第 206回

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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

先物ファンの経済学者を呼び込むべし
 
 まだ少壮学者だったころ、英国のポンドが切り下げになることを知って空売りで一儲けしようと試み、師筋の経済学者フランク・ナイトに「破門」された。またシカゴ先物取引所に通貨先物市場を推奨する論文を頼まれ、5千ドル(当時の換算で 180万円)を要求している。フリードマンにとって学問でお金を得るのは当然のことだった。
 11月16日、ミルトン・フリードマン氏死去。享年94歳。文芸春秋新年号の蓋棺録の一部である。
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、11月23日付)の「フリードマン氏の啓発的な考え方は生き続けよう」と題するジョン・グリーンウッド氏(インベスコ・パーペチュアルのチーフ・エコノミスト)の論評ではフリードマン教授は自ら名付けた「現状の暴虐」に決して妥協しない道を歩んだとし、次の4つの考え方をあげている。
 (1)経済発展に関して、「援助でなく交易を」といった安易なスローガンではなく、「フリー(自由)・プライベート(民間)・マーケット(市場)」を一語ずつ均等に重視する考え方を提唱した。
 価格が自由に変化することなく、もしくは財と資金が統制と税に支配されれば、歪曲、浪費、腐敗を招く。民間保有でなければ、企業は技術革新意欲を欠く。官僚は市場が何を求めているか知ることはできない。市場だけが生産者に報い消費者を満足させる働きを持つという。
 (2)企業の果たすべきは株主のために収益をあげることで、社会的責任を求めることではない。並み以下の収益は誤ったシグナルを発し、その部門の投資と雇用をゆがめる。”社会的責任のゴール達成は個人あるいは直接政府の行動に委ねるべきだと説く。
 (3)公的サービスについて、国有の指示と統制の仕組みではさまざまな人々の多様な要求は満たせないと指摘する。
 (4)フリードマン氏は金融先物の発展に大きく寄与した。固定為替制度を支えるブレトン・ウッズ体制の終えんを見据え、1971年12月に先物市場を農産物ベースから通貨に広げるべきだという論文を書いた。レオ・メラメド氏はこの論文をテコにシカゴ・インターナショナル・マネー・マーケットを1972年5月に開設することができた。
 金、金利、国債、株価指数が続き、新たなリスク、マネジメントが生まれた。
 文芸春秋の蓋棺録では論文を頼まれとあるが、FTの論評では先に論文ありき、だ。かつてメラメド氏のブレーンだった人物に「フリードマン氏に密着して、色々教示された」と聞いたことがある。5千ドルでは安過ぎたのではなかろうか。
 日本でも実態に通じた経済学者を先物ファンとしてどんどん呼び込んでいく必要がある。法律学者はほどほどに─。
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 07年の国際商品の行方いかん。
 カギは原油にあり、その原油は高値ですべり出すと予想する。
 原油は06年7月高値(WTI期近)で1バレル78.4ドルから11月安値(同)54.86ドルに下落、06年後半の国際商品調整の象徴例となった。OPECは減産対応
で60ドル前後の線で安定させようと狙っているかのようだ。
 だが、60ドル原油は国際商品上昇局面入りの02年に比べ倍値の水準だ。高原油と評することができよう。
 高原油は次のような経路で広範にわたる商品の下支え役を果たす。
 エネルギーコストの上昇→鉱産物では精錬・精製過程でエネルギーコストがかさむほか、農産物でもトラクターの燃料費、農薬の上昇などを通じ、コスト圧迫要因となる。砂糖ではさらに原糖から精製糖に仕上げるプロセスでエネルギーコストを要する。
 代替需要の増加→ブラジルの砂糖原料、米国でのトウモロコシ原料のエタノールの増産が端的な例だ。ブラジルでは食用とエタノール用がほぼ半ばする水準に達し、米産トウモロコシでは輸出需要とエタノール用が並んでいる。エタノール生産に向け、工場新設が続いているが、エタノール用途の拡大はその分他用途に回る量を持続的に減少させていく。
 競合商品の押し上げ効果→原油原料の合成ゴムの上昇は天然ゴムを、化学繊維高は天然繊維原料(綿花、羊毛)の強材料となる。
 06年4月の原油最高値更新を演出したのは地政学的不安だった。ナイジェリアの産油地帯での武力衝突、イランの核開発をめぐる米国の強硬姿勢とイランの反発、イラクの政情混乱などが重なり合った。イラクの混乱は内戦の様相さえ呈し、ナイジェリア油田地帯での武力衝突はいつ再燃してもおかしくない。イランの核問題解決は07年以降に持ち越される。
 地政学的不安プレミアムは消えたわけではない。
 スキー大会も開けないと伝わる欧州の暖冬という弱材料はあるが、原油高をテコに国際商品は調整終了のシグナルを発し始めている。
  

   (週刊 先物ジャーナル 第871号 06/12/18 掲載)