への依存度の高きを懸念して、プッシュ米大統領は自前の油作りを推進している。
 米国農家は呼びかけに応じ、07/08年のトウモロコシの作付け面積を1994年以来の高水準に拡大しようとしている。このデータ発表を受けてシカゴのトウモロコシ先物(5月限)10%下落した。トウモロコシ増反のあおりで小麦、大豆は減反となる。パンと肉の値上がりに繋がっていく」
 FT3日付はミニ解説欄で自前の油原料(トウモロコシ)について論評している。
 ・トウモロコシは燃料作物としてすぐれているとはいえない。砂糖きびの方が効率はよく世界最大の生産国であるブラジルは未開発農地を多く有している。
 ・米国はブラジルからのエタノール輸入に関税を課している。ゴールドマン・サックスによると輸入障害を取り除くと。ラテンアメリカは米国と欧州に1バレル45ドルで供給できる。米産エタノールに比べ半分ちよっとのコストだ。だが、トウモロコシを産する10州は大統領選挙の40%を占める票田でもある。
 ・供給天井を自前の高くつく油作りで引き上げること以外に需要を抑えて需給をバランスさせる手もある。が、欧州スタイルのガソリン課税もむずかしい。大量輸送機関は質的に劣り、郊外族が多い。全職業の半分以上が市の中心部から10マイル以上離れている。
 ・割高原料トウモロコシへの依存度を高める米国。米国もまた原油の大幅下落は望まず、本音は上げ習性なのではなかろうか。
■ 石油の原料■ 砂糖を越える

◆     ◆     ◆     ◆
 かつての鉱山大手、コンソリーデーテッド・ゴールド・フィールズ社が監修する金の年次需給報告書が最初に発行されてから40年が経過した。当時の国際政治・経済情勢と今日のそれとの類似性には驚かされるだろう。米国は支持薄な戦争の泥沼にあえいでいた。米ドルの準備資産としての役割には巨額の経常赤字ゆえに疑問符がついていた。繁栄する地域のジュエリー需要と産金量の停滞を支えに金への投資家の関心は高まっていた。
 5日夕刻、国際宅急便で届いたGFMSの金年次報告書「ゴールドサーペイ2007」の要約と価格展望の書き出し部分である。
 「もちろん相違点も多々ある。最も際立つ違いは1967年には金は自由市場で売買されていなかった点だ。が、67年と今日との比較から、当時同様に金は高値でも広範な支えがあるといえる。67年の金の公的価格は1トロイオンス35ドル、インフレ率で調整すると今日価格で約 210ドルとなる。金の実質値でみると06年の平均値603.77ドルに逢するには1974年まで待たねばならなかつた。74年から数年の下落を経て78〜80年の史上最高値に向けての最上昇をみる」
 「07年の金の名目値は1980年の平均値614.50ドルをほぼ確実に上回ることになろう。実質値で70年末から80年はじめにかけて上回っていくかどうかは多分に投資需要の持続性と成長性にかかる。GFMSは08年かそれ以降少なくとも 700ドル台半ばまでの上昇がありうると予測する。予測の前提は弱い米ドル、金融市場の不安定増大、そして国際政情の緊張である」
 次号で報告書の最新データ分析を紹介する。

 (週刊 先物ジャーナル 07年4月9日 第 885号 掲載)