国内商品先物市場が出来高の低迷状態から抜け出す兆しが見えてこない。活況にわく海外先物市場とは対照的に、9月の月間出来高は平成11年12月以来の低水準となる680万枚まで下降。人気の尺度といえる取組高も減少の一途をたどっている。
絶対的な理由は市場参加者の不足だ。流動性の低下は市場利用者の利便性を低下させる。結果、既存の利用者の足を遠のかせ、さらなる流動性の不足を招く。負のスパイラルの形成だ。だが経営困難を訴える取引員と取引所が続出するいま、業界は現況からの脱出を急がなければならない。
本紙は、市場参加者離れの原因を(1)国内個人投資家、(2)機関投資家、(3)海外投資家──に分けて分析すべきだと考えている。そしてその中でも国内市場の基礎を支えてきた個人投資家について改めて考えることを提案する。
もちろん改正商品取引所法施行に伴う行為規制や財務規制の強化が取引員営業の「腕を縮ませている」のも事実だろう。だが個人投資家自身はどのように考えているのかを知ることが先決ではないか。そこで数回にわけて個人投資家と商品先物市場の係わりあいに焦点を当てることにする。
第1回は商品先物取引歴20年というベテランの個人投資家だ。同氏には寄稿を依頼し『個人投資家からの手紙』(左)として掲載した。
この投資家氏は経験に裏打ちされた、優れた投資戦略を駆使して取引を継続している。そして『手紙』から読みとれるのは、同氏が担当外務員に恵まれ、取引テクニックや情報の分析方法を学びながら、今日まで商品先物市場で生き残ってきた事実だ。
つい先頃、ある大手取引員経営者が対面顧客を重視する営業戦略を打ち出した。より多くの手数料を支払っている対面顧客が、より手数料の安いネット客よりも情報の面で置き去りにされていると改めて気づかされたからだという。
また古くからコミッション主体の営業を続けてきた老舗取引員は、自社の顧客以外にも24時間対応のテレフォン情報サービスを提供してきた結果、委託者の増加を実現している。
ネット取引が取引の多くを占めるようになった今日だからこそ、対面営業のアドバンテージを考えるチャンスなのかも知れない。
だが商品市場で取引を継続する投資家ばかりではない。次回(10月30日号)は商品先物市場で大きな玉を張っていたにもかかわらず、日経225先物に舞台を変えてしまった投資家の経緯をレポートする。(小島)
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個人投資家からの手紙
「商品先物の楽しさ教えてくれたのは学生時代の担当外務員」 |
私は東京都在住のサラリーマンです。年齢は40歳。学生時代に商品先物取引を始めましたから、取引歴は20年位になります。
当初はバラジウムをメインに取引していました。毎朝FAXで外電をもらい、外務員から状況解説を受けて、売ったり買ったりしたものです。現在ではネット上売買注文の状況を見ながら取引できるようになりました。市場情報の入手に関しては隔世の感があります。
なぜ株式ではなく商品かとよく聞かれます。
もちろん株取引(現物株)の経験もありますが、資金効率の悪さを感じていました。今になってみれば株式の世界にも、信用取引や先物取引など多様な取引があるのに、よく知らないまま現物株式と商品先物を比較して結論を出していたようです。
しかし商品先物の魅力の第1が資金効率の良さだという考えは変わりません。単に少額の資金で取引が可能ということではなく、そこから生じる損益が投下資金に比べて高倍率であるという意味です。1枚分の証拠金が短時間で倍になったりゼロになったりする事実がそれを証明しています。
第2は値動きの大きさです。資金効率とも関連しますが、商品取引所の上場商品は価格変動率が高いため、投下資金に比べ大きな損益が生じやすくなっています。
これを長所と考えるか短所と考えるかは人によって異なるでしょう。ですがハイリターンを求める場合にハイリスクが伴うのは当然であること、ハイリスク・ハイリターンの商品を種々の組合せでミドルリスク化、ローリスク化することは可能だが、その逆は不可能であることを考えると、私は長所だと考えます。
取引戦略はいろいろ試しました。今は、大きな方向性をネット上の市況情報などで決め、売買のタイミングをチャートの形や各種指標(移動平均線など)で決めるスタイルです。
そうした戦略のひとつで気に入っているのが「限月間スプレッド方式」です。
あらかじめ限月間の値差(スプレッド)の標準値を計算しておき、現時点の値差が標準より拡大していれば将来的に収縮、縮小していれば拡大するという前提でポジションを構築します。 |
この戦略では追証の心配がいらない、昼間 仕事をしている人間にとっては、四六時中場況をウォッチしなくてもいいというメリットがあります。
私の場合は、東京ゴム5番限と6番限でス プレッドを組んでいました。過去2年間( 491営業日)の全限月の約定価格表を作成し、 そこから5番限と6番限の値差の平均値を算出します。別途、同期間の2限月の値差の分布表を作成し、これも参考にします。
計算した値差の平均値はマイナス(▲) 0.9円です。つまり「平均的に5番限は6番限より 0.9円安い」といえるわけです。
また過去 491営業日中、5番限が6番限より最も高くなったのは最大 3.0円でした。逆に最小 4.5円です。
この考えを実戦で試しました。
今年9月8日の始値は5番限が 212,6円、6番限が 216.2円で値差は▲ 3.6円。過去の平均は▲ 0.9円ですからこの値差は大き過ぎ ます。いずれ平均値に収束していくと仮定し「5番限買い、6番限売り」を同時に約定すれば、ゆくゆく約 2.7円の利益が生じるはずです。
手仕舞いは9月28日でした。寄付時の値差 が▲ 0.9円となったので成り行きの仕切注文を出し、売り買いそれぞれ10枚の建玉に対して13万円の利益となりました。
ただしこの収益のために20日間を費やしています。時間と収益を考えると、商品先物のダイナミズムは失われてしまったかなというのが正直な感想です。
私は商品先物を楽しんでいます。しかし一般的にはリスクが高いと敬遠されがち、というよりも忌避されています。もちろんやり方によってはローリスクの取引も可能なのですが、多くの個人投資家は商品先物の多様性や面白さを見出す前に損をし、市場から撤退せざるを得ない状況に追い込まれてしまいます。これがさらに忌避感を高めているのではないでしょうか。
私に商品先物の楽しさ(それは相場研究の面白さでもありますが)を教えてくれたのは、学生当時の担当外務員でした。出来高低迷といわれる商品先物市場を救うのは、相場の面白さを投資家に伝えられる外務員の活躍次第だと思います。 |