第 199回

198回 200回
米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある

天高く穀物相場肥ゆるの秋
  
 使い勝手のよい国際水準の市場となって、ニューヨーク、シカゴ、ロンドンなどに伍しているはずだった。ところが、見回せば欧米市場は賑わい続け、あとから来た近隣国の市場もどんどん先に行くのに、ここ2年あまりもの間、出来高はずるずると落ち込み、撤退する取引員が跡を絶たない。取引所の整理統合も相次いでいる。
 しかし浮沈は世の常である。この20年ほどを振り返ってみると出来高が減ったのは最近の2年も入れて4年間だけ。8割の期間は膨張を続けてきたことになる。
 それ以前は長い間、今の1〜2割の出来高を、全国20近い取引所で 200社前後の取引員が奪い合っていた。上場商品も穀物、繊維、砂糖、ゴム、繭糸、するめ。仕手戦は「華」とも言われ、審議会の偉い学者先生は、委託者との紛議を含め、この市場を「必要悪」とまでおっしゃった。その間には金ブラック市場、現物まがい取引、海外先物など、最近の為替証拠金取引と同様、身近から新商法が次々と現れ、それらの取引事故も世間は商品先物と同一視しがちだった。
 しかし官民挙っての努力で、世間のまなざしは、それでもずいぶん変わってきた。株式公開企業も増え、税制も証券並みになった。険しい道のりだったが、他の金融商品と差別されずに、同じ条件で競争できるようになるのは業界の悲願でもあった。
 絶え間なく変わる環境に、次々と新しいルールを工夫して発展していくのが市場であり、その積み重ねは文化でもある。日本の商品先物はその長い歴史を持つ。今、急成長するアジアに位置し、大きな経済力を背後に持つこの市場の未来が暗いはずがない。
 メリット(06年秋号、市場経済研究所発行)の巻頭にある波動の文章をほぼまるごと引用した。悲観論が広がる日本の商品先物業界を巨視的にとらえており、同感するところが大きいからだ。
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「穀物市場に薬味効かせる供給薄とバイオ燃料需要」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、5日付)のマーケット・インサイト欄の見出しだ。
「石油とメタル相場は下がり続けるかもしれない。商品市場の一角で数年振りの高値を付ける市場がある。それは穀物市場」
「事実、シカゴの穀物トレーダー達は供給薄と燃料用需要増に加え、投資家の関心の高まりで過去20年以上みられなかった活況を呈していると述べる」
 FTの記事からポイントを抜き出してみる。
○シカゴ・ボード・オブ・トレード(CBOT)に上場されている軟質赤色冬小麦は2日、1ブッシェル4.58ドルと10年振りの高値を付けた。パリとロンドンの小麦先物相場も2年来の高値。
○だが、カンサス・ボード・オブ・トレードの硬質赤色小麦、ミネアポリス穀物取引所の軟質春小麦の上昇幅はシカゴに比べて小さい。カンサスの硬質赤色小麦在庫は7年前の水準の半分、軟質春小麦在庫は10年前の半分落ち、シカゴの軟質赤色冬小麦の在庫は年末には3年前の倍に膨れると予想されているにもかかわらず、である。
○シカゴの高値は商品インデックスによる小麦投資によるものとトレーダーは指摘する。例えばゴールドマン・サックス商品指数)GSCI)をフォローするファンドは独りシカゴ小麦に投資する。GSCIに沿って投資する資金規模は推定600億ドル、小麦への配分は 2.9%だから17億5000万ドルがシカゴ小麦に投じられていることになる。
○ヘッジファンド、商品ファンドを加えた投機資金の流入でシカゴ小麦の取組高は04年の5万枚から今年はじめには55万枚に達し、現在は49万6000枚に落ちているが、それでも04年の10倍近い。
○小麦の上昇は北米、欧州、オーストラリアの干ばつ減産によるところが大きい。
○シカゴ小麦はバブルかもしれないが、小麦とトウモロコシのファンダメンタルズがエタノール用途の拡大で変わってきたといえる。今年の米産トウモロコシのエタノール用需要は16億ブッシェルに達し、収穫の13%を占める見通し。
○シカゴのトウモロコシ先物相場は8月末に比べ 27.5%上がっている。
○小麦、トウモロコシの値上がりは米農家の07年の増反をうながし、大豆からの乗り換えが進む。大豆の減反は需要増加と相まって07年の大豆相場を押し上げる。
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 天高く、穀物相場肥ゆる秋。石油、金の買い人気が退潮となれば穀物が出番となる。
 商品ブームはまだまだ続く。日本の商品先物の沈の時代は07年にかけ浮の時代に移行するとみたい。
  
■ シカゴ小麦はバブル相場?


     (週刊 先物ジャーナル 第861号 掲載)