第 208回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

07年商品、
投機妙味一段と加わる
「06年1月、ロシアがウクライナへのガス供給を止めた際には原油は数週で19%上昇した。07年、年明け早々ベラルーシとの石油をめぐる対立で、ロシアがガスを止める事態が生じたが、反応高は一時間程度にとどまった。原油は1月19日には18ヵ月振りの安値に後退した」
 英誌エコノミスト(1月13日号)の"Oils not well"と題する記事の書き出しだ。
「石油はOPEC(石油輸出機構)の減産も救いの手とはならず、通常なら数ドルとなる米国、ないしイスラエルによるイラン攻撃説にも動じない」
「石油下落はニューヨーカーが1月初旬に日光浴に興じるなど北半球の暖冬のせいだ、との指摘がある。だが銅下落を暖冬ゆえとするわけにはいかない。他の非鉄金属も銅安に追随した。エコノミスト総合商品指数(石油は除外)は9日までの1週で10.2%下落した」
「商品の下落は世界経済の調整局面到来を告げているのかもしれない。債券市場で生じている先行きの景気下降のシグナルとなることの多い逆イールド・カーブ(短期金利が長期金利を上回る現象)を後追いしているのかもしれない」
「が、弱気説には最近の経済データが反論する。米国の雇用数字は強いし、ドイツの製造業も力強さを示している。バルティック・ドライ指数は過去1年で2倍値以上と世界経済の成長にたるみはみられない」
 では商品の下落はなにに起因するのか。記事では2つの要因挙げている。
 ひとつは供給。高値が供給増加を招いている。非鉄金属では供給要因が後退しつつある。石油の需要家も在庫を積み増し、供給途絶への不安が後退した。
 もうひとつは投資資金の流れ。株式、債券、現金以外の資産をオルターナティブ・アセット(代替資産)と称するが、伝統的資産と相関度の低い代替資産に商品が組み込まれ、商品への投資は熱気を帯びた。最大の商品原油、投機人気の高い銅に見直しの売りが出たといえる。
 インデックス(指数)投資が人気化するとともに、逆ザヤ下の上昇を利用し、期先を買い、期近に回って利を収める手だてで、いわゆるロール・イールド分を稼いできた。だが、この投資手法への投入資金が増えるとともに順ザヤ化し、ロール・イールドはマイナスに転じた。06年にエコノミスト商品指数が28%上昇したにもかかわらず、ゴールドマン・サックス・トータル・収益指数が15%マイナスになったのはこのため
だ。
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 原油、銅の07年年明け早々の急落は02年を起点とする商品のスーパー・サイクル(長期上昇波動)の終えんを告げるものだろうか。
 エコノミスト誌の記事にあるように、バルチック・ドライ・カーゴ指数は強い。商品市況は相場に荷動きを乗じたもので、世界景気指標としての国際商品市況は強さを維持している。
 04年春の大豆高騰の一因は船腹の奪い合いにあった。鉄鉱石の急激な需要増大、ドライ・カーゴ運賃が急上昇、大豆の輸送費も玉突き状に上がった。「鉄、大豆相場を走らす」というパターンだった。需給の引き締まった商品でいつその再現があってもおかしくない。
 銅下落は増産効果の浮上が投機資金の引き上げを強いているとしても原油下落をどうみるか。
 サウジアラビアのアリ・ヌアイミ石油鉱物資源相は16日「ろうばいするなかれ。市場は健全な状態にあり、正しい方向に向かっている。(追加減産のための)会合を開く必要はない」と述べている。
「OPECウォッチャーはヌアイミ氏には派手な言動で市場の期待感をそぎ、一転してポジションを変え減産を提唱、反発幅を大きくするという過去の軌跡がある、と指摘している」(英紙ファイナンシャル・タイムス=FT、17日付)。
 OPECウォッチャーの見方が正しければ、ヌアイミ発言は減産期待の強気ファンドを振るい落として、仕手本命(サウジ)は強気路線を変えていないという見方ができる。
 だが、一方で本音だとすればどうか。減産を主張するタカ派はイラン、ベネズエラなど反米勢力。原油高を背景にしたその言動は影響力を一段と加えている。
 一方で、エタノール、バイオフューエルへの世界的に傾斜、中長期的には原油需要を制約していく。
 政治・経済的視点から、マネーに押し上げられた部分をそぎ落とした線に収れんさせるのが得策と判断しているのかもしれない(前出エコノミスト誌によるとマネーによる押し上げは03年以降1バレル35ドル。06年7月の高値78.4ドル(WTI)をベースにすれば、マネー要因除外の実勢は43.4ドル)。
 50ドル台前半でパニックになるのはおかしい、となる。
 原油高はエネルギーコスト高を通じコストプッシュインフレの芽を育てた(06年前半)。原油安は減税効果のように輸入国経済にプラスに働く。米国経済が住宅部門の落ち込みものかは、原油安のプラス効果が見込めるとして底堅さを維持しているのはその一例だ。
 LME(ロンドン金属取引所)でアルミ相場の行方が注目を集めている。
 一投資家の買い建てが重量換算で65万トンと、LME指定倉庫在庫の70万トンに匹敵する水準に達した。玉締め懸念から、1ヵ月前には現物が3ヵ月先物に比べ1トン30ドルのディスカウントにあったのが、現在現物が3ヵ月先物に比べ80ドルのプレミアが乗っている。
「年間3200万トンの消費規模のアルミ。米国のアルミ需要は06年12月には前年
同月比で20%減、中国は過剰供給を抑えようとしている。ロイター通信の最新投票ではアナリストの07年平均予測は06年比6%安。こうしたファンダメンタルズ下の玉締め。3ヶ月で25%下落した銅に代わるメタル投機の主役作りなのだろうか」(FT、17日付、ザ・レックス・コラム)
 マネーのプレイヤーも商品から総撤収とはいかないようだ。
 07年、商品投機なお健在なり、といえようか

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 1月7日、堀野和夫氏が亡くなられた。三井物産元副会長で日本商品取引員協会の初代会長を勤められた。
「商品先物業は産業界の従属産業に甘んじてはいけない。主体的に動こうではないか」
 日商協のビジョン委員会で堀野さんが、こんなあいさつをなさったと記憶している。
 委員のはしくれにあった筆者は「ヘッジの場の提供、競争価格の提示、なにも従属的地位にあるとは思いません」と反論した覚えがある。
「あなたは先物業界を好きなんだね」
 いつか、パーティの席で堀野さんにこんなことばを掛けられた。
 いま思い返せば、お前は先物の機能のすぐれた点と業界の実態を混同しているとのお叱りだったのかもしれない。
 堀野さんの言外の戒めを紙面に生かしていきたいと思う。

 (週刊 先物ジャーナル 07年1月22日 第 874号 掲載)