第 210回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

機関投資家、商品と縁切り?

 14日、ほぼ終日寝床に張り付いた。二度寝、三度寝、夕刻寝て目覚めると11時過ぎ。ニュースで関東地区春一番が吹き抜けたのを知る。
 悪寒、発熱、頭痛、関節の痛みに腹、尻の筋肉の痛み…。5、6日を頂点とした風邪をやっと克服した。社の置き薬から2日分の風邪薬を持って帰り、5、6日と服用して高熱は退治したものの、関節痛は去らなかった。
 14日の寝だめ効果抜群、わが風邪は完治した。
 15日、出社後、久し振りに英紙ファイナンシャル・タイムス(FT)に目をこらす。 "End of the affair for commodities"―商品との恋物語に終止符、とでも訳すべきか、FT(15日付)マーケット面の見出しが目を射る。
「メリル・リンチのファンド・マネジャー月次調査によると、世界経済成長に関して楽観的な見方が増えたにもかかわらず、機関投資家は商品との恋に決別を告げている」
「マネジャーたちは過去6カ月の石油とメタルの下落を経て商品に関してはネガティブになり、株式についてよりポジティブになった。今月投票の 206マネジャー(その運用資産は合計6800億ドル)のうち16%は商品の比重を落とすと回答している」
「過去2年、メリル・リンチのファンド・マネジャー投票では世界経済は中間ないし最終サイクル局面にあり、成長鈍化・流動性低下・変動率とリスクの増大期に向かっているとみられていた。だが、いまや時計の針は巻き戻され、景気の中間局面にあって、景気拡大期待が高まっているというのがマネジャーの多数意見となっている」
 メリル・リンチの月次調査は「商品は需給に始まって、需給に終わる」という商品の鉄則と矛盾するのではないか。風邪と決別したわが疑念である。
 景気の循環局面の中期段階に時計の針が巻き戻され、世界景気拡大の持続性に信頼が戻ったのだとしたら、エネルギーと素材需要も回復基調に転じてもいいはずである。
 商品相場のもうひとつの尺度。高値は需要を抑え、供給を増やすに照らすとどうか。銅、亜鉛、ニッケル、アルミと05〜06年に次々と史上最高値を更新、02年底に比べ4〜5倍値に達した結果、ようやく増産の動きが広がってきたのはメタルに共通するところだ。
 高値は需要を冷やしたか。例えば原油。IEAの予測によると、中国の需要は06年の日量 710万バレルから07年は 760万バレルに増え、OPECを除く07年需要は当初予測の3%から 3.2%増に上方修正されている(13日)。
 商品の変動要因からみると、機関投資家の商品との恋の決別は早きに過ぎ、いずれ復縁をせまっていくのではなるまいか。風邪去り、冷めた頭での感想である。
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「次の投資ブームは多分ドル安に触発されて年央までに 670〜 680ドル台に押し上げられる局面が予想される」(1月18日発表の英調査・コンサルティング会社、GFMSの金需給予想)。
「ちょっと強気に過ぎるのではないか」--GFMSの報告書を読んでの筆者の感想だった。だが、金相場は年初を底にぐんぐんと上がりドル建て金は14日、一時 671ドル台と7カ月振りの高値を付けた。「バーンナイキFED議長がインフレ懸念は後退と発言したのを受け、ドル安が進んだ結果(FT、15日付商品欄)」だ。
 15日、日本の06年10〜12月GDPが年率 4.8%増となったのを受け、円が急伸したが、円安批判は欧州中心に根強い。
 超低金利の円を元手に高金利通貨に投資、その金利差を稼ぐ、円キャリー・トレード。そのほこ先の一部がまたぞろ商品に向けられたフシもある。金、銀の急騰はその一環とみることもできよう。1月の日銀による追加利下げ見送りが、そのきっかけとなったとみれば、金上昇の軌跡と時期的に一致する。
 英誌エコノミスト(2月10日号)は「日本の通貨、危険な営み」と題して、円安がいずれ、世界金融の波乱要因となってくると論じている。
 あるべき姿に対して、どの程度円は過小評価されているのか。エコノミスト誌は最も簡便な購買力平価(ppp)の尺度として、ビッグ・マック指数を援用、円は対ユーロでは40%の過小評価と指摘している。
 pppは世界中のモノとサービスの値段は為替相場の変化を通じて収れんするという考え方によるもの。
 ビッグ・マックの値段の差には土地代、人件費など交易不能の要素を含んでいるため、発展段階の異なる国の比較には難点がある。
 先進国通貨の円は米ドルに対して28%過小評価、ユーロは対米ドルで19%の過大評価(ポンドとユーロはそれぞれ、ポンド、ユーロ当たりドル)。「欧州の金融担当相が、円の低レベルにいら立つのもうなずける」ところだ、と説いている。
 日本の商品先物。07年は為替要因が大きな波乱要因となる。
 わが物顔の円安許すまじ、は国際世論となるはずだから。

ビック・マック・インデックス

ビック・マック
実際の
ドルレート
1月31日
ドルに対し
過小(−)%
過大(+)%
現地通貨建て
ドル建て
pppの示唆
するドル
米国
オーストラリア
ブラジル
英国
中国
ユーロ圏
インドネシア
日本
USドル
AUドル
レアル
ポンド

ユーロ
ルビア
 3.22
3.45
6.4
1.99
11.0
2.94
  15900
280
3.22
2.67
3.01
3.90
1.41
3.82
1.75
2.31

1.07
1.99
1.62
3.42
1.10
4938
87.0

1.29
2.13
1.96
7.77
1.30
9100
121

-17
-6
+21
-56
+19
-46
-28
ロシア
サウジアラビア
シンガポール
南アフリカ
韓国
スイス
タイ
ベネズエラ
ルーブル
リアル
SNドル
ランド
ウォン
CHフラン
バーツ
ボリバー
49.0
9.00
3.60
15.5
2900
6.30
62.0
6800
1.85
2.40
2.34
2.14
30.8
5.05
1.78
1.58
15.2
2.80
1.12
4.81
901
1.96
19.3
2112
26.50
3.75
1.54
7.25
942
1.25
34.7
4307
-43
-25
-27
-34
-4
+57
-45
-51

 (週刊 先物ジャーナル 07年2月19日 第 878号 掲載)