第 193回

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米良 周            
1936年、旧満州新京市生まれ60年早大第一政経学部卒、同年日本経済新聞社入社。73年商品部次長、78年編集委員を経て、94年より日経産業消費研究所首席研究員、96年日本経済新聞社退社。
 現在は先物ジャーナル社・代表取締役。
著書としては「日経商品面の読み方」(78年)「商品先物取引入門(95年)が、訳書として「金ー21世紀への展望」(88年)がある


商品先物はハイリスク・ハイリターン?

「商品相場は循環するパターンのレンジ相場を抜け出し、いまパラダイムが変化する局面にある。言い換えると、均衛点が変わりつつある」
「原油が1バレル60ドル台に落ち着くためには例えば 120ドル相場が示現しなければならない。70年代の2ドル原油は80年代初頭40ドルに達した。その後18ドル前後の均衛が続いた」
 15日、ある商品取引員が開いたセミナーで拝聴した柴田明夫講師(丸紅経済研究所所長)の原油相場解説である。
 パラダイム。研究社の新英和中辞典には「一時代の支配的考え方を規定している科学的認識体系または方法論」とある。
 柴田さんの説く原油に関するパラダイムの変化。
 供給サイドでコモディティーから戦略商品へ。市場が決めるコモディティーから産出国が資源を囲い込み・管理する政治商品あるいは戦略商品へ変わっている。OPEC(石油輸出機構)には上振れを抑える力はなく、下振れには支える力がある。毎年下値が10ドル切り上がり、サポート価格はいま65ドル見当。
 例えばサウジ。80年初頭の高値時に比べ人口は 700万人から2400万人と増えている。(原油収入による手取りの)ドル価値は半分になって、いわばつり銭をごまかされている思いだろう。供給を増やして、価格を積極的に抑えるインセンテブはない。
 需要サイドでは中国経済に調整があっても、インドのインパクトが補なう。インドといえばITと思うだろうが、モノ作り大国を目ざし、インフラ整備が進んでおり、年率8〜9%の成長持続が見込まれる。8%成長なら10年で経済規模は2倍になる。
「循環相場では上値は限定される。新たな均衛点を求める居どころ訂正相場では上値は限定されず、下値は支えられる。原油に代表される商品はからからに乾燥した需給環境にある」
 柴田さんの結語である。
 15日は真夏日。東京駅から茅場町まで歩く。毛の薄い後頭部を日光が直撃。最前列で柴田さんの講演をメモを取りながら、傾聴すること1時間余。くたびれ果てる。
 16日は終日寝床。商品のパラダイム変化について、柴田レクチャーをベースに自説をまとめようとするも気力なし。
 17日、海の日。駅前の本屋で「『投資バカ』につける薬」(山崎元著、講談社)を求む。
 先物業界が「ハイリスク・ハイリターン」という表現を続けている間は、金を含めて先物取引に手を出すのは避けたほうが賢明だと思います。
 ぱらぱらページをめくっていたらこんな記述がゴジックで強調されているので、買い求めた。
 なになに。著者の説明は次の通りだ。やや長いがそのまま引用する。
 商品先物会社のパンフレットには、よく「ハイリスク・ハイリターン」という言葉が登場します。儲かったときに「ハイリターン」になるのは確かなのですが、そもそもファイナンスの世界で言う「ハイリスク・ハイリターン」とは、リスクも大きいけれども、「平均的に期待できるリターンも高い」という状態を指して言っているわけです。つまり、「大きなリスクの代償として、リターンの平均値が高い」という関係が成立することが、ハイリスク・ハイリターンなのです。大きく勝ったときだけを取り上げて、「ハイリターン」だと称するのは、用語の使い方として根本的に間違っています。
 別の章で著者はハイリターンのリターンとは、投資用語でいうところの期待リターンを指すとし、期待リターンとは、投資家が欲しいと期待(希望)するリターンのことではなく、予想される将来の実現確率を意味する。確率論の用語でいう期待値の期待だ、と解説している。
「商品先物はレバレッジ効果が働くがゆえにリスクも大きく、リターンも大きい」
 筆者はこれまでもこう書いてきたし、これから書く本でもこの解釈で通そうと思う。
 柴田さんの「パラダイムが変化する局面では下値は限定され、上値は限定されず」という見方に立てば、商品の買いに関しては将来の上昇に向けての実現確率は高いといえよう。ハイリターンである。
 レバレッジ効果が働き、限月取引であるため、買い建てでも調整局面というハイリスクを伴なう。
「商品先物はハイリスク・ハイリターン」という表現でさしつかえないと筆者は考える。読者諸賢のご見解をうかがいたい。
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「イスラエルの攻撃、原油を新高値に」
 英紙ファイナンシャル・タイムス(FT、7月15日付)の週間リポート(商品)の見出しだ。
「原油は今週(10〜14日)5%上昇、年初に比べ27%上がった。この結果、インフレ率で調整した実質値は79〜80年の第2次石油危機時を超える可能性が出てきた。実質値の最高値(推定)は1バレル82〜99ドルとばらつきがある」
「名目値で最高値を更新しているにもかかわらず、需要減退の兆しは目立たない。米国のガソリン、ジーゼル、ジェット燃料の需要の過去4週のデータはいずれも前年同期を上回っている」
 14日の最高値更新(WTIで78.40ドル)を招いたイスラエルとレバノンのシーア派ヒズボラの衝突はシーア派国家のシリア、さらにはイランを招き込んで中東戦争に拡大しかねない。
 そんな構図は崩れていないにもかかわらず、7月4週、原油は騰勢一服となっている。ひとまず、イスラエル・レバノンの衝突は織り込んだということなのだろうか。
 FT(15日付)の石油高騰に関する社説の結語は次の通りだ。
「石油の輸出国も石油会社もこの高値の持続性には懐疑的。だが、先物市場は07年もその先も高値が続くと予想している。だとすれば、省エネを促がし、代替エネルギー開発意欲を高めていくことにつながる。市場は政治家が解決できない高値対応策をもたらす」
 先物市場への応援歌と読める。

     (週刊 先物ジャーナル 第851号 掲載)