第 200回

199回 201回
米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

遊び(相場)をせんとや生まれけむ

 最後に「好きなこと」「たのしいこと」において、きわめつけの起業を紹介しておきたい。
 文芸春秋(11月号)にあるノンフィクション作家加藤仁氏によるドキュメント「闘う団魂五十代で起業する」に出ている事例。
 元コンピュータ技術者。55歳で退職、パソコン教室の講師をつとめながら起業を模索、コンピュータでなくカジノにいきつく。
 もともとカジノ好き。3泊5日の予定でラスベガスに出かけ、ブラックジャック、ポーカー、ルーレットに興じる。旅費が捻出できる稼ぎがあれば勝ちとし、一昨年のラスベガスは「6勝2敗」。
 最初のころは負けが続いたが、日本にあるカジノのディーラー養成学校に半年かよい、本場ベガスのディーラー学校でも3週間学んだことで、成果がもたらされた。
 ベガスに大挙して出かける日本人はいいカモ。英語のやりとりができず、スロットマシーンの前は日本人ばかり。とあって、構想している起業はベガスに旅行する人たちを対象にして、できれば旅費を取り戻せる程度に勝てるような「カジノの遊び方」を教える会社。
「この起業構想は、仲間たちからも面白いと評価され、動きはじめた。日本人が胸を張ってベガスを訪れ、損金は少なく、たのしい旅をするという点において、これまた社会貢献といえよう」と結んでいる。
 筆者は団魂世代起業家に共通するのは社会貢献というキーワードだ、と指摘している。
 記事を読んで考えた。
 なんとなく融通がきかないと考えていた団魂世代がなんと弾力性に富んでいることか。もちろん起業を目ざす人たちの事例のせいもあろう。だが、カジノの遊び方を教える会社とはなんと飛んだ発想だろう。
 遊びをせんとや生まれけむ。日本人にはもともとこんな突き抜けた考え方があった。そのDNAが脈々と流れているということだろうか。
 商品先物市場の手引き書にはヘッジと競争価格形成の二大機能から説き起こすのが定番だが、相場を楽しむ、相場で遊ぶ、といういわば楽しみ方の指南があってもいいと思う。
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 北朝鮮の核実験実施発表。金が一時買われたものの、国際商品全般は個々の需給に沿った動きにある。
 例えば原油。地政学的緊張は買い要因だが戻り売り基調が続いている。
「高値が先進国の需要を20年振りに縮小させる」(英紙ファイナンシャル・タイムス=FT、10月12日付)。
「IEAは11日、OECD加盟国の06年の石油消費が日量10万バレル減り、4940万バレルになるとの見通しを発表した。減少幅は小さいが、米景気の減退と米国での石油から安価な天然ガスへの暖房需要の変化を映したものだ」
 中国、インドの需要増加は続いているが、先進国需要のマイナス転換はデマンドプル、それに供給不安が上乗せされるという強い石油相場の大枠を揺さ振り始めているのかもしれない。
 起伏乏しい原油、金をよそに小麦相場の騰勢が続いている。
「小麦相場、虫害と熱波被害で上昇」(FT、11日付1面の記事の見出し。
「米国の小麦相場は10日、10年振りの高値を付けた。世界在庫が20年振りの低水準にあるところに世界的な減産が伝わった結果だ。小麦高はパン、朝食用ミール、ピザ、パスタの値上がりを呼ぼう」・小麦の収穫量はオーストラリア、アルゼンチンから欧州、北米に至るまで干ばつと熱波で落ち込み、ウクライナは虫害減産となった。世界供給は05年に比べ5%(3000万トン)減る。ウクライナでは輸出ライセンスの付与をめぐってのトラブルで輸出が止まっている。
・シカゴ小麦相場は10日、一時1ブッシェル5.24ドル、9〜10日の2日で13%以上上がった。96年高値を除外すると、1976年の世界的熱波減産時以来、30年振りの高値となる。
・シカゴ小麦相場は1カ月で3割以上高をみせているが、生産の70%を輸出するオーストラリアの06年収穫量が05年(2400万トン)の半分以下に落ちるという予想が広がったためだ。
・ロンドンベースのヘッジファンド、クロム・リバー・パートナズのパートナー、クリス・ブロディ氏は「そこかしこでの減産といった一過性の現象ではなく、在庫水準が低く、需要が増え続けるという小麦市場の構造的問題を背景にした高値だ」と述べている。
 岡藤商事の「週刊調査部データ」(10月10日号)は「小麦価格上昇にみる穀物市場の変化」という巻頭記事の中で「小麦の世界在庫率は20%と過去最低の21%を下回る見通し。まさに世界の小麦需給はひっ迫状態にあるといえよう」とし、次のように指摘している。
「小麦価格の急騰は、これまで飼料分野でトウモロコシと競合していた低価格小麦の競争力を失わせ、トウモロコシ需要を拡大させる。エタノール向け需要や中国の輸入観測と相俟ってトウモロコシの需給がタイト化し価格を押し上げる。小麦価格の急騰は、穀物相場の基調転換の前触れといえそうだ」
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 私事を書かせていただく。
9月25〜26日、10数年振りで1泊2日の箱根旅行。山道を歩いたわけでもないのに妙に疲れ、10月1〜2週は飛び飛び出社。
「出不精特有の旅行疲れ」と同僚のTさんがなぐさめてくれる。
 11日購入の文芸春秋で前出の記事に出会う。
 相場は楽しむもの、遊ぶもの、商品先物の機能説明にこうした視点を加えていこう。難航する「商品先物本」執筆に晴れ間を見出した。
 書き上げたら小麦産地を訪ねる旅にでも出てみようか。
「地球を知る。」──東京穀物商品取引所のキャッチコピー。地球を知るは商品相場を知るに通じる。   

     (週刊 先物ジャーナル 第862号 掲載)