「トカゲの脳と意地悪な市場」
東京穀物市況調査会顧問 柳澤逸司
 今度出版した「トカゲの脳と意地悪な脳」の著者テリー・バーナムは、若いころから投資が得意で、実際にも早くから、かなりの資金も作り、会社経営などもしてきたハーバードの経済学者である。(最近はまた金もうけの道に戻っているようである」さきに生物学者のジェイ・フェランと共著で「いじわるな遡伝子」(Mean Gean)(邦訳、日本放送協会)というベストセラーを出した。
 著者がこの訳書のために書いてくれた「日本語版への序文」でも述べているように、今の時点で、今後の日本経済とアメリカ経済を比較してみると、まさに対極にあるような様相を呈しているという。つまり日本の将来は明るく、アメリカは暗いというのである。
 なぜかというと、それこそ「トカゲの脳」の然らしめるところだという。トカゲの脳というのは、数万年前、われわれの遠い祖先がまだ農業革命を成しとげていないころ、食ペ物を探し、棲む場所を見つけ、家族を作るために、植物採取や狩猟に明け暮れていたころ非常のうまく機能していたヒトの脳の働きをいう。
 その当時の脳のいろいろな機能がわれわれ現代人の脳の奥に根強く潜んでいて、何かといえば暴れだすのである。
 その暴れだしたトカゲの脳のいうままに行動すると、現代の市場では、手痛い失敗を免れない。だからこのトカゲの脳をおとなしくさせておく必要があるのである。トカゲの脳は、遠い祖先が生きていた時代のものだからである。
 遠い祖先からトカゲの脳を受け継いでいるのは、アメリカ人も日本人も変わりない。過去に起きたことが将来も起きるだろうと思って、行動する癖があり、その見方からしても、アメリカはうまくないし、反対に日本は調子を上げるだろうというのである。
 つまりアメリカは、ITバブルがはじけるまでの20年間、いろいろな市場で幸運続きで、うまい目を見てきて、今でも大多数のアメリカ人は、その傾向が続くと思っている。そこが落とし穴で、あまりにも自国経済について楽観視し過ぎているのである。
 逆に、日本は、バブルがはじけて以来、この15年間、必要以上にデフレに悩んできたので、あまりにも悲観視し過ぎたのである。著者は日本の「日はまた昇る」とはっきり言っている。
(晃陽書房、2,800円+税)

    (週刊 先物ジャーナル 第852号 掲載)