第 204回

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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

プラチナETFは有害か

「ETFばなしが引き続き、プラチナ相場を押し上げ」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、22日付)商品欄の見出しだ。
 「プラチナは21日、一時1トロイオンス1395ドルと最高値を付けた。金、銀で成功したETF(上場投資信託)のプラチナ版が具体化するのではないかという推測が引き続き材料視された。一部ヘッジファンドと日本の商社は売り建てを維持するためリース市場から借り入れ、リースレートが急騰した」
 14日のジョンソン・マッセイJM社のプラチナ需給報告書発表会の席上、プラチナETFの実現性についてあえて質問しなかった。
 金、銀に比べ市場規模が小さく、地上在庫も少ない。銀ETFでも加工需要家からの反対が強く、認められるまでかなり時間を要した。まして、プラチナにおいておやと考えたからだ。
 FTの記事でも「ETFはプラチナ価格を大きく押し上げるとして産業用需要家からの反対の声があがるだろう」と指摘している。
「ヌミス証券のジョン・マイヤー氏は『プラチナETFは流動性が低い商品の特性、かつ生産者と自動車メーカーの抵抗で実現はむずかしい』と指摘している。UBSのアナリストたちはETFへの思惑は長期的にプラチナ需要を損なうとし、2つの要因をあげている。?産業用需要家の代替品への移行をうながす(1)需要期である(中国の)新年を控え、中国のジュエリーメーカーが他の貴金属にシフトする」 (2)では割安なパラジウム、(3)ではパラジウム、金(金をベースに白色に仕上げるホワイト・ゴールド)が考えられよう。
 ここで考えた。プラチナETFは頭から否定すべきだろうか。
 商品ETFは裏付けとなる現物は別途保管され、一時市場から一定の量が隔離されるため、強材料に働く。生産者、流通業者、加工需要家から、一時ETFに玉が移動するがETFへの投資家需要とかけ離れた高値になれば利食い、結果的には価格を安定されることになるのではないか。
 田中貴金属工業がプラチナの積み立て口座を始めた時、いまはなき田中淳一郎社長は「これは国家備蓄ならぬ、民間備蓄、いざというときの備えになる」と語っていたのを思い出す。
 その田中はプラチナ積み立て口座に顧客の希望によって年 0.5%の金利を付ける
ことになった。「田中ではプラチナの工業製品に力を入れている。口座のプラチナをお借りして活用する」(池田収貴金属部部長)。
 経営破綻したらプラチナ現物が戻らないこともあるという消費委託方式。よもや破綻あらじ。早速、新契約を申し込んだ。
 プラチナの価値上昇の一事例ともいえようか。
 だが、JMの向こう6カ月の予測レンジは1200ドル。最も需要と供給の実態に
通じた立場からの予測の上限をはるかに見下す急騰。ETFバブルと評すべきか(22日には急反落)。
◆     ◆     ◆     ◆
 穀物インフレ
 黄色の大きな活字が表紙で踊る。週刊エコノミスト(11月28日号)を購入した。サブタイトルは「投機マネーが原油から大シフト」14ページの大特集。総論部分からポイントを抜き出してみる。
 ・穀物相場急上昇の直接要因は世界的な小麦の不作予想。小麦→トウモロコシ→大豆と上昇の輪が広がった。9月中旬の米ヘッジファンド、アマランス・アドバイザースの事実上の破綻(天然ガスの買い投機)がさらなる上昇を呼んだ。この破綻をきっかけに原油、非鉄金属から引き上げられた資金は国際優良株や米ドル、米国債の安全投資に向かう一方で、依然としてリスクを取るカネは穀物市場に流れ込んだ。
 ・穀物上昇の構図は原油、非鉄金属の上昇時とよく似ている。中国やインド、ロシア、中南米といった新興市場の経済発展に伴って需要が拡大し、需給が逼迫して値上がりする。すると投資機会の拡大を逃すまいと年金基金などが分散投資の一環として商品に注目し始める。年金資金はヘッジファンドなどの投機資金と異なり、中長期投資の特徴を持つ。一度資金を入れると、「入れっぱなし」の状態となり、価格が高止まる。
 ・世界の年金資産は1500兆円。その1%でも15兆円。10月中旬、世界最大の公的年金である米カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が11月13日、分散
投資の観点からエネルギーや金属、穀物などの国際商品への投資を決めたと発表した。金額は2200億ドルのうちわずか5億ドル。だが、「カルパースが商品にいくならうちも」と他の年金基金が追随するとの見方が広がっている。
 特集にある市場規模比較の表をみると「穀物の市場規模があまり大きくなく、買えば素直に上がる市場」という住友商事コモディティビジネス部の佐野慶一調査・戦略チーム長のことばが実感できる。
「逆にまとまった売りを出せば、一気に相場を引き下げることもできる。穀物市場には、原油や金、銅以上に、そうした特性がある」
 一年草は非鉄金属など資源と違い、高値にはおいそれと増産が効く。
 07年の不作までも織り込んでいるような相場付き。当面あまりにも走り過ぎとみるのはトウモロコシ買いに出遅れた筆者のひが目だろうか。
 エコノミストの特集は読みごたえがあり、お買い得と推奨させていただく。
  
◆ 市場規模比較
商品
市場
数量
単価
(ドル)
市場規模
(億ドル)
市場規模
(兆円)
取引単位
小麦
CBOT
現物(需給規模)
先物(取組高)
7億トン
47万枚
180
4.8/ブッシェル
1,260
113
14.8
1.3
5,000
ブッシェル
トウモロコシ
CBOT
現物(需給規模)
先物(取組高)
8億トン
136万枚
138
3.5/ブッシェル
1,104
238
13.0
2.8
5,000
ブッシェル
大豆
CBOT
現物(需給規模)
先物(取組高)
3億トン
35万枚
250
6.8/ブッシェル
750
119
8.8
1.4
5,000
ブッシェル
原油
NYMEX
現物(需給規模)
先物(取組高)
8.450万バレル/日
115万枚
60/バレル
60/バレル
18,000
690
212.4
8.1
1,000
バレル

COMEX
現物(需給規模)
先物(取組高)
4,000トン
32万枚
20,000/キログラム
630/トロイオンス
800
202
9.4
2.3
100
トロイオンス

LME
現物(需給規模)
先物(取組高)
1,700トン
15万枚
7,000
7,000
1,241
274
14.6
3.2
25トン
米株式(S&P)
S&P500
日本株式
(TOPIX)
TOPIX
現物(時価総額)
先物(取組高)
現物(時価総額)
 
先物(取組高)
 
 
 
  
  
   
 
 
  
  
128,000
3,133
3,800
  
535
1510.4
36.9
516.9
  
6.3
 

     (週刊 先物ジャーナル 第868号 掲載)