平成18年12月4日(月)(毎週月曜日発行)第869号
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        発行人・米良 周 編集人・小島 栄一
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  主 な 紙 面 ―
日経225ミニ急速に人気化 個人投資家はなぜ動いたか
◆“先物寸言”「私の履歴書」と相場師
◆“先物オタクのススメW”グローバル・マクロの新時代
◆石油上場前夜にタイムスリップ 出来高低迷回復策に待ったなし
◆JCCH、ギブアップ宣言で支払不能者扱いに
◆三貴×ジム・ロジャース「商品新時代」が運用開始


日経225ミニ急速に人気化 個人投資家はなぜ動いたか
  
 国内商品先物市場の不振をよそに、個人投資家向けの金融先物商品が順調に出来高を伸ばしている。上場来、右肩上がりの好調を維持しているのは東京金融先物取引所(金融取)の為替証拠金取引「くりっく365」と大阪証券取引所の「日経225mini(ミニ)」の2商品。特に225ミニは、世界的な知名度を持つフルサイズの日経225先物を追い抜かんばかりの勢いを見せている。商品先物との差はどこにあるのか。答えは、そのまま商品先物市場の低迷脱却のヒントとなりそうだ。
  
 金融取でくりっくが始まったのは昨年7月。対円で米ドルやユーロなど7つの異なる外国通貨を取引するくりっくには「限月」はないが、取引システムは先物取引と同様。それゆえ金融取もくりっくを「先物取引」に分類している。
 現在、くりっくの受託活動をしているのは合計11の商品取引員と証券会社。
 1日平均出来高は上場初年が2万2107枚。その後は月単位で出来高が増え続け、10月にはついに6万枚を超えた。11月(29日まで)は前月から若干減って5万5639枚となったが、それでも商品市場でくりっくを上回るのは、東京工業品取引所の看板商品の金(6万2418枚)だけという状況だ。
 くりっくはそもそも、それまで「野放し」でトラブルを続発していた為替証拠金取引に、改正金融先物取引法による規制の網をかけたところから始まった経緯がある。改正外為法の施行以来、ほんの数年の間に広まった投資手段を取引所の管理下に置き、ルールや取引環境を整備ののち、透明性の高い金融商品として生まれ変わらせた。かつての金やパラジウムがそうであったように、政策的な上場意図があった。

 一方の225ミニは、純粋に個人投資家の市場参加を想定して開発された投資商品だ。大証は225ミニの魅力として(1)少額資金で高レバレッジ、(2)売りからのスタートと金利貸株料の不要、(3)銘柄選択の不要、(4)倒産リスクの回避──などをウェッブサイトに掲載している。すなわち商品先物業界にとって、より参考にすべきは、くりっくよりもこちらかも知れない。
 225ミニの上場は今年7月。1日平均2万枚から始まった取引は8月に3万枚、9月4万枚、10月には7万枚を超える数値を弾き出し、フルサイズ225との差をほぼなくした。証券会社では「ある程度ミニの人気化は予想していたがわずか数カ月とは予想外」と驚きを隠さない。
『委託の内訳』ではフルサイズとミニ取引の双方の、委託取引に占める「個人」の割合を見やすく示した。フルサイズでは自己と委託がほぼ拮抗し、その中でも約2割(全取引の約1割)が個人の取引であることがわかる。
 一方のミニでは約8割が委託取引で、そこに占める個人の割合は半数を上回る55%に達している。つまり225ミニは個人投資家に支えられているといって過言でなく、大証の思惑はここまで見事に的を射たとの評価につながる。
 しかも『委託の内訳』の元の情報は大証の公表数値で、資本金30億円未満の証券会社の委託分は除外して計算している。そしてミニ取扱大手のネット証券数社はこの範疇に入るため、個人投資家の取引実数はさらに拡大するとみるのが合理的だ。

 ただ225ミニは、商品先物業界の感覚では「ミニ商品」になっていないかも知れない。225ミニの売買単位は従来の日経平均先物の10分の1に等しい 100倍だ。しかし日経平均が1万6000円の時の証拠金はフルサイズでは約60万円。従ってミニは約6万円となるが、これは商品先物市場の一般的な上場商品とほぼ同額に過ぎない。
 商品先物業界ではいま、現行の数分の1から10分の1のミニ商品開発を指向する意見が上がっている。倍率の低下は、委託手数料が一定の場合には投資家の収益率を悪化させる。つまり投資の魅力を減衰し、それを抑制するのは手数料(と取引所団体経費)そのものの減額でしか達成できない点に注意が必要だ。
 加えていえば、225ミニを扱う証券会社では「新規口座開設者の多くが商品先物経験者」(ネット証券)という事実がある。同証券の月間平均新規口座開設数は 300〜 400口座。投資家はあきらかに資金運用先に飢えている。
 この「ミニ人気」は投資家の目にはどのように映るのだろうか。かつて取引員主催の取引コンテストで複数年にわたって表彰を受けながらも「商品市場を去った」ある投資家は、「ボラティリティーをヘッジできるオプション市場の存在が大きい」と話す。そしてそのオプション市場の存立は「SPAN証拠金と不可分」だと説明する。
 SPAN(スパン)証拠金のシステムは、1980年代にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が開発したリスク・ベースの証拠金徴体系。きわめて単純にいえば、同一商品異限月のカレンダー・スプレッドのように、リスクが低い取引戦略に課す証拠金は通常よりも「少なくて良いはず」との考え方に根ざしている。原商品とオプションの組合せにも同様に適用され、これによって投資家は「寝かせる資金」が少なくなる。
 つまり投資資金効率の問題だが、これはむしろ個人投資家よりも機関投資家が大いに気にかけるところだ。
 国内商品先物市場におけるオプション取引の不活発を、スパンの不在に求める指摘は古くからある。
 議論ではしばしば「オプションは日本人には馴染まない」説が浮上する。しかし大証では、日経225先物オプションの委託取引の15.6%、絶対数で少なくとも36万4812枚が個人に取引されている。同月の「中部ガソリン」が自己と委託取引を合わせて32万枚だったことを考えれば、ただ「馴染まない」では説明がつかない。
 開設からわずか数カ月で「中部ガソリン」を上回る実績を上げた市場には、商品先物業界が参考とすべき点がいくつもあるはずだ。

      (2006年12月4日―第869号)