第 211回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

中国の豚児、商品の時代を息長く

 「中国は吉兆の年に入り、出生率向上が見込まれる」
 英誌エコノミスト(2月10日号)には"The golden pig cohoort"と題する囲み記事が出ている。
Huludao(中国北東部港湾都市)の出産(1000人)
 「中国全土の病院で2月18日から始まる豚年で生まれる赤ちゃんが増えるという期待が高まっている。12年ごとに訪れる豚年は吉兆年とされているが、今回の豚年は占星術師によって異なるが60年あるいは 600年振りの極め付きの吉兆年、黄金の豚年に当たる」
 「週刊新聞『ライラ・タイムス』によると、例えば北京での07年の出世数は06年(この年自体も縁起がいい)に比べ5万人増え、17万人に達しようという公的見解を伝えている。出世数の増加は1980年代のミニ・ベビーブームの産物、そしてそれはその20年前のブームの産物でもあるが、黄金の豚年効果の寄与度がより高いというのが公的な見方だ。龍年生まれ(2000年、これまた吉兆年)の就学数上昇で就学が窮屈になっているが、黄金の豚年生まれが就学年齢に達したら、また学校不足に悩まされよう」
 行政当局は迷信に振り回されるなと助言しているが、ほとんど気にもとめられていないようだ、と記事は結んでいる。
 記事によると、中国当局は当分一人っ子政策は変えないと表明しているが、一方で豚年生まれは金運にめぐまれるという言い伝えがある。豚年生まれが消費世代に入るにつれ、消費需要が増えていく、言い換えると商品は買いの時代がさらに続くと占うこともできよう。
 ダガーポ(3月7日号)の実践マネーテクニック欄には投資家ジム・ロジャーズ氏の「商品市場に買いチャンス」と題する記事が出ている。
 「1970年代と比べて最も大きな変化は、30億を越すアジアの人々が『日本や米
国のような生活をしたい』と思い始めてきたことではないでしょうか」
 「アジアの国々は30年前はどうだったか。中国では毛沢東が政権を取っていましたし、インドも鎖国状態のようなものでした。ベトナムは戦争で破壊されており、パキスタンは東と西に分裂して紛争。またインドネシアは内戦、反乱に明け暮れていました。今、日本や米国、欧州の人はさらに生活レベルを上げたがっていますが、これにアジアの人々が加わってきたわけです。こうした需要の拡大・供給の低下というアンバランスな状況が、近年の商品相場が堅調になっている最大の要因ですね」
 ロジャース氏は供給力の低下の典型例として、米国の鉛精錬所が最後に建てられたのは1969年だ、と指摘している。
 ―向こう3年の金と原油のレンジを教えて下さい。
 「金は1トロイオンス 500〜 800ドル、向こう10年ならば1000〜2000ドルの展開もあるでしょう。原油は40〜80ドルでしょうか。こちらは相場が強気になれば 150〜 200ドルという動きも考えられます」
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 ロジャース氏の金の見通しは代表的な商品ブル(強気)の割には控え目にみえる。彼が例示する鉛などと異なり、ラテンアメリカ、アフリカ(南アを除く)などで新規鉱山の開発が途切れないという供給事情を勘案しているせいだろうか。
 それにしても底堅い金。金の国際的販促機関であるワールド ゴールド カウンシル(WGC)のチーフ、ジェームス・バートン氏がFT、COM(英紙ファイナンシャル・タイムス=FTのホームページ)で読者の金に関する問いに答えている内容は金相場の本質を浮き彫りにしていると思う。FT(19日付)から引用してみる。
 問い なぜ金は25年のまどろみ(1980年に 850ドル=ロンドンでピークアウト後)からさめて値上がりしているのか。
 答え 多くの投資家が多くの理由から金を見直している。投資家の参入が金上昇の主たる理由だ。金は多くの主流にあるアセット(資産)と相関しない点、資産分散の受け皿となっている。あまたある政治的・経済的要因が金への追い風となっている。
 ドルの先安というコンセンサス(金は統計的にドルヘッジとして働いてきた)、インフレ懸念(金はインフレヘッジ財とみられてきた)、世界的不均衛の拡大と政情不安(金は安全を求めての避難先)…などだ。
 底堅い需要と一部供給制約など需給ファンダメンタルズも強い。需給のよさが相場を直接支え、投資家の関心を呼び込む。
 問い 金は単なるコモディティ(商品)のひとつか。
 答え 金には他の商品と際立つ違いがある。主な相違点をあげてみる。金は需要の89%(ジュエリーと確認投資量)が自由裁量の消費で占める。他の商品市場は産業用需要によるところが大きく、金に比べ景気の波に左右されやすい(金の産業用需要は11%)。金は金融資産としての歴史が長く、今日でもその位置を保っている。さらに金は保存性にすぐれ、発掘された金はすべて事実上いまだ存在し、しかも市場性が高い。供給曲線が他の資産と異なることを意味する。
 供給面で中央銀行の準備金あるいは回収金などが機動的に動きやすい。
 回収金がすばやくしかも容易に動く点、他の商品に比べ金相場の変動率を抑える。
 問い 金本位制への復帰いかん。
 答え 金本位制が採用されていた時代と環境が異なる。ただ、もはやマネー的役割を果たすことはないとはいえない。中央銀行にとって重要な準備資産であり、唯一だれの債務でもない資産だからだ。
 週刊朝日(3月2日号)に「個人投資家ねらう”前科“持ち業者にご用心」という記事が出ている。「海外オプション」と「ロコ・ロンドン金取引」をとりあげている。
「ロコ・ロンドン金取引は、ロンドン市場の金相場をもとに業者が独自に作成した価格で取引する『証拠金取引』であり、実際の金を売買するものではない」とある。
 商品取引所法違反の商行為ではないか。法の規制の外でおそらくは再勧誘禁止どこ吹く風なのだろう。
 こうした抜け道を防ぐことも公設先物市場の役割ではないのか。

 (週刊 先物ジャーナル 07年2月26日 第 879号 掲載)