第 207回

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米良 周              
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

商品、アセット・クラスとして再認知
 《つまり、商品にはヘッジファンドのような短期的資金だけでなく、年金基金に代表されるような中長期の投資家の資金も流入している。このことを考えれば、「商品の時代」がしばらく継続するだろうという見方にも頷ける。
 別の観点からみれば、金融市場が紙切れ(=紙幣)から実物資産(=商品)に向かっている、という変化が進行中であるともいえる。
 石油価格が上昇するということは、石油に対するお金の価値が下がっている、ということに他ならないからである。それは経済学でいえばインフレを意味するが、現実社会に即していえば、抽象的なお金よりも具体的な実物が選好される時代が到来した、ということになろうか。「貯蓄の時代から投資の時代へ」というコンテクストは、お金を安全に保持することからいかにお金を殖やすかに座標転換することを迫るものだが、商品市場の活況は、そのためには有価証券から実物資産へという、さらにもうひとつの価値観転換までも要求しているのかもしれない。》
「世界がわかる現代マネー6つの視点」(倉都康行著、ちくま新書)の「商品市場とマネーの接近」と題する項から一部引用した。
  • 広がる金の投資手段
  • 現物 商品取引員、貴金属商の店頭で地金、コイを購入、地金、コインを持参して売却。
  • 金積み立て 毎月一定の金額を払い込み、営業日数ごとに均等の金額分で購入していく
  • 金ETF(上場投資信託) 証券取引所に上場され、自由に売買できる。ETFの運用会社は裏付けとなる金現物を別途分離・保管する。
  • 金先物 将来の一定期日に受け渡す約束での取引、その間、自由に買い契約なら転売、売り契約なら買い戻して差額をやりとりする。期日に実際の金をやりとりこともできる―現物と同じ。
  • 金オプション 将来の一定期間内に特定の価格で売買できる権利(選択権)の売買。
  • 商品ファンド 投資家から資金を集め、運用の専門家が主として先物市場で運用、対象に金が選択されるケースが多い。
  • インデックス(商品指数)投資 あらかじめ特定の商品を選定、指数化し、商品のウエートごとに先物市場で買い建て、期日間近で乗り換えていく。インデックスには金が含まれているケースがほとんど。
  • 金鉱山株への投資
 広がる金の投資手段の表をみていただく。特に金ETF(上場投資信託)は06年夏、秋の金急落局面でも現物換算で 500トン台を維持した。その規模は地金退蔵投資 185トンを大きく上回り、欧米の推定投資量 637トンにあと一歩とせまっている(退蔵投資、推定投資は英国の調査会社GFMSの06年推定値)、金ETFに触発される形で米国ではETFの銀、原油版も登場した。ETFに加え、インデックス(商品指数)投資も拡大している。
 商品版ETF、インデックス投資の2つは中長期投資を主軸とする年金基金に適した投資手段といえよう。
 英大手スーパーのセンズベリーの年金基金が約20億ポンドの運用額のうち5%程度を商品に投入することを決め、米国最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は約2000億ドルの運用資産の一部を商品に向けることを表明している。
 06年はアセット・クラス(資産の分類)として商品が1970年代、1980年代に次いで再認知された年と評することができよう。

 
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 年金など腰の座った資金の商品への流入はそれ自体が強力な下支え役を果たすが、商品の時代はなお持続するという見通しに基づくものだろう。
 で、07年の需給の骨組みを点検してみる。
 今回の商品上昇サイクルの起点をどこに置くか。冒険投資家といわれるジム・ロジャース氏は1999年としているが、大方のみるところは02年だろう。
 02〜06年なにが生じたか。まず人口大国であるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の需要増加だ。この需要拡大が非鉄金属、石油などを02年以降、整数倍の高値に突き上げていった索引者である。
 地下資源系の天然資源は開発に着手してから産出して市場に出るまで3〜5年はかかる。
 1980年の第2次石油危機を頂点として、資源価格は20年以上にわたって低迷をたどる。この間資源は儲からないと設備も人も減らしていった。この過去の投資不足が需要増加に供給が追い付かないという図式を生み出し、需給調整を価格に委ねたゆえの高騰だった。
 この需給の基本型にはいささかの変化もない。超人口大国である中国とインドは高成長を競い合い、中産階級層が厚みを加えている。自動車、家電、住宅需要の増加?銅、亜鉛、ニッケル、アルミ、プラチナそれに原油と06年に次々と市場最高値を更新したゆえんだ。
 供給サイドでは2つのボトルネックが指摘できよう。
 ひとつは資源ナショナリズムの台頭と広がり。資源高騰のうまみを外国資本に独り占めさせてはならない。資源は我々が子孫に引き継いでいく大事な資産だ、という主張のもとに鉱区使用料の引き上げ、外国資本の制限、閉め出しがはかられていく。外資の技術力と資金力の流入が途絶えれば、増産は絵に書いたもちとなる。
 もうひとつは生産コストの上昇だ。鉱産物は儲かると、開発ラッシュが生じたが、生産機材、エネルギーは高騰、過去の人減らしのつけで技術者が不足し人件費も高騰する、とあって、生産コストはぐんぐん上がり、増産意欲はその分そがれていく。
 コストアップ要因には環境保護コストもある。06年、インドネシアの銅・金鉱山で一時操業が停止したが、水、大気などの汚染投資が十分でないという周辺住民の不満からのものだった。途上国でも先進国並みの環境改善策が求められる時代である。
 異常気象の通年化現象もある。
 05年夏にはメキシコ湾岸をハリケーン・カトリーナが襲い、原油、石油製品を押し上げた。06年9〜11月にはオーストラリアの大減産をはじめ、欧州、北米、ウクライナと世界の穀倉が干ばつ禍で小麦が軒並み減産となった。小麦高はトウモロコシ高騰を呼び、トウモロコシ高は大豆高を招く、強気の連鎖運動が生じた。
 07年も干ばつがあれば、穀物在庫は低い水準にあるだけに、荷の奪い合いが生じかねない。
 さらに水不足、土壌浸食、人口増問題の解決は遠い。だとすれば異常気象の影響力は加速度的に高まっていく。
 07年も下がりにくい需給構造が続くうえ、地政学的リスク、ドル安懸念も消えてはいない。

 (週刊 先物ジャーナル 07年1月1日 第 872号 掲載)