|
外務員の精鋭化こそ ─ 街並みの変化で考える
数年前から、時間があまりにも早く過ぎ去っていく。昨日のことがおとといのように、うっかりすると一週間前のことのように遠く感じられる。一方で、三十年前のことは手が届くほど近くに思えてくる。十代から五十の現在までまるで一足飛びに来てしまったようだ。時間が異様に圧縮され、それと共に一日があっという間に終わってしまう。竜宮城に行かなくても、そのまま浦島太郎になっていく気分だ。
オール讀物11月号にある大岡玲の短編「落ちる間」の一節だ。
小説の主人公より20歳年長の筆者にとって時間はまさに飛ぶように過ぎていく。
自宅から最寄り駅までざっと20分。某日、改めて街並みの変化を追ってみた。
自宅より50メートル駅寄りの場所に4階建ての有料老人介護施設が出現、竹林が消えた。駅近くの駐車場跡にフランスことば(おそらく)の美容院が建った。隣りの4階建てのカラオケ施設の前はなんだったのだろうか。そういえば道ひとつ奥まったところに町の喫茶店が開店した。
酒・米店が不動産屋に衣替えしたのは去年だったのだろうか、独立コンビニに代わって出前寿司の看板が出たのはさていつだったろう。
書店、コンビニからドトールへの三段変化はいつからいつだったのか思い出せない。
ドトールでコーヒーを飲みながら、ここ2〜3年の変容を整理してみた。開業は介護業者ファーストフード各3、居酒屋チェーン店、歯科医院、低廉を看板とする大型理髪店各1。
老齢化の進展が介護業者、それに介護施設の出現を呼び、歯科医院の開業をうながす。
安く、早くの流れはファーストフード、居酒屋、大型理髪店を呼びよせる。
それに大型化。5年のスパンで考えると小さな本屋さんが2店消え、大型書店が登場した。くつろげる小さな喫茶店は3店消えて、ファーストフード店に客を吸収された。小さなカラオケ屋さんが3店消え去り、カラオケの殿堂が取ってかわった。
小さな街の変化をくだくだと書いたのはほかでもない。先物業界の変容と重ねあわせて考えてみたいからだ。
◆ ◆ ◆ ◆
フューチャーズ・トリビューン(7日号)には「登録外務員、1万人台割り込みが時間の問題に」と題する記事が出ている。外務員の減少が出来高低下につながり、市場機能の喪失を呼びかねない、と訴えている。
異論をさしはさむ余地はないが、街並みの変化から市場活性化へのヒントはある。
老齢化。レバレッジを3倍程度に抑えた張り方をすすめれば、相場好きの老齢人口が増え、深く考える(スペキュレートの第1義)ことを通じて、ぼけ防止にもつながるのではなかろうか。大豆など倍率の低い商品を入門商品として推すのもひとつの手だ。
大型化。巨大化は国際市場への広がりを目ざすところ以外、得策ではあるまい。表通りではなく、一本入ったところに出店した町の喫茶店はゆったりとした温かい雰囲気を望む層が見込まれるからに違いない。小じんまりとした相場勉強会、歩合い外務員の根強い存在。情報の収集、伝達は対面でこそである。
商品先物の三大機能はヘッジ、価格発見、情報の収集・発信、とされる。情報の収集と発信は自主的な取引参加人口の拡大なくしてはできない。
知的障害者、ぼけ老人までをも勧誘する。新聞を整理していたら数年前のそんな記事が出てきた。取引への参加資格のない人々の参加を求めるのは気高い市場を汚す行為である。取引の仕組みに通じていない顧客は雑音であり、市場をゆがめるだけだ。ムリクリの勧誘が業界のイメージをどれだけそこなってきただろうか。業界の啓蒙広告も結構である。が、悪い評判の発信源を自主的に絶つ努力をはらってきただろうか。
商品先物の本を書くため、取引のしおりを改めて読んだ。赤いケイで囲み、ポイント数を大きくした危険開示の文章を一読して理解できる既存の顧客と経験者以外おそらくいないのではないか。危険性が高いことを承知した経験客を守る、あるいは育てる営業姿勢が欠落していたのではないか。
外務員の減少をムリクリの顧客集めの反動とみなせばどうか。残る外務員を情報・分析・伝達のプロとして再教育し、処遇する。冬ごもりの時代にこそできることだと考える。
ファーストフード店でも顔なじみになれば、○○でございますね、と応対してくれる。ましてや外務員においておやだ。
◆ ◆ ◆ ◆
「2日、トウモロコシが民間予測機関、インフォーマ・エコノミックスが米産収穫量を下方修正したのを受け10年来の高値を付けた。商品セクターの値上がりの輪に取り残されていた農産物が最後尾で上昇に加わった形」
「インフォーマは今年の米産トウモロコシの収穫量を10億7300万ブッシェルと予測、これは米農務省(USDA)の直近予測10億9000万ブッシェルを下回る。米国は最大のトウモロコシ生産国で05年には世界生産の40%以上、世界輸出量の3分の1を占める」
「USDAの10月の06年分生産予測は05年に比べ2%、豊作年の04年比では7%低い。この予測を受けて上昇したが、今回のインフォーマ予測が上昇に弾みを付けた。CBOTの12月限は2日、1ブッシェル 3.535ドルと1996年9月の5.54ドル以来の高値となった」

英紙ファイナンシャル・タイムス(4日付)の商品欄を抜き出してみた。
世界在庫は25年来の低水準、需要は過去2年、3%以上増え、エタノール生産の新工場稼動に伴いさらなる増加が見込まれる。
干ばつ減産の小麦が10月に急騰、低品質小麦と飼料需要で競合するトウモロコシの割安感が台頭、さらにはトウモロコシ高が大豆の値上がりを誘う。小麦→トウモロコシ→大豆の玉突き上昇と評することができる。
高値の小麦の増反がトウモロコシの減反を呼びかねない。トウモロコシの減反にならなければ、減反のしわ寄せは大豆に及ぶ。商品先物は予測ゲームであることを端的に語る図式といえよう。
「753」という尺度をどなたかに教わった記憶がある。1ブッシェル7ドルの大豆、5ドルの小麦、3ドルのトウモロコシが座りがいいというものだ。
10月平均値は大豆8.93ドル、小麦5ドル、トウモロコシ3.03ドル。先の尺度に照らすと大豆は割安。こうした商品間比価を利用したサヤ取りも商品先物への入り口編としてすすめてもいいのではなかろうか。
日本先物情報ネットワークの「ガソリンと灯油のサヤ取り06/07年」には大口注文が相次いでいるという。
「ガソリン、灯油登場直後、サヤ取りで股ざきに合った」
筆者の述懐に元吉和雄社長は「いや市場が成熟なせいか、ガソリン、灯油のサヤ取りの収益機会はかなり高い。ミドルリターンの手法として、普及してきた」と返された。
「完売間近かだから先物ジャーナルへの広告は打ち切りたい」と元吉さん。
小社には減収にはなるが、ガソリン、灯油のサヤ取りが定着していく情況証拠とみれば、これもまたよし、である。 |